蘇鉄は世界の熱帯や亜熱帯地域に自生するソテツ科の植物。「生きた化石」と呼ばれ、原始的なシダ植物の形態を残した起源の極めて古い植物である。日本では九州南部より以南の地域に一種だけが自生するとされ、関東より南の地域では、路地植えの庭園樹木として古くから親しまれてきた歴史がある。京都にも歴史的な日本庭園や京町家の庭木として数多くみられる。有名な所では京都御所や仙洞御所をはじめ、二条城、桂離宮、西本願寺の大書院庭園などの蘇鉄が有名である。それにしても時間をかけて生い育つ蘇鉄は、高さ2メートルから5メートル、幹の太さは50センチあまりになり、1メートル近くもある葉が生い茂る。その姿は、日本の庭園ではかなり異様な存在感を放つのだが、どのような理由で珍重されてきたのだろう。

 京都で初めて文献に「蘇鉄」の名称が登場するのは、室町時代の1488(長享2)年とされている。当時は中国経由の行路に加え、琉球を窓口にした東南アジアの交易ルートが開かれた時期だ。南方の国々のさまざまな産物と一緒に、九州や瀬戸内を通り、蘇鉄がはるばる京都までやってきたと考えられる。

 それほどの道のりを経ても輸入された理由は、一般的な庭木と明らかに異なる、その樹形のもっている異国情緒のゆえである。その姿は庭石として珍奇な色や形、巨石が喜ばれたことと同じように、権力を示す格好の材料として使われてきた。室町期以降より江戸期に至っても、そのような風潮は変わりなく続き、1602(慶長7)年に徳川家康の命によって着工した二条城の庭園には、完成当初60本もの蘇鉄が庭に林立し、徳川家の権勢を讃えたと伝えられている。その後、それらの蘇鉄の一部は京都御所に移植されたり、二条城が再整備されたりと、本数を減らしていく。そして、いつしか未知なる魅力をもつ庭木として、なくてはならない存在感を有するようになった。


庭の片隅で動き出しそうな存在感の蘇鉄。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 新潟県北魚沼郡広神村(魚沼市旧広神村)出身、57歳。「謙」は越後の戦国武将・上杉謙信に因むという。演劇集団・円を経て2002年からケイダッシュ所属。

 1987年のNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で主役の伊達政宗を演じ39.7%という大河ドラマ史上最高の平均視聴率を獲得して、一躍スターダムにのし上がった。

 だが、1989年に映画『天と地と』撮影中に急性骨髄性白血病を発症して降板。生命も危ぶまれたが約1年の闘病の後、治療を続けながらも俳優業に復帰した。

 2003年に公開されたトム・クルーズ主演のアメリカ映画『ラスト サムライ』に出演して、同年度のアカデミー賞助演男優賞などにノミネートされた。

 その後『バットマン ビギンズ』や『SAYURI』などにも出演し、ロサンゼルスを拠点にして英会話を猛勉強、マスターした努力の人でもある。
 2005年には米TIME誌の表紙になり、ピープル誌が企画する「最もセクシーな外国人男性」に選出されたりする国際派俳優である。

 2015年にはミュージカル『王様と私』に主演してトニー賞・ミュージカル部門主演男優賞にノミネートされたが、翌年に早期の胃がんが発見され手術を受けている。

 私生活では1983年に結婚したが、泥沼の2年に及ぶ離婚調停の末、2005年に離婚している。同年に女優の南果歩(53)と再婚

 長男・渡辺大は俳優、長女・杏(あん)も女優・ファッションモデルとして活躍している。

 日本を代表する俳優でありブロードウェーの舞台でも主役を務める渡辺だが、久々に『週刊文春』(4/6号、以下『文春』)にスキャンダルが載った。

 不倫の舞台はニューヨークである。ニューヨークの冬は寒い。5年前にクリスマスから新年7日ごろまでニューヨークに滞在したことがあるが、ブロードウェーにミュージカルを見に行って、劇場を出たら大雪になっていた。

 タクシーはつかまらないので仕方なくホテルまで歩こうとしたが、雪が激しさを増し、動きが取れなくなってきた。

 下手をすればここで行き倒れかと覚悟したころ、ようやくタクシーをつかまえることができて、何とかホテルへたどり着いた。そのホテルのレストランで飲んだオニオングラタンスープのおいしさを決して忘れることはないだろう。

 だが、今年の2月18日は例年より10度も気温が高かったというから、マンハッタンのオアシスであるセントラルパークにも暖かさに誘われ、人出が多かったようだ。

 そんな中を肩寄せあって散歩する2人の日本人男女がいた。小柄な女は濃紺のロングコートで、顔の半分をサングラスで覆っていたが、笑みを浮かべていた。

 帽子とスカーフをまとった男もサングラスをしている。歩道の隅には名残雪。絵のような景色の中を2人は手を握り合ったまま、高級住宅街のほうへ歩いて行った。

 中年のニューヨーカーが、男の顔を見て「ケン・ワタナベ」と呟いた。今や世界的俳優となった男は、そのまま彼女を伴って高級アパートメントへと入って行った。

 映画のワンシーンのようである。だが、渡辺謙が連れていたのは再婚した妻・果歩ではなかった

 果歩は昨年3月に乳がんを患い、都内の病院で手術している。それ以後投薬療法を開始しており、渡辺も献身的な介護をして“おしどり夫婦”といわれている。

 しかも、『文春』によると、果歩はニューヨークを離れて、元夫で作家の辻仁成との間にもうけた大学生の息子に会うためにサンフランシスコへ行っていたそうだ。

 渡辺の女性遍歴は有名である。最初の妻との離婚がもつれて裁判沙汰になった際、妻サイドが実名を上げた女たちの中には、女優以外にも、NHKの受付嬢、行きつけのすし屋の常連客の妻までいたことが大きな話題になった。

 現在熱愛しているA子は『文春』が調べたところ、ジュエリーデザイナーで36歳。出会いは渡辺が主演した『許されざる者』の試写会の後、俳優たちと遊びに行った大阪・北新地にある老舗高級クラブだったという。

 大阪の裕福な家庭で育ったA子は、女子高を出た後、女性誌の読者モデルとして活動していたが、20代後半から宝飾関係の専門学校へ行き始め、ジュエリーブランドを立ち上げようとして、その資金稼ぎのためにクラブで働いていたという。

 エルメスのバッグをいくつも持ち、フランス語やソムリエの資格にも挑戦していて、海外の高級ホテルに宿泊するセレブな生活を送っているようだ。

 そんな2人は最初の出会いから1年後ぐらいで交際を本格的にスタートさせたという。

 逢瀬はニューヨークだけではなく、大阪や気仙沼など国内でも仲睦まじい2人の姿が目撃されている。

 『文春』には、2人がニューヨークのチャイニーズレストランで食事をしている写真、渡辺がソファーでくつろいでいる写真も掲載されている。

 ティファニーで買ったプレゼントをもらって喜ぶ彼女とのツーショットを、渡辺が自撮りした写真まである。

 なぜこのような写真を『文春』は手に入れることができたのであろう。渡辺が出すはずがない。A子が自分のSNSにこのような写真を載せていたとは考えにくい。

 推測するに、A子から出たのではないのか。『フライデー』編集長の経験からいうと、こうした情報は交際している女の側から出ることが多い

 その際、有名になりたい、こんな有名な芸能人と私は付き合っているんだと世間に吹聴したいという「動機」が多かった。

 今回のA子にはそうした動機はないようだ。これも推測だが、2人の関係が妻の南果歩の知るところとなり、困った渡辺から別れ話を持ち出され、カッとなってというケースなのかもしれない。

 だが、仲睦まじく歩いている2人に、そうした諍いがあるようには見えないのはなぜだろう。

 どちらにしても、渡辺は妻に何と言って詫びるのだろうか。それともラストサムライらしく、腹掻っ捌いて死んでみせるのか。

 『週刊現代』(4/15号、以下『現代』)は、この「不倫」問題を追っている。やはり、2月以降、2人の間が悪化したため、A子が情報をリークしたのだろうと推測している。

 芸能事務所関係者が渡辺をこう評している。

 「いまは真面目でクリーンなイメージですが、もともとは女性好きで、しかも惚れっぽく冷めやすい。Aさんとも温泉旅行に行ったり、最初は盛り上がったのだと思います。Aさんもホステスをやめるほど謙さんに夢中になって、周囲にも交際を話してしまった。おそらく謙さんはだんだん距離を置こうとしたが、Aさんは別れたくなかった。その男女のズレが、不倫が明るみに出るきっかけとなったのでしょうね」

 同じ関係者が、『文春』が出た後、渡辺は彼女を責めず、自分の責任だとして、きちんと関係を清算しようとしているという。

 映画で彼が演じる主人公のようだが、実生活ではなかなかそうはいかないのではないか。かつて『現代』のインタビューに渡辺がこう答えていたそうだ。

 「彼女(南のこと=筆者注)は真っ赤なマグマ。こっちも焦げるのを覚悟で付き合わなくてはいけませんから、大変ですよ」

 そのうえ女は執念深い。謙さん、大変だねと、声をかけてあげたい。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 昨日聞いた話だが、2040年に中国は、65歳以上の人間が3億人を超えるという。現在でも日本の人口ぐらいの高齢者がいるというのだから、中国という国が抱えている問題の大きさがわかろうというものである。老々介護、介護殺人など、高齢者先進国日本は、こうした難問を解決するノウハウをつくりあげ、後進国へ高齢者対策ビジネスとして売り込むことを考えたらどうか。それには目の前のこの問題をどうするかだが、いい知恵はないかな。

第1位 「他人事ではなかった『介護殺人』の恐怖」(『週刊新潮』4/6号)
第2位 「緊急寄稿 菅野完『籠池ノート』の中身」(『週刊朝日』4/14号)
第3位 「ディーン・フジオカが『藤岡竜雄』だった頃」(『週刊文春』4/6号)

 第3位。ディーン・フジオカ(36)という俳優がいる。NHKの朝ドラ『あさが来た』でブレークし、4月から始まるテレビ朝日系のニュース番組『サタデーステーション』にレギュラー出演することが決まった。
 謎に包まれた経歴で、ニュース番組の顔になる男を『文春』が追いかけたとなると、何やら昨年のショーンKの二の舞かと思って読み始めたが、期待(?)は裏切られた。
 彼の本名は藤岡竜雄で、メーカー勤務の父親とピアノ教師の母親のもと、4人兄弟の長男として福島県で生まれている。生粋の日本人である。
 一時は芸能界へ入るチャンスがあったが、IT分野に興味を持ち、英語を磨くためにアメリカへわたる。
 シアトルのコミュニティカレッジに通うとき、学校から紹介されたホストファミリーが彼に付けた愛称が「ディーン」だったそうだ。
 彼が次に選んだのが香港だった。モデルや香港映画にも出たが、日本の芸能関係者に「これからは北京語(中国語)の時代だ」と言われ、台湾へ行く。
 台湾ではドラマにも出たが、さほど華々しい活躍をしたわけではない。その後台北で知り合ったインドネシアの恋人が住む地に移り、結婚。彼は今もジャカルタを生活の拠点にしているそうだ。
 この彼女の父親はインドネシアで指折りの大富豪だというから、彼の運がついてきたのは、この結婚からということができる。
 というわけで、有名になりたいという野心を抱いてあちこちを回った青年が、スターの座をつかんだのは、生まれ育った日本だったというのはやや皮肉ではある。
 テレビ局が彼のどんなところを見て抜擢したのかは、私にはわからない。珍しいもの好きだけで起用されたとすれば、ディーンにとって気の毒な気もする。テレビでしゃべったひと言で、俳優としてのキャリアをダメにしたケースはこれまで多くある。まずはお手並み拝見といくか。

 第2位。朝日新聞デジタル版が3月31日付でこう報じている。

 「大阪府教育庁は31日午前、学校法人『森友学園』(大阪市)が運営する幼稚園の立ち入り調査に入った。府は、補助金を不正に受給したなどの疑いがあるとみて、学園の籠池泰典(かごいけ・やすのり)氏(64)らから事情を聴く」

 権力ににらまれたら怖い。安倍の妻が説明責任を果たさないことに世論が怒っていることを知っていながら、籠池封じをするというは、安倍の権力が衰退してきている証左であるが、疑惑はまだ解明されてなどいない。
 メディアは権力を私(わたくし)しようとする安倍夫婦を許してはならないと思うが、今の大メディアは頼りないからな。
 証人喚問以来、あまり表に出なくなった籠池泰典森友学園前理事長だが、その代わりといっては何だが、ジャーナリストの菅野完(すがの・たもつ)氏が、週刊朝日で籠池の言い分の正しさと、安倍首相の、この事件を葬り去ろうという画策に「NO」を突き付けている。
 菅野氏は、問題になっている昭恵の秘書、谷査恵子からのfaxだが、それと突き合わせて読むとよくわかる籠池の「手紙」についてこう書いている。

 「冒頭の挨拶や自己紹介、依頼内容の概要など、手紙らしい内容は一切ない。ただただ要求内容が羅列されるだけ。『籠池氏が何をしている人か』『なんでこんな手紙を送りつけてきたのか』という予備知識がなければ、到底、理解できるような代物ではない。しかしながら、これに対する返答である谷氏からのfaxは、予備知識のない人間であれば読解不可能なはずの『籠池からの手紙』を見事に読み込み、その要求事項の全てに遺漏なく的確に返答しており、先述のように『工事立替費の次年度での予算化』という『籠池の要求』を完全に満たす回答まである」

 菅野氏は、ここまで円滑なコミュニケーションが成立するためには、谷に解説する人間が必要で、それは、籠池が留守番電話に吹き込んだと言い、自身のフェイスブックでも認めている、昭恵が担当したと考えるのが自然だろうと言っている。
 昭恵が籠池の要求を受け、それを財務省に伝えろと谷に指示を出した。

 「これでは政治家が行う『陳情処理』や『口利き』と全く同じではないか」(菅野)

 昭恵の土地取引への関与は誰の目にも明らかだという菅野の主張は、私にも理解できる。
 これまで、政府、与党側から、この問題で資料が出されたことはない。議論の検討材料になる資料はことごとく籠池側から提示されたものばかりである。
 それにもかかわらず、安倍や菅官房長官の言い分は「『苦しい言い訳』としか表現のしようがあるまい」(同)。それは安倍が、妻と私が関わっていれば、総理も議員も辞めると言ってしまったため、すべてを籠池の一人芝居にしなくてはならなくなったためである。

 「たかだか首相一人のプライドを守るために、政府高官たちが嘘に嘘を重ね、国家を溶解させていく姿は見るに忍びない。もうゲームオーバーだろう。首相、いい加減、諦めなさいな」(同)

 大阪地検が捜査を開始したが、東京地検特捜部の元検事、郷原信郎弁護士は、こう語っている。

 「籠池氏は証人喚問でも一貫して昭恵氏から100万円をもらったと語るなど政権には大きなダメージを与えた。そんな意を法務省が“忖度”し、告発状を受理したとリークしたのではないか。補助金は返還しているので通常は捜査しても起訴はありえない

 むき出しの国家権力を使って、一市民をひねり潰そうというのは、あってはならない。
 籠池の人間性や信仰心はともかく、ここで安倍の横暴を止めないと、日本は北朝鮮よりも言論弾圧がひどい国になる。
 メディアはここが正念場だということを、腹に叩き込め。

 第1位。『新潮』では「介護殺人」について特集を組んでいる。何しろ介護殺人は日常化しているのである。
 自分が認知症になり、介護される側になったら。逆にカミさんがそうなったら、どうするだろう。
 元気な時は「オレがお前の面倒を見てやる」「私があなたの介護をする」と言えるが(本音は別として)、そうなったときは、介護する側の肉体的な衰えもある。
 『新潮』は有名人といわれる人たちにも話を聞いているが、そうした体験のある人は異口同音に、この人を殺して私も死のうと考えたのは一度や二度ではないと話している。
 世界で一番早く少子高齢化を迎えた老人大国ニッポン。なかでも老々介護、介護殺人に対する処方箋を考えだしたら、今でも日本人の人口を超える高齢者を抱える中国などは、そのノウハウをいくらカネを出してもいいから買いにくるに違いない。
 自動車も半導体もテレビも斜陽産業になり、日本が生きていこうとすれば、高齢者のクオリティ・オブ・ライフをどうするかというノウハウを世界に先駆けてつくることしかないと思う。
 歌手の橋幸夫(73)は6年にわたって認知症の実母を介護した。もちろん介護殺人をしたわけではないが、介護殺人をした人間には同情的だ。

 「愛する人を手にかけるのは本当に辛いことのはず。でも愛情があればあるほど、相手を楽にしてあげたくなるんですよね。そういう人を、果たして単に『殺人犯』と片付けていいのかどうか」

 エッセイストの安藤和津(69)は、介護していた実母の死を夢に見たことがあったと振り返っている。

 「仕事、家事、子育てと介護で、熟睡できることは全くありませんでした」(安藤)。

 慢性的な睡眠不足が思考回路をおかしくし、夜、外を眺めて大きな木が目に飛び込んでくると、「この木に紐をぶら下げて首をくくったら楽になる」と思ったという。

 事実婚のパートナーと父、母の3人を介護したという作家で慶応大学文学部教授の荻野アンナ(60)は、父親の介護のとき、父親がリハビリ病院に入ることに怒り、そこの医者から出ていってくれと言われたとき、病院に行く途中でカッターナイフと缶チューハイを知らずに買っていたという。

 「それまで私の中でなんとか保っていた『何か』がガラガラと音を立てて崩れ、『もういや、こんな生活!』『お父さんを殺して私も死ぬ!』と叫びながら、床を転がっていました」(荻野)

 父への殺意というよりも、世界中で私以外にこの人の面倒を見られる人はいない。だから責任を取って心中しよう、という気持ちだったという。

 安倍首相よ、小池都知事よ。豊洲や東京五輪などよりも深刻でより難しい「老々介護」「介護殺人」について、英知を集め、解決策を早急に模索するべきだと思う。

 これこそが今の日本の本当の危機であることは間違いないのだから。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ニュース番組が好きであれば、大蔵省時代から財務省のことを「MOF(モフ、Ministry of Finance)」と略すことを知っているだろう。同様に、環境省はMinistry of the Environmentを略して「MOE」と称する。「モエ」だ。完全にダジャレではあるのだが、ここから中央官庁らしからぬ、「萌え」を前面に押し出したキャラクタープロジェクトが幕を開けた。

 「2050年までにCO2排出量を80%削減する」という目標を掲げたパリ協定を受けて、環境省は「COOL CHOICE」なる国民運動を打ち出した。その名の通り、地球温暖化の抑止に向けた「かしこい選択」を促そうとしている。この認知度を上げるべく発表されたキャラクターが女子高生の「君野イマ」と「君野ミライ」である。コンセプトとデザインは一般公募されたもの。

 「君野イマ」はぐうたらで不摂生、「君野ミライ」はクールで知的でしっかり者。「イマ」は並行世界「クールワールド」から来たもうひとりの自分「ミライ」と出会い、彼女の意志―世界を終わらせないために人々の生活態度を正そうとする—を知る、という設定だ。いまどきのラノベやアニメのトレンドと乖離しておらず、お役所のプランとしてはしっかりした印象を受ける。今後、スマホのアプリなど広報面で活躍する予定という。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2018年度から、大学生などが利用できる返済不要の「給付型奨学金」が新設される。

 スウェーデンやノルウェーなど北欧諸国は、教育にかける公的支援が充実している。授業料は無償か非常に低く、学生への支援体制も整っている。子どもへの教育こそ、国を支える力になると考えているからだろう。

 その真逆に位置するのが日本だ。

 戦後、日本では教育費が物価の上昇率を大きく上回って高額になっている。1975年に3万6000円だった国立大学の年間授業料は、2005年に53万5800円へと上昇。40年間で約15倍になっている。その一方で、教育費への公的支援は非常に少なく、個人負担が重いのも特徴だ。OECD(経済協力開発機構)の「図表で見る教育2015年版」によると、高等教育を受けるための個人負担の割合は、OECD加盟国平均が30.3%なのに対して日本は65.7%で、学生への支援整備を長く怠ってきた。

 その象徴的なものが、国の奨学金事業のあり方だ。大学生などを対象とした日本学生支援機構の奨学金は、これまで返済義務のある貸与型しか用意されていなかったのだ。それでも年々利用者は増加。2013年度は約144万人に及んでいるが、その7割が有利子のものだ。

 戦後の経済成長期とは異なり、今は大学を卒業したからといって、誰もが正社員として働けるわけではない。全労働者の4割近くが非正規雇用という社会環境のなかでは、大卒でも安定した収入が得られないこともあり、奨学金の滞納が大きな問題になっていた。

 また、教育格差の広がりは、国力を弱めることにもつながる。親の所得によって子どもが教育を受ける機会を奪われないようにするために、返済不要の給付型奨学金の必要性が言われるようになっていた。

 当初、国は財源確保の問題から、給付型奨学金の創設には消極的だったが、選挙対策のために与党内からも導入を求める声が高まり、「ニッポン一億総活躍プラン」に給付型奨学金の創設が明記されることになった。

 大学生や短大生などを対象とした給付型奨学金の導入は2018年度からで、今年の春から高校を通じて希望者を募る予定だ。利用できるのは、住民税非課税世帯の子どもで、1学年2万人程度。また、高校時代の成績や学外活動での成果なども選考条件になる。

 児童養護施設出身者や私大の下宿生など、一部の学生には2017年度から先行実施される。

 給付額は、下宿の有無、進学先などに応じて月2万~4万円(国立・自宅:2万円、国立・自宅外、私立・自宅:3万円、私立・自宅外:4万円、児童養護施設出身者は別途24万円の入学一時金)。ただし、学業などで問題があれば返還を求められることもある。

 長く放置されてきた教育費の個人負担に目を向け、給付型奨学金を新設したことは大きな評価に値する。だが、利用できるのは1学年2万人程度で、2017年度の18歳人口117万人の1.7%に過ぎない。これで、誰もが平等に高等教育を受けられる社会になったとはいいがたい。

 「勉強したい」という意思のある子どもが、過度な経済的負担を強いられることなく、安心して学べる環境はどうすればつくれるのか。授業料を引き下げるなど、その他の方法も模索しながら解決策を探りたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 2017年のトレンドカラーといわれているのが「アビスブルー」である。「アビス(abyss)」とはもともと「深くて見えなくなったところ、深淵」といった意味で、「深海」の意味で使われることもある(『タイタニック』で知られるジェームズ・キャメロン監督のアクション映画のタイトルにもなった)。

 地上から見た海というよりは、昏(くら)さのある深海のディープブルー。それがアビスカラーだ。インディゴの青はこのイメージに近いといえ、近年のデニム人気の流れにも沿っている。ファッションアイテムに関してはまれに、一般には着こなしが難しい流行りもあるが、今回は取り入れやすいはず。春夏のシーズン、ホワイトのアイテムと組み合わせるとトレンドを踏まえつつ爽やかな印象になるだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 日本語にすると「もう一つの事実」あるいは「代替的事実」。

 米国・トランプ政権から飛び出した奇妙な言葉である。その経緯はこうだ。

 2017年1月の大統領就任式会場の人出について、米メディアは8年前のオバマ大統領の就任式に比べてとても少なかったと指摘した。

 これに対し、トランプ大統領自身が米メディアを「うそつきだ」と批判。さらにスパイサー報道官は「史上最多の聴衆だった」と主張した。その際、高圧的なスパイサー氏は記者からの質問を一切受け付けつけなかった。

 そこに登場したのがコンウェイ大統領顧問。テレビ番組で前述のスパイサー発言への疑念を指摘されると、こう言い放ったのだ。

 「オルタナティブ・ファクトだ」

 ちなみに、8年前の就任式の写真と比べると明らかに人出が少なかったのは「客観的事実」だ。

 コンウェイ氏の発言は、事実の前に強弁としか言いようがない。番組ではキャスターから「代替的事実とは事実ではない。ウソだ」と反論されたが、当然だ。コンウェイ氏は「いずれにせよ人出の数を確認する方法はない」としか言い返せなかった。

 「オルタナティブ・ファクト」にはトランプ政権によるメディア批判の側面がある。見逃してはならないのは、政権に批判的なメディアの指摘を一切認めず、逆に「偽ニュース」として根拠もなく排除する、その政治的スタンスだ。逆にトランプ大統領にこそ、虚言ぶりが目立つ。

 野放図なトランプ節に我々はもっと警戒せねばならない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 パナソニックから発売中の「メガフォン型翻訳機」のこと。日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語に対応し、プリセット定型文は約300文。さらにワード選択機能により、使える文章は合計約1800パターンにもおよぶらしい。

 「しゃべった言葉が別の国の言語に変換される」という翻訳機能は、おそらく現代社会の最新鋭テクノロジーを駆使したものだと思われるが、それが「メガフォン」というひと昔前の、あえて言わせていただくなら「マヌケ」なかたちとなって商品化されているのが、なかなかに画期的。まるでドラえもんのポケットから出てくる便利グッズみたいである。

 おもに、海外旅行ツアーの誘導などで重宝されているようで、すでに成田空港でもこの「メガホンヤク」の導入がはじまっているらしい。「英語が苦手だけど英語の歌が唄いたい」みたいな外国人かぶれなミュージシャンの方々にもゼヒおすすめ! 初期の椎名林檎ばりに、メガホン(ヤク)片手に個性的なパフォーマンスをステージで披露してみてはいかがだろう?

 ところで、筆者は「ラッパ型の音声拡張器具」のことを通常「メガフォン」と書くのだが、「メガホンヤク」の場合は「フォン」ではなく「ホン」。もちろん「メガホン」と「ホンヤク(翻訳)」をかけているのは誰にでもわかるが、まさかこの駄洒落を使いたいがためだけに、フォルムをあえて「メガフォン型」にしたのでは……という疑念も晴れなくはない。そういうの、筆者は個人的に嫌いじゃないけど?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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