安土桃山時代に日本を訪れたポルトガル人などによって伝えられた南蛮菓子の一つ。布教の具や大名への贈答品として用いられていた。語源は砂糖菓子を意味するポルトガル語confeito(コンフェイト)で、金米糖、金餅糖、渾平糖、そして糖花とも表す。当時の南蛮菓子はたいへん貴重であり、中でも金平糖は製法が秘密にされていたため、和菓子職人が試行錯誤を繰り返しながら製法を編み出していった。金平糖が長崎に伝えられてから、江戸に製法が伝わるまで、百数十年もの月日がかかっている。京都には1569(永禄12)年に、後の二条城、当時の足利将軍邸に伝えられたのが最初。京都を訪れた人への手土産として珍重されていた。

 金平糖の製法は「掛け物」という技法の一種。「つのかけ釜」と呼ばれる平底の大きな鍋を加熱しながら、ケシの粒の芯に糖蜜をかけ、ゆっくりと凝固させる作業を繰り返す。すると、粒は少しずつ大きくなっていき、通常3日間ほど続けると、特徴の小さなイガ(角状の突起)ができはじめる。立派なイガになるのに14日間もかかり、長いものでは20日間も繰り返される。さらに、釜の傾斜角度や回転速度がわずかに違えば、イガのない丸い固まりになってしまう。

 京都には日本で一軒だけの金平糖専門店・緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず、左京区)がある。現在はケシの実を使わなくても、砂糖の結晶を芯にして凝固させられるようになり、さらに糖蜜には、さまざまな素材を混ぜ合わせることができる。果物や肉桂、抹茶、チョコレートなどのいろいろな金平糖があり、味も香りも素晴らしい。香りの強いイチゴの金平糖をつくっているときなど、緑寿庵の近くにある京都大学や百万遍の一帯は、イチゴの甘い香りが充満している。


緑寿庵清水の肉桂の金平糖。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 JRA(日本中央競馬会)所属の女性騎手。18歳。身長157.4cm、体重45.6kg、美浦・根本康広厩舎所属。JRA生え抜きの女性騎手としては久しぶりであることと、名前同様可愛いらしい容姿が人気を集め、菜七子フィーバーを巻き起こしている。

 この欄を書かせてもらってだいぶ経つが競馬の話題は初めてだ。私には自慢できる特技は何もないが、競馬だけは現存する競馬ファンの最古参の一人と言ってもいいだろう。何しろ高校生のとき東京競馬場でシンザンの勝ったダービー(1964年5月31日)を見て以来だから、半世紀以上になる。

 競馬歴長きが故に尊からずだが、これだけは言える。人生に必要なことはみんな競馬場で学んだ。一つだけあげろと言われれば「諦め」ということである。競馬に絶対はない。そんなことはわかりきっているといわれるかもしれない。だが、何万回と馬券を買っているなかには、このレースはこの馬同士で「鉄板」だと思えるレースが何度かはある。

 講談社に入社して2年目の初夏、ボーナスを全部はたいて2頭の馬連を買った。3強と言われていて1頭は逃げ馬、私が買ったのは差し馬と追い込み馬。東京競馬場の坂を上がって逃げ馬を差し馬がとらえた。追い込み馬も逃げ馬に並びかけ、これで決まったと確信した。だが、抜かれた逃げ馬がジリジリと二の足を使って差し馬に迫り2頭が並んだところがゴールだった。長い長い写真判定。私の何十万かの馬券は紙屑となって競馬場に舞った。

 今一度は絶対本命馬から2点流しで勝負したとき。発馬と同時にその本命馬が落馬してしまったのだ。レースはヒモにした2頭で決まった。

 「賭博には人生では決して味わえぬ敗北の味がある。競馬ファンは馬券を買わない。財布の底をはたいて自分を買っているのである」そう寺山修司は言った。「競馬が人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ」とも。

 私が何とか編集者としてやってこれたのは、競馬から人生を学んでいたからだと思う。それに山口瞳、伊集院静、大橋巨泉、常盤新平、虫明亜呂無(むしあけ・あろむ)、本田靖春、米長邦雄、数え上げれば切りがないが、競馬を通じて親しくなった人たちがいた。この競馬人脈が編集者としてどれだけ役に立ったか。

 話を藤田に戻そう。藤田は競馬とは関係ない家庭に生まれたが、小学校6年生のとき競馬のテレビ中継を見て、騎手を志したそうだ。美浦トレーニングセンターの乗馬苑に通って馬と接していたという。騎手として必要な腕っ節や脚の力を鍛えるためだったかどうかは知らないが、子どもの頃から剣道と空手を習っていて、ともに有段者だそうだ。

 藤田がどこかのインタビューで語っていたが、競馬学校で一番辛かったのは人を肩に乗せてスクワットしたり、足を使わずに綱を登ったりするフィジカルトレーニングだったそうである。

 競馬社会は未だに男社会だ。戦前、女性騎手が出たが、競馬関係者が「女がいると風紀が乱れる」と反対運動をし、それを機に日本競馬会(当時)は、騎手は男に限るとしてしまったのである(今は違うが)。

 アメリカでも1968年に女性騎手が免許を取ったが、男の騎手たちがストライキを起こして抵抗したため、結局その騎手は一度もレースで騎乗することなく引退してしまった。

 その後、ウーマンリブ運動などの広がりから競馬界にも女性騎手が登場して活躍するようになる。アメリカのジュリー・クローンは通算3704勝を挙げ一流騎手の仲間入りを果たし、初めて競馬の殿堂入りをした。

 日本でも地方競馬では何人かの女性騎手が活躍しているが、JRAではこれまで出ていない。藤田は歴史を塗り替えることになるのだろうか

 藤田はJRA生え抜きの新人騎手としては珍しくデビューは地方競馬の川崎競馬場になった。当日は取材制限するほど入場者が詰めかけ、売上を大幅に伸ばした。

 この日は2着が最高だったが、3月24日の浦和競馬では、第3レースで逃げ切り、第6レースで差し切り勝ちをしてファンの歓声を浴びた。

 「センスを感じますね。スタートはうまいし、地方競馬のキツいコーナーにも対応できている。初めての競馬場、初めて跨(またが)る馬でのレースが多いなかでこれだけやれるのはすごい」(元公営騎手の赤見千尋さん・『FLASH』4/12号より)

 度胸がいいという評価が多いようだ。4月2日の中山競馬場第5レース、オールドラゴン(牡3歳)に騎乗して大外枠から出ると果敢に逃げた。ゴール200メートル手前で蛯名正義の馬にかわされ1馬身ほどリードされたが、左ムチを懸命に使って再び追い詰め、並んだところがゴールだった。写真判定の結果4cm「鼻差」の2着。

 私はテレビで見ていたが、最後までフォームが崩れないのがいい。脚の力が強いからできるのだが、よほど鍛えているのであろう。これからの課題は、馬ごみで包まれたときどうするかだ。ベテラン騎手になると「どけ!」と一喝し、若い騎手が怯んだ隙に抜け出すという力業を使う者もいるが、彼女にはムリだろう。

 スタートがうまいからポンと飛び出してハナを奪って逃げ切るか、後方から終いの脚に賭けて大外から追い込むかのどちらかの戦法をとるのがいいと思う。

 『週刊新潮』(4/7号)で今は解説者となっている元JRA初の女性ジョッキーだった細江純子が、(騎乗依頼がないので=筆者注)乗れない苦しみがあった、と語っているが、今の藤田には騎乗依頼が殺到していて、捌(さば)くのが大変だという。

 気になる藤田の懐具合だが、厩舎からの月給は20万円程度。だが中央のレースは騎乗するだけで手取り3万円はもらえるので、年間500回騎乗できればそれだけで年収1500万円になるそうだ。

 また芸能プロダクションの「ホリプロ」に所属し、ネットだが大王製紙のCMに有村架純(かすみ)と共演もしている。

 老婆心ながら心配なことは、JRAが菜七子人気を利用して売上増を目論んでいるため、新人騎手として大事な基礎を学ぶ時間が少なくなってしまうことだ。それに藤田が騎乗する馬が実力以上に人気が被るため、それでなくてもプレッシャーがかかっている彼女を萎縮させてしまわないか。

 私は彼女の馬の馬券は買わずに、心で応援していたいと思う。当たらない馬券と同じように彼女の中央競馬の初勝利を予想すれば、逃げ馬に乗って勝つのではないかと思う。そのとき競馬場に「菜七子コール」が響き渡るに違いない。楽しみだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 桜の季節は心がせわしない。咲くまでは満開までを指折り数え、咲けば「酒なくて何で己が桜かな」と毎晩花見酒、散り出せば以前は弘前まで桜を追いかけて北へ旅したこともある。残念なことに今年はカラッと晴れる日が少ない。やはりソメイヨシノには青空が似合う。桜を見るのに忙しく週刊誌が疎かになっている。ごめんなさい。

第1位 「とにかく明るい“不倫現場”安村がパンツを脱いだ!」(『週刊文春』4/7号)
第2位 「美少女15歳を2年間監禁 千葉大生の歪んだ情欲」(『週刊文春』4/7号)/「美少女を2年も閉じこめた『千葉大工学部卒』の監禁システム」(『週刊新潮』4/7号)
第3位 「国会議員と官僚“専用”保育所は超豪華だった!」(『週刊ポスト』4/15号)

 第3位。保育所問題が大きな話題になっているが、『ポスト』は国会議員や官僚には超豪華な「専用保育所」があるのは如何なものかと報じている。

 「キッズスクウェア永田町──衆院第二議員会館の地下3階に、そんな文字がドアに書かれた部屋がある。東京都の認証保育所で、総面積は約275平方メートル。屋外には154平方メートルの天然芝の園庭を備え、0歳児(生後57日)から就学前まで定員は34人。午前8時~午後9時まで預けることが可能だ。
 一般の人が出入りするには、空港にあるような金属探知機のゲートをくぐって厳重な手荷物検査を受けなければならない。おそらく「日本一安全な保育所」といえるだろう。
 都の補助がある認証保育所は保育料の上限が定められており、3歳児未満が月額8万円、3歳児以上は月額7万7000円となっている。東京都心の認可外保育所の場合、 同クラスの設備となると3歳児未満の保育料は月額14万円、3歳児以上でも月額12万円ほどが相場であり、料金的にも半分近い」(『ポスト』)

 もともとは自民党の橋本聖子議員の出産(00年)をきっかけに超党派の「国会に保育所を!推進議員連盟」が発足して、10年の議員会館建て替えに合わせて実質的な「国会保育園」として開設されたそうだ。
 民進党の議員秘書がこう話す。

 「山尾(志桜里(しおり)議員=筆者注)さんは当選2年目の2010年に妊娠、翌年1月に出産すると0歳児の頃から会館内の保育所を利用されていました。子育てにとても熱心で、最初は旧第一議員会館に事務所が割り当てられていましたが、できるだけ赤ちゃんと近い方がいいからと党に希望して出産前の会館建て替えの際に、保育所のできる新第二議員会館の部屋に移してもらったほどです」

 キッズスクウェア永田町は議員専用ではなく、一般からの申し込みも可能だそうだが、入るのはそうとう難しそうだ。官僚たちにも恵まれた保育所がある。
 厚生労働省の本庁舎(中央合同庁舎5号館)には、安倍政権の「女性が輝く社会」政策に合わせて14年12月に「ふくろう保育室」がオープンしている。

 「定員19人のうち、従業員枠の14人は基本的に厚労省職員の子供を預かります。認可保育所なので残り5人が千代田区民のお子さんを預かる区民枠になっている。現在は区民枠に1人空きがあります」(厚生労働省福利厚生室)

 こちらもセキュリティは万全だそうだ。

 「しかも、認可保育所だから保育料は議員会館の認証保育所よりさらに安い。千代田区の基準では、年収1000万円以上の世帯でも第1子の3歳時の保育料は月額2万2600円、4歳児は1万8000円となっている。(中略)
 この他にも、霞ヶ関には文部科学省や国土交通省の庁舎内に保育所がある」(『ポスト』)

 第一次安倍内閣の時に文部科学政務官を務めた小渕優子氏も、退任後に同保育室に子供を預けていたそうである。
 「自分たちが利用する保育所がどこよりも充実しているようでは、待機児童ゼロの本気度を疑われても仕方がない」と『ポスト』は結んでいる。これでまた「保育園落ちた議員や官僚は死ね!」というツイッターが増えるだろうな。

 第2位。このところ私の住んでいる東京・中野区で事件が多い。劇団員の加賀谷理沙さん(当時25)が殺害された事件も私の家から歩いて15分ぐらいのところだし、埼玉県朝霞市で女子中学生(15)が行方不明になり、約2年ぶりに保護された事件の大学生・寺内樺風(かぶ)容疑者(23)と女の子が住んでいたマンションも10分程度のところである。
 元々中野は、新宿のヤクザたちのねぐらが多い町で、昔は駅前のサンモール商店街でよくヤクザ同士のドンパチがあった。建ったときは東京一のマンションといわれたブロードウェイも、いまや「まんだらけ」に代表されるオタクの聖地として名高く、世界中からオタクたちが集う“怪しい雰囲気”の商店街になっている。
 最近はキリンビールの本社や早稲田、明治などの大学も出来て昼間の人口が1万人増えたといわれ、中野駅の朝のラッシュは新宿駅並みである。
 東京23区で人口密度の二番目に多い町だが、人口の移動が激しく、私のような土着の人間以外は、近所づきあいもしない人が多い。
 そんな町だから目立たないと思って寺内容疑者は移ってきたのかもしれない。『文春』によると、寺内の家は祖父が大学教授で、一族には高学歴者が多いという。彼も地元の名門・大阪教育大学附属池田中学に合格し、中学の卒業文集では修学旅行の沖縄体験をもとに「沖縄戦の記憶」というレポートを書き、高校の卒業文集には難解な数式を使って「航空機騒音」をテーマにしたレポートを残している。
 その後千葉大工学部へ進学し、2年生の時、大学を自主休学してカナダのバンクーバーに語学留学、米国カリフォルニア州で小型機の操縦免許を取得している。
 経歴だけを見ると、恵まれた環境で学生生活を送っていたように思える。今春、都内の消防設備会社に就職が決まっていて、中野へ移ってきたそうだ。
 その寺内が、2年前に埼玉県朝霞市で市内の公立中学に通うA子さん(当時13)を連れ去り、監禁していたことを知る者は誰一人いなかった。
 A子さんを監禁してからも、大学の2泊3日のゼミ合宿にも参加し、「今年の正月もしばらく帰省していたんです。就職も決まり、今までありがとうと、祖父母の私らに五千円ずつくれて。仲のよい妹とも一泊旅行に出かけました」(寺内の祖母)
 寺内が借りた部屋は家賃約7万5000円の六畳一間。だが、隣に住む住民も「物音一つ聞こえなかった」と言っている。
 寺内は何度も外出しているのに、長きにわたってA子さんの自由を奪い続けることが出来たのはなぜか?
 『新潮』は、寺内の実家の商売が関係しているのではないかと見ている。

 「寺内の父親は防犯設備士という民間資格を持っており、経営する会社の名前は株式会社店舗サポートと言います。(中略)『e-防犯.com』というサイトを通じてアラームや監視カメラといった防犯グッズの通信販売を手掛けているそうです」(近隣住民)

 その中のいくつかがA子さんの監禁に使用されたのではないかというのだ。

 「ドアの内側からは開錠できない補助錠や、ベランダのサッシが開けられると感知して受信機に信号を送るセンサー、室内の様子を常に監視することができる監視カメラがそれに当たります。いずれも『e-防犯.com』で扱っている商品なので、息子なら容易に入手できますし、工学部の学生だから扱いにも抵抗はなかったことでしょう」(在阪の社会部デスク)

 そうした装置を使って24時間監視されているとA子さんに思い込ませ、逃げられないとマインドコントロールしていたということはあり得るだろう。だが、A子さんは「秋葉原に行く」と寺内が言って出て行った3月27日の午後、必死の思いで部屋を抜け出し、JR東中野駅の公衆電話から自宅と警察に助けを求めたのだ。
 寺内はそのことをニュースで知り、逃亡した静岡県伊東市で首をカッターナイフで切り自殺を図った血だらけの状態で発見され、逮捕された。A子さんは連れ去られたときより5センチ背が伸びていたという。

 第1位。私にはこの芸人のおもしろさがまったくわからないのだが、とにかく明るい安村(34)という変わった芸人がいる。全裸に見えるポーズをとり「安心してください、はいてますよ!」と言うだけのピン芸人だ。
 『文春』が、この男が女性と2人で東京駅からほど近いもつ鍋屋で杯を重ね、その後、缶ビールとミネラルウォーターを買って近くのビジネスホテルへ入っていったと報じている。
 その部屋で安村はパンツを脱いだのか否か? 『文春』に朝出てきたところを直撃され、安村は体をのけ反らせて驚いたという。やりとりはこうだ。

 「──不倫しちゃいましたか?
 『いやっ。不倫じゃないですけど……』
──パンツ、はいてました?
 『はいてました(苦笑)』
──脱いだんじゃ?
 『フフフフ』(中略)
──ゲス不倫では?
 『うわーっ(涙目)』」

 最後まで男女の関係ではないと言っていたようだ。
 安村はコンビを組んでいた男とケンカ別れして芸人引退を考えていたとき、奥さんが勇気づけてくれて、「ピンでやりなよ」と言ってくれたそうだ。立ち食いそばのアルバイトをしても稼ぎは10万円に満たず、焼肉屋で一人前の牛タンを2人でゆっくり食べるのが最高の贅沢だった時代があったという。
 今は月給も100万円以上で、スケジュールは数か月先まで埋まっているそうだ。その奥さんに何と言って言い訳したのか。

 「こっぴどく叱られたものの、奥さんは何とか許してくれたそうです」(吉本興行関係者)

 パンツを本当に脱ぐのは奥さんの前だけにしたほうがいい。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ヒトの呼吸の基本は鼻呼吸。口呼吸をすると、健康に及ぼす影響は大きいとされる。鼻の粘膜などのフィルターを通さず、ダイレクトにバイ菌などが体内に流入するからだ。また、口呼吸は唾液が渇くため、のどの痛みや口臭の原因にもなる。さらにはいびきや睡眠の質にも関わってくるというから、なかなか怖いのだ。

 こうした口呼吸の対策として、福岡市の「みらいクリニック」の今井一彰院長が開発した「あいうべ体操」が話題となっている。やり方はカンタン、口を大きく「あ~」「い~」「う~」「べ~」と動かすというもの。ただし、舌を大きく突き出す「べ~」までを1セットとして、一日最低30セットは行なったほうがよい(最初はけっこうしんどい)。こうすることで効果的に口の周辺の筋肉が鍛えられる。ちなみに、声に出して発音することは重要視されず、小声でけっこう。

 最近若い世代によく見られる、ポカンと口がいつも開いているような人は、単純に筋肉が弱っているということ。「あいうべ体操」だけでなく、ガムを噛むなどして、努めて顎などを動かすといいようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 3月18日、民主党(現・民進党)は、夏の参院選の公約にも掲げられている経済・社会政策に関する最終報告をまとめた。この報告は格差是正や弱者救済に重点をおいており、そのひとつが返済不要の給付型の奨学金「渡しきり奨学金」の創設だ。財源は富裕層の金融所得課税を20%から25%に引き上げることで捻出するとしている。

 1970年以降、日本の大学の授業料は右肩上がりで上がり続けてきた。年間授業料の推移を見てみると、1975年度に国立3万6000円、私立18万2677円(平均)だったものが、2014年度には国立53万5800円、私立86万4384円まで上昇している。金額だけ見ても、国立が15倍、私立が5倍になっているが、物価の上昇率と比べても教育費は遥かに上回る勢いなのだ。

 教育費の高額化によって、増えてきたのが奨学金の利用者だ。2000年度に約69万人だった日本学生支援機構の奨学金の利用者は、2013年度には約134万人にまで増加している。

 奨学金には、返済義務のない「給付型」、卒業後に返済義務のある「貸与型」があるが、日本では9割が貸与型だ。

 2013年度に大学や大学院、専門学校に通っていた学生のうち、38.2%が日本学生支援機構の貸与型の奨学金を借りており、そのうちの6割が利息のかかる有利子の奨学金だ。無利子型は親の年収、本人の学力の要件が厳しく、利用できる人が限られているからだ。

 平均的な奨学金の借入額は、大学生が295.5万円、大学院生が378.7万円(2010年)。卒業すると返済が始まるが、2013年度は奨学金を返済している約354万人のうち、約19万人が3か月以上滞納している。

 滞納者のなかには、払えるのに払わないという人もいるだろう。だが、雇用の流動化が進み、現在は全労働者の3分の1以上が非正規雇用で、その74%が年収200万円以下という状況だ(平成23年有期労働契約に関する実態調査)。大学を卒業しても、すべての人が正社員として就職し、安定した収入を得られるわけではない。そうした状況のなかで、「返したくても返せない」というのが、奨学金滞納の実情なのだ。

 こうした問題を解決するために、民進党が公約に掲げたのが「渡しきり奨学金」だ。いわゆる「給付型」の奨学金で卒業後も返済する必要がないものだ。

 給付型の奨学金が整備されれば、お金の心配をせずに高等教育を受けられるようになり、教育を受ける機会を広げることも可能になる。

 そもそも、日本は高等教育にかかる費用が高額なだけではない。教育にかける公的支出が諸外国よりも低く抑えられており、個人に重い負担がのしかかっている。

 OECD(経済協力開発機構)の「図表で見る教育2015年版」によると、大学や大学院など高等教育の個人負担はOECD加盟国平均が30.3%なのに対して、日本は65.7%。韓国に次いでワースト2位という不名誉な地位を得ているのだ。

 3月29日の記者会見で、安倍晋三首相は「無利子の奨学金を受けられるようにしていく」と発言したが、いくら無利子でも社会人1年目から数百万円の借金を背負ったマイナスからのスタートは酷な話だ。

 広がり続ける格差を是正し、誰もがスタートラインに立てる社会にするために必要なのは、返済不要の給付型の奨学金の整備だろう。

 親の収入の多寡、お金のあるなしによって、若者の教育の機会が奪われるのは、国益を損なうことにもなる。未来を担う若者たちの教育費は、だれが負担するべきなのか。手遅れになる前に、根本に立ち返った議論をする必要がある。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 お笑いコンビのオリエンタルラジオ(中田敦彦、藤森慎吾)は、4度ブレイクしたといわれる。まずは2005年、デビュー直後の「武勇伝」ネタ。その後はいったん人気が沈静化するも、2011年頃から藤森がチャラ男キャラで引っぱりだこに。一方の中田も頭脳派の一面を前面に出すようになっていく。2015年前半には後輩、8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」のパクリ芸でも注目を浴びた(とはいえ、これを「3度目のブレイク」と称するのは半ば冗談のようなものだろう)。そして現在、若い世代を中心に受けているのが『PERFECT HUMAN』である。

 『PERFECT HUMAN』はオリエンタルラジオ単体ではなく、中田の実弟・FISHBOYなどダンサー4人を加えたユニット「RADIO FISH」の作品という位置づけだ。「na ka ta nakata…I’m a perfect human」というリリックとメロディが強烈に耳に残る。主要な音楽配信サイトで上位を総なめにし、ついに『ミュージックステーション』にまで出演した。

 「ネタ」か「音楽」か? 『PERFECT HUMAN』は音楽性やダンスがこれまでの「笑い」のラインから逸脱しているため、議論となることがある。だが、これはやはり「笑わそう」としているのではないか。その歌詞は、かつて「武勇伝」で中田を大きく持ち上げた世界観を敷衍させたもの。根底に「あっちゃんカッコイイ~」がある。出るクギは打たれる日本で、あえて笑ってしまうほどのPERFECTに扮しているのかもしれないし、逆に勘違いした「裸の王様」になりきる笑いかもしれない。いずれにせよ、これはオリラジの「狙ってヒットを生む能力」が、またしても発揮されたということなのだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 厚生労働省は2016年4月、電子処方箋を解禁した。

 処方箋は、医師が患者にどんな治療薬を投与するのか、薬剤師に対して指示する書類のことをいう。一般に診察後、会計する際に窓口で領収書とともに渡される。患者はそれを調剤薬局に持ち込み薬を受け取る。4月からこの書類の電子化が認められるわけだ。

 複数の医療機関の患者診療情報をネットを通じて安全にやりとりができる、「地域医療連携ネットワーク」といった実施環境が整った地域で運用する。具体的には処方する薬のデータを医師・医療機関が地域の専用サーバーに登録。薬剤師・調剤薬局はそのデータを取り出して薬を患者に渡す。薬剤師は患者のアレルギー、既往歴、検査の値などの情報も取得し、服薬指導の際の参考にできる。もちろん、紙の節約にもなる。患者自身にとっても、自分が服薬している治療薬の情報を電子的に管理できるというメリットがある。

 ただ患者の中には、「薬剤師に自分の治療情報を知られたくない」「そこまで薬局を信頼していない」という人も少なくない。薬剤師側も患者の信頼を確かなものにするためには、啓発活動も必要だろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 人気SNS『Facebook』が2016年1月からスタートした新サービスで、既存の「いいね!(Like)」以外の感情を表現できるリアクション機能のこと。「ひどいね」以外にも「超いいね!」「うけるね」「すごいね」「悲しいね」が加わった。いずれもイラストのボタンである。

 本来なら、たとえば「今日、代官山を歩いていると犬の糞を踏んでしまいました」という書き込みをアップした場合に、そのリアクションとして「それはひどい話だね」的な意味合いで使用されることをFacebook側は意図しているようだが、嫌なヤツのうっとうしい書き込みに対してネガティブな想いを込めるといった使われ方が主流となっていくのではないか……などと(東スポを中心とする)一部メディアが警鐘を鳴らしていたりする。

 とは言っても、筆者のFacebookでは、まだ一度たりともこれら一連の新ボタンを押していただけたことはなく、単純にほとんどのユーザーたちが「新しい機能が増えました」ってこと自体に気づいていないような気がしないでもない。

 Facebook増収で好調だと聞くが、少なくとも筆者まわりでは、最後の書き込みが2015年の前半だったりするケースもざらだったりして、どこか下火感が拭えないFacebookであるが、現時点において「リアクション機能のバラエティー化」が“復活への起爆剤”となっている様子は、残念ながら見受けられない……と思うのだが、いかがだろう?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>