京都名産の漬け物の一種。一枚4ミリほどの薄く切った「聖護院かぶら」を何枚も重ねて漬けるので、「千枚漬」という。材料の聖護院かぶらは在来種の大かぶで、大きいものは直径15センチ以上、重さはおよそ5キロにも育つ。肉質が緻密で柔らかい。冬の旬の時期には甘みや旨味が増し、香りもぐんと高まるのが特長である。

 千枚漬の漬け方は、丸々と育った「聖護院かぶら」の外側にある筋の多い部分を、皮と一緒に分厚くむき取り、薄く透けるように専用鉋(かんな)で一枚ずつ削る。これを塩で一晩か二晩ほど下漬けした後、適度に塩を洗い落とし、「かぶら」と昆布を交互に重ねながら、味醂などの調味料を加えて本漬けする。一昼夜ぐらいから食べられるようになり、通常4日間ほど漬け込んだ状態が一番味がよいといわれている。「かぶら」の甘みと昆布のぬめり、ほのかな酸味が微妙に混じり合っている独特の味わいは、誰もが一度食べたら忘れられないことだろう。

 そんな淡泊妙味で知られた「千枚漬」であるが、150年前の江戸末期に、御所(京都御所)の大膳寮で考案されたことは意外に知られていない。当時、御所の料理人として働いていた大黒屋藤三郎(大藤藤三郎)の手によるもので、旬の「聖護院かぶら」を生かした浅漬けを試行錯誤する中で考え出されたそうである。当初は発酵法による漬け物で、宮中ですぐに大評判になったという。その後、1865(慶応元)年に御所を下った大黒屋は、大藤の屋号で漬物店を構えた。そして、「千枚漬」を売り出すと人気を呼び、またたく間に京名物になった。

 ところで、「聖護院かぶら」の厚くむかれた皮の部分であるが、これは細かく刻み、白菜と柚子、昆布などと一緒に浅漬けにされる。「もったいない」から生まれた刻み漬けもまた、いまでは京名物の一つになっている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 愛媛県松山市出身のプロゴルファー。24歳。明徳義塾中学校・高等学校・東北福祉大学卒業。身長181cm、体重90kg。血液型はB型。レクサス(トヨタ自動車)所属。

 アマチュア時代、日本のアマチュアゴルファーとして初めてマスターズの出場権を獲得して27位に入り、日本人初のローアマチュア(プロゴルフのオープン戦に参加したアマチュア選手中の最優秀選手)に輝いた。

 13年にプロに転向して2戦目の「つるやオープン」で優勝。シーズン4勝を挙げ賞金2億円超えで史上初のルーキー賞金王となった。

 14年から主戦場を米国に移し、「ザ・メモリアルトーナメント」で初優勝。16年には「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」で2勝目を挙げ、同年の「日本オープン」で国内メジャーを初制覇。2週間後の「WGC HSBCチャンピオンズ」で日本人で初めて世界選手権を制覇して丸山茂樹と並ぶ米ツアー3勝目を挙げ、メジャー優勝が期待されている逸材である。

 父親は日本アマチュア選手権にも出場したことのあるトップアマチュアだった。その父親に連れられてゴルフを始めたのは4歳の時。最初の日に1300球を打ったとゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)のインタビューに答えている。

 小学校までは身長150cmぐらいで小さかった。スコア100を切ったのは小学校2年の「四国ジュニア」大会でだった。

 中学2年でよりよいゴルフ環境を求めて高知の明徳義塾に転校、高校も同じ。

 GDOによると、石川遼と中学1年の時一緒に回ったという。

 「ビックリしました。ドライバーショットで40~50ydくらい置いていかれました。(中略)スイングがキレイで『スゲエ、こんな奴がいるのかよ……』って。中学3年の時の同じ大会で、また一緒に回って、遼が優勝。『やっぱりスゴかった』って思ったら、その2カ月後にプロの試合で勝ってしまった」

 その後東北福祉大に進み大学4年の時プロに転向した。

 GDOで、プロゴルファーになっていなかったらと聞かれ、

 「何をしてたんすかね……あまり考えたことがない。野球は本格的にやってみたかったなと思いますけど。でもサラリーマンはきっとできない。向かないっす。すぐクビになっていると思う」

 B型なので、基本的に自分中心、他人のことより自分のことばかり考える性格だと言っている。

 高校2年に上がる前、ボールが見えにくいと思い視力を測ったら0.2~0.3しかなかったため、ラウンド中はコンタクトをし、度の入っていないサングラスをしている。

 フロリダに家を買って、そこを拠点にアメリカツアーに参戦している。ツアーでは常に、大学の先輩であるキャディの進藤氏とトレーナー、通訳兼マネージャーを帯同して回っている。

 GDOで松山は「メジャーを獲ることは歴史に名を残すことですから」と意気込みを語っている。

 だが、同インタビューで、子どもができたらゴルファーにさせるかと聞かれ、「させません。同じツラさを味わわせたくない。同じ思いを、自分からはさせたくありません」と話している。

 松山は今年の9月までのアメリカツアー参戦3年目に、獲得賞金を自己最高の419万ドル(約4億5600万円)にし、10月半ばの「日本オープン」以降、海外大会を含めて4戦3勝、1か月で賞金3億3000万円を稼いだと話題になった。

 現在世界ランキングは6位。その実力を買って、ニクラウス、ワトソン、ウッズなどの超一流選手としかスポンサー契約しないロレックスが松山と契約したことも話題になった。

 松山はダンロップとも3年9億円という大型契約を結んでいるが、米ツアー初戦で彼が使っていたドライバーがキャロウェイ製の「グレート ビッグバーサ」だったことがゴルフファンの間で話題になっている。

 『週刊新潮』(12/1号)によれば、このことはダンロップ側も合意の上だという。

 それもヘッドの体積が460cc(それまでは420cc)で素人にも扱いやすい「すでに廃番モデル」だそうだ。松山人気で中古ゴルフ用品店で件のドライバーの値段が高騰し、いまは在庫がない状態だという。

 『週刊ポスト』(12/2号)は「大谷翔平VS.松山英樹VS.錦織圭 最強は誰だ!」という特集を組んでいる。

 日ハムの大谷は投手と打者の「二刀流」で優れた成績を残し、今年は投手部門とDH部門でともにベストナインを受賞するという快挙を成し遂げた。

 5年目になる来季の年棒は4億円を超えるといわれているが、松山、錦織に比べると年収は一番低い。

 テニスで世界ランキング5位にいる錦織は、今年の獲得賞金が396万ドル(約4億3100万円)だが、米誌『フォーブス』が発表した世界アスリート長者番付では日本人最高の29位で、3350万ドル(約36億円)にのぼる。

 錦織は15社とスポンサー契約を結び、その契約料が莫大なのである。

 ちなみに世界ナンバー1はサッカーのクリスチアーノ・ロナウドで年収8800万ドル(約95億円)、テニスのフェデラーが4位で6780万ドル(約73億円)、ゴルフでは8位ミケルソンが5290万ドル(約57億円)。

 MLBではドジャースのC・カーショーが33位。3200万ドル(約34億円)でトップ。

 野球選手はウェアや帽子などのロゴで個人契約が結べないから、年棒は高くても上位に来ないそうだ。

 だが、大谷は来シーズンオフにMLB入りが確実視されている。そうなれば6年で1億8000万ドル(年棒3000万ドル)の大型契約になるだろうと予想されているから、錦織に迫るといわれているそうである。

 だが、生涯獲得額でいうと、野球やテニスは30代半ばが選手寿命と考えられ、40代後半でもプレーできる松山が有利だという。

 しかも体力的に弱さのある錦織や大谷に比べて、松山にはタフさがあることも有利になるようだ。

 女性にもてるという点では錦織が2人に圧勝している。錦織のほうはこれまでにもスポーツ選手からモデルまで、何度も週刊誌ネタになっている。

 それに比べて大谷は甘いマスクだが、寮暮らしで球団の監視が厳しく、浮いた噂も聞こえてこない。

 松山のほうも東北福祉大時代に女子部員と噂になったことがあるそうだが、浮ついた話はこちらも聞こえてこない。

 錦織は打倒ジョコビッチ、大谷はメジャーで球速170キロ、松山はメジャー獲りを目指す。

 体格に恵まれ、今年の後半で見せたアイアンショットの切れが続けば、松山のメジャー制覇はそれほど遠いことではないと、私も思う。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 これもトランプショックの余波なのであろう。安倍首相の得意としてきた外交で、ひび割れが起きてきている。
 トランプと真っ先に会談して、TPPからの離脱を思い留めようと願ったが、会談後にトランプは安倍に当てつけるように、TPP離脱を宣言してしまった。
 またプーチンロシア大統領から「北方領土2島返還」してもらえると期待していたが、トランプが当選したとたん安倍に冷たくなってしまった。『ニューズウィーク日本版』(12/6号)は「安倍は、プーチンだけでなく、トランプにとっても御しやすい相手かもしれない」と書いている。安倍外交の底の浅さが相手に見透かされてしまったのである。

第1位 「安倍官邸 大パニック」(『週刊現代』12/10号)
第2位 「【迫真のドキュメント】借金はすでに10兆円を超えた 孫正義とみずほ銀行の『見果てぬ夢』」(『週刊現代』12/10号)
第3位 「フジ幹部“悪質セクハラ”にレコード会社が厳重抗議」(『週刊文春』12/01号)

 第3位。弱り目に祟り目という諺はフジテレビにこそよく当てはまる。フジテレビの看板音楽番組『FNSうたの夏まつり』の打ち上げで、最高責任者の夏野亮氏が、2人のレコード会社の女性社員にセクハラしたと、『文春』が報じている。
 元々酒癖と女癖が悪かったそうだが、「打ち上げでお酒の入った夏野さんは、A社の女性の胸を触り、さらにB社の女性の陰部をしつこく触ったのです」(レコード会社社員)
 その場では力関係から、彼女たちも我慢したらしいが、これを知った両レコード会社がフジテレビに厳重な抗議を行なったという。当然である。
 フジは夏野に事情を聞き、後日、取締役制作局長が両社に謝罪に出向いたというから、本人も事実を認めたのであろう。
 両社もこうした謝罪の事実があったことを認めている。
 しかし、『文春』によれば彼はいまでも現場に顔を出し、「未だ“お咎めなし”だという」(『文春』)
 こうした驕りとケジメのなさが、フジの急激な凋落の原因の一つになっていることは間違いないようである。

 第2位。お次は『現代』。孫正義(そん・まさよし)という人物は日本のトランプだという記事が『ポスト』(12/2号)にあったが、それは希代の天才か詐欺師かというように人物評価に裏表があるからだろう。
 プーチンロシア大統領と親しく話し、英国の半導体設計会社を3兆円以上で買収するなど、孫氏の派手な動きが話題だが、内情は火の車だということはよく知られている。
 孫氏を支えているのはメインバンクのみずほグループだが、もし、孫氏がコケたら、もし万が一があったら、みずほも無事ではいられないのだ。
 今度は、サウジアラビアなど中東の政府系ファンドと10兆円規模の投資ファンドをつくるというのである。
 孫氏は自身も2兆6000億円程度を注ぎ込み、テクノロジー企業に投資すると宣言しているそうだ。
 だが、サウジというのは弾圧の厳しい国で、言論の自由はもちろん、大半の国民の自由も制限されている国である。
 まともな商談が行なえるとは到底思えないのだが。
 それに、先ほども触れたが、ソフトバンクの有利子負債(借金)は約13兆円。借金が売上高を上回っているのだ。
 先頃、孫氏が財務基盤強化や借金返済のために「ハイブリッド債」という特殊な債券を発行して、3000億円超の資金調達をしようと思ったが、フタを開ければ710億円しか集まらなかったという。
 それに11月に発表したソフトバンクの決算資料によると、ソフトバンクが巨額の投資をしているインド企業向けの投資で581億円以上の損失を出していることがわかった。
 さらにソフトバンクの柱である国内携帯事業の利益が、KDDIやドコモが2ケタの伸びを示しているのに、ソフトバンクは一桁と伸び悩んでいるのである。
 巨額のカネを貸しているみずほは気が気ではないはずだ。
 私事だが、先日、携帯のことで駅前のソフトバンクの店へ行ったのだが、店員の対応がすこぶる悪かった。
 相談する気にもならず、すぐに出てきたが、後でネットの口コミを見てみたら、どこのソフトバンクの店も評判は芳しくない。
 落ちるときは現場から落ちていくのだ。無理に無理を重ねている孫正義のやり方は、ダイエー中内が凋落した姿とダブって見える。
 このまま孫氏がこの勢いを続けていけたらと、そう考えるほうがはるかに難しいはずである。
 こういうとき、周りに直言できる人間を置いていない孫氏の最大の弱点が出てくると、私は思う。

 第1位。同じ『現代』が「赤っ恥をかいた安倍首相」と見出しをつけ、トランプとプーチンにナメられたと報じている。
 トランプと真っ先に会談したことだけで有頂天になっていた安倍首相だが、APECで記者会見に臨んで、記者からトランプはTPPを離脱すると言っているが、と聞かれ「TPPは米国抜きでは意味がない」と、あたかもトランプはTPPを離脱しない、自分が話せば何とかなると言外に匂わせたのだ。
 だが、その会見が終わったわずか18分後に、トランプはビデオメッセージで「TPPからの離脱の意思を通告する」と発表したのである。
 やはり安倍首相は、トランプと中身のある話はしていなかったのだ。
 さらに同じAPECで、さらなる赤っ恥をかいていたのである。
 プーチンロシア大統領と安倍は会談した。それまでは北方領土2島返還で「合意」していたかのようなニュアンスを漏らしていた安倍だったが、この時開かれた2人の会談は空気がガラッと変わったという。

 「プーチン大統領はこれまでとは別人のようだった。ロシアとの関係改善を公約に掲げたトランプ候補が当選したことで、もはや日本など眼中にないということなのだろう」(外務省関係者)

 何のために地元の山口県にまで呼んで首脳会談をやるのか。
 これではプーチンに北方領土返還カードをちらつかされて、多額の経済援助を引っ張られただけではないか。
 役者が違いすぎるということだろう。
 おまけにロシアはせせら笑うように、会談直後の22日に、北方領土の択捉島と国後島に、新型の地対艦ミサイルを配備したと発表したのだ。
 泣きっ面に蜂とはこのことだ。トランプもプーチンも安倍など眼中にないのだ。
 ロシアのセボードニャ通信社のコツバ・セルゲイ東京支局長がこう言っている。

 「ロシア側は、南クリル諸島(北方領土)を日本に譲り渡すなどと言ったことは一度もない。そもそも経済制裁を科してくる敵国に、領土を渡す国がどこにあるのか。クリミア半島を取り返したことでロシア国民から支持されているプーチン大統領が、日本に領土を渡したら、とたんに支持率が急降下して、ロシアで政変が起こるだろう」

 こうした言い分のほうが真っ当に聞こえるぐらい、安倍の勝手な思い込みで、プーチンにいいように利用され、ほかにいい女ができたからあっさり捨てられた、ということであろう。
 アメリカやロシアには安倍が得意の「札束外交」は功を奏さなかった。当然のことだろうが、安倍の命脈が尽きる予兆であることは間違いない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 アニメ映画『君の名は。』が空前のヒットとなっている。監督の新海誠(しんかい・まこと)氏といえば、「いつかめぐり逢う少年と少女」を流麗な映像とともに紡ぐ作風で有名だ。もとより若者の支持を得ていたが、今回の作品で完全にメジャー化した感がある。

 そんな『君の名は。』の「原点」ともいえる作品が、通信教育のZ会が2014年に製作したCM映像『クロスロード』(http://www.zkai.co.jp/home/crossroad/)だ。離島に住む女子高生と都内の男子高生が、勉強に励む青春を描く。短いバージョンだと、その細かい設定はよくわからない。全容が見えるのは動画サイトで注目された120秒版だ。ふたりはまだお互いを知らないが、劇中の添削担当者は、なぜだか解答用紙にある「単純なミスも証明の組み立ても」よく似ていることに気づく。やがてふたりが合格発表の場で出逢ったことも、偶然ではなく運命であったかのように演出される。短いながらも、新海誠の「らしさ」が全開となっているストーリーラインである。

 『クロスロード』と『君の名は。』のキャラクターデザインは、いま業界で引っぱりだことなっている田中将賀氏(たなか・まさよし、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など)。ヴォーカル付きの曲を活かしたビデオクリップ的な表現も、『クロスロード』ですでに完成されていた。社会現象ともなった『君の名は。』は、決して運や偶然で生まれた作品ではない。新しい名作の方向性を見出した制作陣が、正しく120秒間を敷衍した成果なのだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 人は、本を読むことで他者の暮らしを追体験し、自分の経験だけでは知りえなかったことを知る。

 「生きている図書館」は、紙やウェブの本ではなく、「今、ここで生きている人」を貸し出して、直接対話することで、他者の人生を追体験し、偏見や差別をなくしていこうという試み。2000年に、デンマークのコペンハーゲンで開かれたロックフェスで、非暴力を訴える若者たちが企画したのが始まり。

 障害のある人、ホームレス、異教徒、難民、LGBT(性的少数者)など、マイノリティーと言われる人々を「生きている本」として招き、参加者は希望する「本=人」を借りて、少人数で30分程度対話をする。

 実際に話を聞くことで、ただ見ているだけではわからないマイノリティーの苦労や思いを知り、誤解や偏見の解消につなげるのが目的だ。

 「生きている本」である人々も、さまざまな質問がくることを理解しているため、参加者は日常では「こんなこと聞いても大丈夫かな」と尻込みしてしまうことも、躊躇なく聞くことができる。直接踏み込んだ話ができるため、マイノリティーの深い理解につながるのだ。

 その後、この試みは世界に広がり、市民団体や学生などが中心となり、70か国以上で開催されるに至っている。

 日本では、2008年12月に、東京大学先端科学技術研究センター内にあるリビング・ライブラリー・ジャパンが、はじめて「生きている図書館」を開催。その後、この試みは全国に広がり、市民にも「生きている図書館」を開放する大学などが増えてきている。

 どんな思いを抱えているのか。どんな苦労があったのか。

 人は、自ら経験しなければ、本当のところはわからない。彼らの人生をすべて理解することなどは不可能だ。

だが、直接対話をし、当事者と触れ合うことで、これからの社会をよりよいものにする方法を一緒に考えることはできるはずだ。

 日本では、国籍の違う人や貧困のなかにある人など、社会的少数者へのヘイトスピーチが大きな問題となっているが、根源には他者への無理解がある。こうした無理解をなくすためには、対話が必要だ。

 人々が多様性を認め合い、社会的少数者を包摂してともに生きていくために、「生きている図書館」のさらなる広がりを期待したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 「旬ワードウォッチ」では、すでにインスタントカメラ「写ルンです」の再ブームについて伝えているが、さながら続報のような記事となる。いま、音楽にうるさい若者たちのあいだで、カセットテープが「きている」というのだ。音楽をデータとして聴く時代、カセットテープに新鮮みを抱く層が生まれたことは、じつに興味深い現象だ。

 いま東京都内では、カセットテープを取り扱う店舗が少しずつ増えている。これは日本だけの現象ではない。すでにブームが認識されているレコードと同様に、世界中の若者がアナログの魅力に気づき始めたようである。ノイズを含めた音の感触は、「きれいな音」が全盛の時代、「味わいのある音」と受け取られている。それはオーディオマニアでなくとも誰もが理解できる違いだろう。

 見た目も大事だ。レコード人気の場合は「ジャケ写」の吸引力がよく語られる。カセットテープの場合、CDなどのようなディスクとは明らかに異なる、そのフォルム自体が強みだ。カセットプレーヤー自体も全盛期のものよりデザイン的に洗練されており、その二つが合体して、音楽として完成するガジェット感が評価されているようだ。「曲を簡単に飛ばせない」不便さも、ある意味ライブ的であり、「そこがいい」として理解されつつある。

 それにしても、最近はアナログの復権がめざましい。次に「くる」アイテムは、2016年に生産を終えてしまったVHSのビデオあたりではないだろうか。それもない話ではない、と思える昨今の流れである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「モノ」をインターネットにつなげ、情報をやり取りしたり、操作したりする「IoT(Internet of Things」が注目を集めている。「つながるクルマ」は、いわばそのクルマ版である。英語で言えば「Connected Car」。文字通り、街を走るクルマが常にインターネットにつながっているのである。

 ではクルマがインターネットと常時接続することで、何ができるのか。

 例えば、走行中の地域の最新情報を入手できる。近くに事故が起きれば、場所や事故の状況などを教えてくれる。また、事故でエアバッグが作動すれば、インターネットを通じて通報を受けたオペレーターが「大丈夫ですか。救急車を呼びますか」などと声をかけてくれる。車両の不具合や故障を感知し、修理・メンテナンスに誘導することも可能だ。

 逆に走行車両から集めるデータは、ビッグデータとして集約・解析し、渋滞回避情報の提供などに生かすことも可能だ。交通情報からAI(人工知能)が迂回路を見つけたり、AIが走行車両にそれぞれ指示し、全体の交通量を分散させて渋滞が緩和できるかもしれない。

 「つながるクルマ」を巡っては、日本の自動車メーカーでは、トヨタが積極的に開発を進めている。社内カンパニーを作り、通信会社などと連携。さらに2016年11月1日には今後の事業戦略を公表した。

 それによると、2020年までに日米で新たに販売するほぼ全車を「つながるクルマ」にする計画だ。トヨタは「車を作って売る会社であると同時に、『移動サービス』を提供する会社になる」と説明。従来の製造業に加え、情報サービス産業にも事業を展開し、新たな収益を得ることを目指す。

 ライバルの日産自動車・ルノーも、つながるクルマの開発拠点を東京都内に設置(2016年10月)し、開発を急いでいる。

 クルマは将来、スマホのような、「情報端末」の側面を持つことになるだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「美容大国」とも呼ばれる韓国で発祥した、リキッドとパウダーを組み合わせたコスメグッズ(スタイル)のこと。

 「美容液」「保湿クリーム」「化粧下地」「ファンデーション」「UVカット」「コンシーラー」の役割が一本で済むのが大きな売りで、肌に優しくタッチするだけで“光を放つうるツヤ肌”へと仕上がり、時短メイクにも最適……なのだそう。

 “お膝元”の韓国では、最近の主流となりつつある「フンニョ女子(ハングル語の“フンナンジャ”の略で、ほんのりと柔らかい雰囲気を持った女の子のこと)」のあいだで爆発的人気を誇っているようだが、メイク術一つ取ってもトレンドが一貫せずにバラつく傾向の強い日本では、適材適所的なプチブレイクにとどまっているとも聞く(あまり、ガッツリ塗りすぎると、プリクラや盛り写メ(実物よりもかわいく見えるよう編集・加工された写メ)みたいなディテールになってしまうとの噂もある)。

 いずれにせよ「時短メイクに最適」というメリットは、大和撫子たちにも捨てがたい魅力であるのは間違いなく、これを男子に見立てるなら「ヒゲの永久脱毛によって、朝のシェイバータイムが大幅に削減できる」ことにも匹敵すると思われる。……となれば、ヒゲの濃さに40年近く悩み続けてきた筆者も、その利用価値の高さに納得せざるを得ない。ちなみにヒゲの永久脱毛は、今や男性用美容クリニックの看板施術となりつつある……らしい。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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