京都には「染めを生かすも殺すも水一つ」ということばがある。水とは、主に鴨川や堀川のことで、京都の伝統染色である友禅染めは、鴨川染めとも呼ばれてきた。染め上げた反物を鴨川で洗うといった光景は、さぞや風情があったことだろう。今は見ることができなくなってしまったが、友禅染めにたずさわっている職人は、現在も堀川通を中心に、北は丸太町(まるたまち)通から南は姉小路(あねこうじ)通の一帯で仕事をしている。

 実は、この北側に隣接する町は西陣である。絹糸を染めて文様を織りなす西陣織と、白生地に絵画的な染色を施す友禅染め。「絹は生きもんや」と、染めの職人さんはよく言うけれど、糸染めでも、生地染めでも、その源にあるものは、鴨川、堀川の流れというわけである。

 友禅染めが創始されたのは、17世紀末の元禄年間のこと。絵師の宮崎友禅斎によるものとされるが、友禅斎に関する記録はほとんど残っていないため、詳しくはわかっていない。友禅染めの基本は、染め型を使った型染めを応用し、手描きの技術を組み合わせたところにあることから、考案者の友禅斎は、染めの意匠をつくるデザイナーのような存在だったのではないかと言われている。

 江戸中期は着物に関わる物づくりが贅を極めていた時期である。友禅斎の緻密な型染めと繊細な手描きを組み合わせるという発想の転換によって、その後の染織工芸には画期的な進歩がもたらされた。例えば、型染めや手描き、絞り染めなどが渾然と飾り整えられた「辻が花」がそうであり、染色と刺繍を組み合わせた立体的な小袖の技法もこの頃生まれた。この多くが、京都を代表する伝統染織として現在も受け継がれている。


昭和期の堀川の様子。ちんちん電車・北野線が、堀川中立売から四条堀川の間を昭和36(1961)年まで走っていた。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 朝のワイドショーの某キャスターが、「このところ週刊誌の報道で人生を狂わせられる有名人が多い。週刊誌はそれだけ影響力があるということだが、それでいいのだろうか」と疑問を呈していた。

 ご当人もだいぶ昔に『フライデー』で某女性との不倫を報じられて、危うくテレビから消されそうになったことがある。つい最近、自分の番組で長くコメンテーターを務めていた経営コンサルタント氏が経歴詐称を暴かれ、すべての番組から降りざるを得なくなったから、週刊誌にものを言いたいという気持ちはわかるが、やはり本人の自己責任の部分が大きいと思う。

 『週刊文春』(以下『文春』)のスクープ連発に発奮したのか、『週刊新潮』(3/31号、以下『新潮』)が「『乙武クン』5人との不倫」という衝撃スクープをものにした。

 乙武洋匡氏(39)の名を日本中に知らしめたのは1998年に彼が出した『五体不満足』だったことはよく知られている。この本は講談社から発行され450万部の大ベストセラーになった。

 先天性四肢切断という「超個性的な姿で誕生」(アマゾンの内容紹介より)した彼を見て、母親は「かわいい」と言ったエピソードや、「障害は不便です。だけど不幸ではありません」という乙武氏の前向きな生き方が多くの読者に受け入れられてベストセラーになったのは間違いないが、一番の要因はタイトルにあると、私は思う。

 私も編集者だからよくわかるが、もし五体不満足というタイトルを考えついたとしても乙武氏には伝えにくい。だが、乙武氏のほうから、このタイトルにしてくれと言ってきた。本の扉に彼の全身を載せることも彼からの提案だったと聞いている。

 私も書店で見たが、タイトルと彼の笑顔の全身写真が載っている本のインパクトは“事件”と言ってもいいほど衝撃的だった。

 当時、早稲田大学の学生だった乙武氏は、「重い障害を持ちながらも暗さや劣等感を微塵も感じさせない『向日性』を綴り、従来の『障害者観』を覆して世の中に清廉な衝撃を与えた」(『新潮』)のである。

 その後、スポーツライターや日本テレビの報道番組『NEWS ZERO』のキャスターなどを務め、東京・杉並区の小学校で3年間の教員経験を経た後、2013年から都の教育委員も務めている。

 私生活では01年に早稲田の1年後輩の女性と結婚して3人の子宝に恵まれた。障害はあるが、彼の人生は幸せを絵に描いたような人生だと思われていた。次の参議院選挙で自民党から出馬すると報じられるまでは。

 まず初めの躓きは、友人を裏切ったのではないかという批判だった。乙武氏は松田公太参議院議員が代表を務めている「日本を元気にする会」から出馬すると、昨年の10月、誓約書にサインしていたのである。それが寄らば大樹の陰と自民党から出馬するとは、松田氏はもちろんのこと、多くの支持者たちからも不満の声が上がっていた。

 そこに『新潮』が爽やかで清廉だと思われていた乙武像をひっくり返す、彼の裏の顔を暴いて見せたのである。

 結婚してから5人の女性と「不倫」していたというのだ。『新潮』によれば、2015年の12月25日。乙武氏と黒木華(はる)を髣髴(ほうふつ)させる20代後半の美女の姿が羽田空港の国際線乗り場にあったという。2人は周囲を警戒し、さほど離れていないのにスマホで連絡を取り合っていた。

 2人は「エールフランス293便」でパリへと飛び立ったが、飛行機の中での2人の会話まで載っている。

 「乙武『俺ら一心同体でしょ』
女『一心同体! 乙クンといる自分が一番好き』」

 2人はパリを経由してアフリカのチュニジアの首都・チュニスを拠点に大いに観光を楽しんだという。『新潮』はご丁寧に彼らが泊まったホテルにも確認している。というのも、乙武氏の不倫旅行にはカモフラージュの男性がいつも同行しているからだ。部屋は2つで、その男性が一室、もう一つの部屋には乙武氏と彼女が泊まっていた。

 乙武氏は元々女好きだと、乙武氏の飲み仲間がこう語っている。

 「乙武の女遊びでしょ? 仲間内では有名な話ですよ。彼は猥談好きで、よく自分の『大事な部分』の大きさと機能を自慢しています。『僕は神様から特殊能力を授かった』『一晩に何回でもできる。最後までちゃんと“出る”』って」

 さあ、乙武氏は『新潮』の取材にどう答えるのか。最初は一切を否定して逃げたが、逃げ切れないと観念したのか、以下のように赤裸々に告白した。

 「その女性とは、皆さんが『そういう関係なんじゃないか』と思っているような関係です。(中略)はい、肉体関係もあります。不倫と認識していただいて構いません。彼女とは3、4年前からのお付き合いになります」

 彼女に走った理由は、妻が母になり、夫婦らしさが次第に失われていったからだと語っている。よくある男の言い訳である。だから浮気してもいいということにならないのは、言うまでもない。

 それに、今回旅行に行った彼女とは別に一夜限りの肉体関係を持った女性が2人いたとも告白している。

 「一緒に旅行した女性と同じような関係の女性がこれまでに他に2人いました。はい、5人と不倫したということになります。妻には先週(3月第3週)、年末年始に旅行に行った女性との関係を告げました。泣いていました。非常に申し訳なかったと思います。私は教育者でもありますし、うしろめたさは常にありました。(中略)子どもにも……申し訳ない」

 『新潮』は乙武氏の生き方を「乱倫人生」だと書いている。障害を持つ人やその親たちに希望を与え続けてきた偶像が地に堕ちかかっている。

 『文春』は経営コンサルタントのショーンK氏の経歴詐称を完膚なきまでに暴いて見せた。取材のきっかけはフジテレビが彼を深夜の情報番組のキャスターに起用すると発表したことだった。

 乙武氏のスキャンダル発覚も、友人の政党から出馬すると誓約書まで交わしていたのに、それを裏切り自民党から出馬すると見られたことがきっかけだろう。

 雉も鳴かずば撃たれまいという諺がある。乙武氏も自民党の目玉候補として注目を集めなければ、女性関係を暴かれることもなかったかもしれない。

 HP上で乙武氏はこのことを詫びているが、妻の仁美さんまでがこう詫びたことでさらなる批判を浴びてしまった。

 「このたびは、夫、乙武洋匡の行動が週刊誌で報じられた件につきまして、多くのみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び致します。
このような事態を招いたことについては、妻である私にも責任の一端があると感じております。
 今日に至るまで二人でしっかり話し合った結果、3人の子どもたちのためにも、あらためて夫婦ともに歩んでいくことを強く決心致しました」

 ネット上では「ゲスの極み乙武」などと言われ、妻までが詫びたことに「何で妻が謝るんだ」「妻にも許してもらっているという選挙目当てだ」と、収まる気配が見えない。

 参議院選挙の目玉候補にという思惑で乙武擁立を目論んでいた自民党は、この不倫スキャンダルで乙武氏の爽やかなイメージが泥にまみれたと判断し、公認はしないと彼を切って捨てた。あっせん利得処罰法違反疑惑、路チュー、若い男を買春、パンツ窃盗、ゲス不倫など不祥事が続出する自民党は、「5人不倫」候補を擁立する余裕はない。

 選挙に出るために、妻を夫の不倫を許す寛大な女性に見せようとしたが、乙武氏の小賢しいやり方は完全に裏目に出たようである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 東芝やシャープといったかつて日本を代表する企業が、大リストラや台湾の企業に身売りするという大変な事態に陥っている。安倍首相は、日本経済は着実に回復傾向にあると国会で答弁しているが、彼には現実が見えていない、または敢えて見ないようにしているのであろう。消費税10%は見送る方針を固めたようだが、これも参議院選挙目当てで、実態はアベノミクスが完全に失敗したからである。丁寧に説明していくと言っていた安保法制も、ほとんど論戦のないまま施行されてしまった。ウソばかりつく安倍首相には早く退陣してもらおうではないか。

第1位 「ノーベル経済学者ポール・クルーグマンが明かす 安倍が極秘会談で話したこと」(『週刊現代』4/9号)/「スティグリッツがアベノミクスに疑問符『消費増税』見送り解散に黄色信号」(『週刊文春』3/31号)
第2位 「V6岡田准一♡宮﨑あおい『ドロ沼不倫を乗り越え同棲愛』」(『フライデー』4/8・15号)
第3位 「東芝社員悲痛証言集」(『週刊ポスト』4/8号)

 第3位。『ポスト』は東芝社員の悲痛証言集を拾っている。3月19日に証券取引等監視委員会が東芝前社長の田中久雄氏を任意で事情聴取したと報じられたが、一連の利益水増しについて「違法性の認識」はなかったと話したと伝えられたことで、東芝社員は1億円以上の報酬をもらっていた経営トップが「違法だとは知らなかった」なんて許されない、と怒っているというのだが、当然だろう。
 東芝は半導体部門を中心に1万1000人の社員削減を発表し、3月17日には東芝の「顔」である白物家電事業を中国の家電大手「美的集団」に売却すると明らかにした。
 早期退職は当然ながら「優秀な人材」がいち早く応じ、退職金は50代前半なら上乗せがあって5000万円くらいにはなるというから、経営危機の会社としては恵まれているほうであろう。
 だが、退職しても行き場がない人にとっては、上司との面談は胃が痛くなるだろう。退職を促された人の中には「上司に座っていた椅子を投げつけ」た(『ポスト』)というケースもあったと言われているそうだ。
 散る桜残る桜も散る桜。運良く残れたとしても4か月分あったボーナスが50%近くカットされ、マンションのローンの支払いに頭を抱える社員も多いようだ。
 いろいろな事業を売却したり削減するのに、原発子会社のウエスチングハウス(WH)を残すことを疑問視する社員は多い。社員A氏はこう話す。

 「これまで会社は決算発表では『WHに減損処理は不要』と言い続けてきたけど、新規受注がないんだから、先があるはずがない。過去のトップの失敗のツケをこの期に及んでも精算できないだけじゃないのか」

 不正経理の原因になった原発部門は早く斬り捨てて、重厚長大企業から抜け出したほうが、私もいいと思うが。

 第2位。『フライデー』の独占スクープ撮。V6の岡田准一(じゅんいち)(35)と女優の宮﨑あおい(30)が「夫婦同然の生活を送っている」というのである。
 この二人の仲が騒がれたのは、二人が共演した映画『天地明察』が撮影されているときだった。当時、宮﨑が結婚していた俳優の高岡奏輔がツイッターでフジテレビ批判をして事務所を解雇される騒ぎになってしまった。そのために宮﨑の仕事にも支障が出ることになり、共演していた岡田に相談するうち、男女の仲になったといわれた。
 その後、宮﨑と高岡は離婚するが、高岡の知人が「宮﨑が岡田と不倫していた」と暴露したため、二人は大バッシングを受け、特に宮﨑へのダメージは大きく、彼女のCM出演は激減したという。
 だが、距離を置いたかに見えた二人だったが、水面下では秘かに愛を育んでいたと『フライデー』は報じている。
 離婚から4年が過ぎ、宮﨑はNHKの朝ドラ『あさが来た』で達者な演技を見せて復活。岡田は昨年、日本アカデミー賞で史上初の最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞をW受賞して、役者としても大きく飛躍したといわれている。
 『フライデー』が目撃したのは3月中旬の平日、朝10時。共に暮らすマンションから出てきた二人をとらえ、マスクと帽子をかぶった岡田が運転するポルシェで近くのスーパーで買い物をし、ベーカリーでパンを買ってマンションへ仲良く戻る姿をカメラに収めている。
 30超えた男と女に「春はもうすぐそこか──」とフライデーは結んでいる。だが、結婚は人生の墓場ともいわれる。二人にとっては今が一番幸せなのかもしれないと、私は思う。

 第1位。安倍首相は消費税を10%に引き上げることを断念するという観測が急速に広がっている。
 これには7月の参議院選を有利にしようという思惑があったのだろうが、ここへきてアベノミクスが完全に失敗したから、上げることはできないという見方が大勢を占めてきているようである。
 安倍首相は3月16日から首相官邸で「国際経済金融分析会合」を始めた。ここには黒田日銀総裁や主要閣僚が集められ、ポール・クルーグマン氏やジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授などノーベル賞を受賞した錚々たる人たちを招き、「増税見送りの大義名分を『国内事情ではなく、世界経済を不安定化させないため』としたい」(『文春』)腹づもりだったようだ。
 だが彼の意に反して、世界的権威たちは挙って「アベノミクスの先行きに疑問符をつきつけた」(同)のである。クルーグマン氏もスティグリッツ氏も「現在は消費税を上げる時期ではない」と主張している。
 さらに日銀が導入したマイナス金利についてスティグリッツ氏は「悪い副作用をもたらす可能性がある」「銀行に打撃を与え、貸し出しを妨げるおそれがある。効果はないというよりもましという程度」とこき下ろしたのである。
 『現代』ではクルーグマン氏の独占インタビューをしている。そこでもクルーグマン氏はこう言っている。

 「黒田総裁はこの2月からマイナス金利政策に踏み込みましたが、これもあまり感心できません。マイナス金利政策の是非を判断するには時期尚早でしょうが、効果は非常に小さいものにとどまると思います。
 というのも、マイナス金利政策のメリットは円安効果が望めるということですが、現在は世界各国が自国通貨安を目指して金融緩和をしている状況です。日本が円安を求め、欧州はユーロ安を求め、アメリカはこれ以上のドル高になって欲しくないと願っている中で、日本がマイナス金利政策を採用したところで円安効果は出づらい。実際、2月からの為替相場ではむしろ円高傾向が強まっているではないですか」

 氏は「アベノミクスは人々の期待に応えられていない」とまで言っているのである。
 ではどうすればいいのか。

 「具体的に言えば、GDPの2%ほどの額の財政出動が必要です(編集部註。日本のGDPは約500兆円なので、その2%は10兆円)。
 労働人口の減少という問題を抱えている日本では、投資需要を生み出すのは難しい。その意味でも、財政支出をインフラストラクチャーのニーズがある分野に投じるべきです」

 今度もまたジャブジャブとインフラ投資に回せという氏の考え方には、私は同意できないが、とにかく今やっているアベノミクスは先がなく、ここで消費税を上げれば日本経済はメチャメチャになるという点では、招かれた人たちの多くの意見が一致している。
 では、安倍首相は消費税値上げを断念するのか? クルーグマン氏は、安倍首相は「あなたの言っていることはわかりますよ」という顔つきに見えたと言っている。
 このセレモニーで消費税値上げは断念、衆参同日選挙へなだれ込むという方向は決まったようだ。アベノミクスの失敗と格差の是正、富の再配分、憲法改悪は是か非かが選挙の争点になる。賽は投げられた。あとは有権者が賢い選択をするだけだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 学生や独身者が行くところ、というイメージだったコインランドリーに変化が訪れている。いつの間にか街の至るところで店舗数が増え、回転率も良さそうだ。昔はなかった何やら変わったかたちの洗濯機もある。いまや「進化型コインランドリー」は、一つのトレンドなのだ。

 昨今の隆盛を支えているのは主婦層だという。もちろん家には洗濯機があるが、その容量は限られている。大きいマシンで一気に洗うほうが、時短がはかれるわけだ。ちなみに昨今の家庭は、一般的に洗濯ものが多くなっているとされる。その理由として、気軽に買えるファストファッションの人気で、カジュアルなアイテムがかなり増えていることが挙げられる。

 また、いまどきはふとんを丸洗いしたり(クリーニング代との価格差は比べるべくもない)、専用の洗濯機でクツを洗うことも常識になっている。「コイン」ランドリーといいつつ、電子マネーに対応する店も増えている。IT化はとどまるところを知らず、洗濯が終了するとお知らせメールが届くサービスまである。とにかく、やたらと便利なのだ。

 試しに中へ入ってみれば、かつてあった薄暗いイメージも払拭され、女性が訪れやすい小ぎれいな雰囲気へと変貌していることに驚くだろう。数々の工夫で生まれ変わった現代のコインランドリーが、今後どこまでのびるか、動向が注目されている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 4月から、診療所や中小病院の紹介状をもたずに大病院を受診した患者には、通常の一部負担金に加えて、初診時5000円以上、再診時2500円以上の特別料金が加算されることになった(歯科は、初診時3000円以上、再診時1500円以上)。

 対象となるのは、特定機能病院と入院用のベッド数が500床以上の地域医療支援病院。具体的には、大学病院や国立病院機構、複数の診療科がある地域の大きな病院だ。

 ただし、救急車で運ばれたり、難病やHIVの治療などの場合は、紹介状なしで大病院を受診しても特別料金支払いの対象にはならない。また、症状が重くて受診後すぐに入院したり、地域にその病気を専門に治療する診療所がなかったり、災害で被害を受けたりしたなどのケースも対象外だ。

 つまり、特別料金を負担しなければならないのは、軽症にもかかわらず、個人的な理由で大病院を受診した患者だ。

 日本では「いつでも、どこでも、だれでも」の標語のとおり、健康保険証1枚あれば、日本全国どこの医療機関でも受診できる。医療機関へのフリーアクセスは、患者にとっては便利なシステムだ。しかし、軽症、重症にかかわらず、大病院に患者が押し寄せている現状は、病院で働く勤務医に過酷な労働を強いており、限られた医療資源を効率よく使うという点では弊害も大きい。

 さらに、団塊の世代が75歳以上になる2025年になると、医療を必要とする人がこれまで以上に増え、病院のベッド数が足りなくなることも予想されている。そこで、国は、大病院は高度な手術や抗がん剤治療など専門性の高い治療に特化し、日常的な健康管理や慢性期の治療は地域の診療所や中小病院で行なうといったように、地域全体で患者を治し、支える医療への転換を図っている。

 そのためには、「いつでも好きなときに、好きな医療機関を使ってよい」という概念を改めて、「必要なときに、治療に必要な医療機関を使う」というように、国民にも医療機関の利用方法を考えてもらう必要がある。その対策として導入されたのが、4月から始まる紹介状なしで大病院を受診した患者への特別料金の義務化だ。

 患者に特別料金を支払わせて国の施策に誘導しようとするやり方には反発も多く、「金持ち優遇」「貧乏人は大病院に来るな」といった感情的な批判も起きている。だが、今回の制度改革は、国民に「大病院に行くな」と言っているわけではなく、「症状に合わせて、医療機関を使い分けてほしい」というメッセージだ。

 先進諸国を見渡しても、日本のような医療機関のフリーアクセス制をとっている国はない。たとえば、イギリスでは登録した家庭医の診断を受けなければ、大病院で診察を受けることはできないし、フランスでは登録した家庭医以外の大病院を自己都合で利用するときには特別料金が発生する。

 限られた医療資源を効率よく使っていくためには、日本でも医療機関の機能分化は避けられないことだ。診療所や中小病院の医師の見立ての上で、大病院での治療が必要となれば、紹介状を書いてくれる。紹介状(診療情報提供書)には費用がかかるが、健康保険が適用されるので、70歳未満で3割負担の人なら自己負担は750円。いきなり大病院に行くより負担は抑えられる。

 大きな病気をして本当に必要な人が大病院を受診できないといったことがないように、今後は医療機関の使い方を意識し、日本の医療制度を国民みんなで守っていくようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 定番のカップ麺「日清のどん兵衛 きつねうどん」の新しい食べ方が定着しつつある。お湯を入れて5分が基本の調理方法だが、その倍、10分も待つというものだ。通称「10分どん兵衛」である。

 この作り方を有名にしたのは、最近は俳優業にも進出している芸人のマキタスポーツ。TBSラジオの番組『東京ポッド許可局』で紹介されてから、情報がまたたく間に拡散された。このぐらいならばネット界にはよくある話だが、その後、日清食品の公式ウェブサイトに「日清はなぜ10分どん兵衛を作らなかったのか」なる(シャレのわかっている)特設ページが登場。マキタスポーツ本人と日清のどん兵衛担当者との「対決」が展開された。

 筆者も試してみたが、確かに美味しい。設定時間を過ぎたカップ麺など通常は食べられたものではないが、どん兵衛の麺の場合は「のびた」というほどにはならない。仕上がりの麺はつやつやしてやわらかく、スープがしみている感じがする。10分はいかにもまだるっこしいが、これは多くの人におすすめしたい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 安倍政権が政府機関の一部移転を検討している。政権が看板に掲げる「地方創生」の一環で、移転により地方活性化を後押しする狙いがある。東京一極集中を是正する意味合いもある。

 東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)以外の道府県に募ったところ、42道府県から計69機関の要望があった。内訳は国関係が27、独立行政法人が42。中央省庁では例えば、気象庁が三重、観光庁が北海道と兵庫、消費者庁が徳島、文化庁が京都などといったところだ。このうち移転の可能性があるのは、京都府への文化庁と徳島県への消費者庁の二つだ。

 文化庁は「国宝の5割が関西に集積している」などとして京都府が要望。文化庁の一番の業務は文化財保護だが、馳(はせ)文科大臣も全面移転に向け旗を振っている。

 一方の消費者庁。徳島県は所管の独立行政法人「国民生活センター」とともに移転を要望している。徳島県は、「消費者行政の全国モデルとなる各種施策を展開している」と強調する。しかし、消費者庁職員の間には反対の空気が充満し、消費者団体も反発している。そりゃ当然だろう、消費者庁は他省庁との調整も多く、消費者団体からの相談事も多い。職員からすれば、転勤や子どもの引っ越しなど人生設計も大きく変わる。地方勤務となれば、消費者庁を志望する若者も減り、人材不足に陥る。国民生活センターは、メディアの力を借りて広報、PRすることも多いが、徳島に移転されてはメディアの足も遠のくだろう。こうしたことから自民党内からも「(移転は)消費者庁をつぶすことにつながりかねない」(船田元・自民党消費者問題調査会長)とクギを刺す声も。

 「地方創生」という美名の下、受け狙いのポピュリズムで消費者対策の司令塔が潰れてはどうしようもない。

編集部注:文化庁を数年以内に京都府へ全面移転させることが3月22日決定。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 ファッション用語で「通常よりも高いウエストライン」のことを指す。体のラインを美しく見せたり、脚長効果を望めたりするのが長所で、最近はハイウエストのデニムが女性のあいだで再流行し始めているのだそう。

 とくに男性のあいだでは、なぜか長らくパンツのベルト位置を極力下側に下げる、いわゆる「腰履き」や「尻履き」が主流を占めており、純日本風体型のオジサマたちの短足コンプレックスから来るハイウエストな着こなしは、「ヘソ履き」「乳首履き」などと散々馬鹿にされてきたが、あと2、3年もすればそういう“暗黒の時代”もようやくの終焉を迎える……かもしれないので、筆者世代にとってはまことにありがたい風潮だと言える。

 ただ、我々アラフィフにとってのハイウエスト(=乳首履き)は、脚長効果よりも、むしろ「背中を出してたら風邪引くでー!」と父母から教育されてきたがゆえのシロモノなので、できればこの流行りが冬にMAXになっていただけたら、なおさらありがたい。

 一方で、夏の女子のヘソチラや後ろパンティチラが、この流行りによって激減する可能性も高い点に関しては、ちょっぴり残念な気もしないではない。

 これぞ「アッチを立てればコッチが立たない」ってやつなのだろうか? 全然違うかもしれないけど……(笑)。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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