「汁粉」とは「汁粉餅」の略で、小豆餡の汁に餅を入れた菓子である。京都で「汁粉」というと、漉し餡を使ったものという意味であり、粒餡のいわゆる田舎汁粉のことは「善哉(ぜんざい)」と呼ばなければいけない。一方、関東で「善哉」といったら、粟や白い餅に、ぼってりと汁気の少ない餡をかけたものだと思うのだが、これを京都では「亀山」と呼んでいる。

 さて、このおいしい「汁粉」を、行楽や旅の道中に携帯し、どこでも食べてしまおうと考え出されたのが「懐中汁粉」である。一説に、日本最古のインスタント食品ともいわれている。

 「懐中汁粉」は最中のような感じで、餡の粉が外皮に包まれており、これを椀に入れ、熱いお湯を注いで混ぜるだけでできあがる。外皮は、薄い餅を焼いた皮や、最中と同じ麩焼きの皮でつくられている。中の餡は晒し餡というものだ。これは小豆をやわらかに煮て、外皮を取り除きながら濾した漉し餡を、加熱乾燥して粉末にしたものだ。砂糖や塩、澱粉などで調合され、さらに椀の中で溶けて浮かび上がってくる麩や求肥(ぎゅうひ)、小花の塩漬けなどが詰め込まれている。餡の味ばかりか、具材の組み合わせや色合いなどにも、和菓子店のこだわりが見られる一品なのである。京都では、老舗・末富(すえとみ)のシンプルな光悦善哉、甘泉堂(かんせいどう)の蘭の塩漬けが入った四君子(しくんし)、京華堂利保(きょうかどう・としやす)の筍や松茸を模した懐中汁粉などが有名で、ほかにもかなりの種類があると思われる。

 余談であるが、『東洋文庫』の『明治東京逸聞史』の中に、1911(明治44)年『中央公論』に掲載された懐中汁粉の話を発見した。

 「なんでも喰べる物がないから、お茶屋で懐中汁粉を買って、お湯で解いて飲んだの。そしたら日の丸の旗が出てよ。旅順口なんてかいてあるの。よッぽど古い懐中汁粉なのねえ。」

 文章中の「旅順口」とは、大連市(中国)市轄区のことで、話は1904(明治37)年に旅順口総攻撃で火ぶたを切った日露戦争を題材にしている。明治期の日本では、懐中汁粉が全国的なブームになったと聞いたことがある。この記事は、そのような時勢を背景にしたものなのだろう。


右側は、銀閣寺付近の日栄軒本舗(左京区)のもの。左側は京華堂利保(左京区)の懐中しるこ『竹の露』で、松茸と筍の形をしている。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 私はこの原稿を東芝のパソコンdynabookで書いている。重厚長大型企業の東芝だが、PCや液晶テレビも優れた製品を出している。その東芝が倒産の危機にある。

 東芝の歴史は古く、創業は「1875年(明治8)田中久重(ひさしげ)が設立した田中製造所にさかのぼる」(「ニッポニカ」より)。東芝の名を高めたのは、財界総理といわれた第4代石坂泰三であるが、メザシを好み質素を旨とした土光敏夫(どこう・としお)第6代社長も国民的人気が高かった。

 半導体分野でもリーディングカンパニーであり、重電機、軍事機器、鉄道車両分野でも、日立、パナソニック、三菱電機とともに重電4社といわれている。

 その東芝が昨年12月末時点で2256億円の債務超過に陥った。その後も、東芝が06年に買収したアメリカの原発会社ウェスチングハウス(以下WH)の幹部が損失を少なく見積もるように圧力をかけていたという問題が発覚して、米監査法人と対立し、4月11日に綱川智(つなかわ・さとし)社長が会見し、監査法人が「意見不表明」という異常な形での決算発表に踏み切った。

 最終赤字は1兆円を超えるといわれているが、その損失の最大要因は、約6600億円を投じて先のWHを買収したことに端を発している。

 WHは原発推進を掲げる政府と経済産業省の「国策」に乗る形で東芝が買収したが、11年の福島第一原発事故で、原発事業に大きなブレーキがかかった。

 その時点でWHを手放していれば傷はここまで深くはならなかったはずである。だが、佐々木則夫社長は、福島第一原発事故以前、経産省が原発を自動車や電機に代わる輸出産業にしようと目論み、日本から原子炉を持っていくだけでなく、現地で原発を動かして必要な燃料もパッケージで輸出するという構想に固執し、「原発を欲しがっている国はいっぱいある」と強気の姿勢を崩さなかった。

 この重大な経営判断ミスが、東芝の赤字を膨らませ、倒産の危機に追い込んだのである。

 だが、WH買収に関わってきた東芝の田窪昭寛(たくぼ・あきひろ)と原発推進で手を組んできた安倍晋三首相、その秘書官・今井尚哉(いまい・たかや)にも、東芝崩壊の責任があるはずだと、『週刊文春』(4/13号、以下『文春』)で、ジャーナリストの大西康之が追及している。

 これは、今の大新聞やテレビが報じていない、東芝問題の核心を抉(えぐ)るレポートである。

 大西がある東芝社員のビジネスダイアリーを入手したことがきっかけだった。これは東芝電力システム社の首席主監だった田窪昭寛のもので、彼は78年に茨城大工学部を卒業後東芝に入社、主に原子力畑を歩み、06年のWH買収では現場を取り仕切った。

 09年には電力システム社首席主監に就任して、今年3月までWHの傘下企業である原子燃料工業の社長を務めていた。

 田窪は各国の政府高官などに東芝の原発を売り込むのが仕事で、佐々木社長から大きな権限を与えられていたという。

 彼は、こうと決めたら周囲が何と言おうと突き進むため「暴走機関車」と言われていたそうだ。

 田窪が「東芝製原発の海外輸出」へ突っ走るために接近したのが、今井だった。今井は82年に東大法学部を卒業後、旧通産省に入省している。今井の叔父は旧新日鉄社長、会長を務め経団連会長になった今井敬である。

 今井は安倍首相の覚えめでたく、第一次安倍政権で首相秘書官を務め、12年に第二次安倍政権ができると、安倍に懇願されて再び首相秘書官に就任している。

 今井は経産官僚時代、長年手掛けてきたのがエネルギー政策で、民主党政権時代にも資源エネルギー庁次長として原発再稼働に奔走していた。

 だが、今井が秘書官に返り咲いたのは3・11が起きた後である。常識的には、あれだけの大事故を起こした日本の原発を輸出しようなどという「妄想」は出てこないはずだが、原発輸出に活路を見出したい田窪と、トルコやアラブ首長国連邦に原発や関連技術の輸出を可能にする政府間協定の締結を推進していた今井が、無謀な事業に突き進んでいったのである。これには当然ながら安倍の後押しもあった。

 「アベノミクスの第三の矢『成長戦略』のうち、数少ない具体策と言えるのが原発輸出戦略です。首相も今井氏の進言に乗っかりました」(官邸関係者)

 先ほどの田窪の手帳には頻繁に今井の名前が出てくる。ディナーを一緒にしたり、帝国ホテルのフランス料理店で朝食をとりながら、田窪は今井の協力と安倍首相のGOサインも得たのである。

 「田窪氏の口癖は『国策だから』。周囲が『本当に大丈夫か』と不安視する案件でも、佐々木社長の後ろ盾があり、今井氏とも繋がっている彼に『国策だ』と言われると、誰も言い返せません。財務部門もストップをかけられなかった」(東芝関係者)

 そのころ、アメリカではシェールガス革命の結果、電気料金が急激に下がり、東芝がテキサス州で計画中の原発も、発電しても売り先がない状況に陥っていたのである。

 それでも佐々木社長は取締役会で、この原発を減損する必要はないと主張し続けていたという。

 東芝幹部たちの先を見ない愚鈍経営に、安倍首相とその側近が手を貸して、東芝崩壊へと導いたのである。

 WHを買収した当時の西田厚聰(にしだ・あつとし)社長は『文春』のインタビューにこう答えている。

 「残念ながら福島でああいうことが起き、環境が激変した。それに合わせて手を打つのが経営だが、佐々木君にはそれができなかった」
 国の顔色を窺ったのかという問いには、

 「それが間違いでした。僕の時代はそんなことはなかったが、佐々木君が社長になってからは、そういう部分もあったのだろうね」

 東芝は福島第一原発の廃炉という役割もあり、社員が17~18万人もいる日本を代表する大企業である。巨額赤字や粉飾決算にもかかわらず、潰せないため、公的資金(血税)の注入も検討されているといわれる。

 東芝の歴代トップたちの責任はもちろんのこと、安倍首相と今井秘書官にも、国民に「原発輸出事業は失敗だった」と説明する義務があること、言うまでもない。

 トップがアホだからと、東芝社員の多くは嘆いていることだろう。『週刊新潮』(4/13号)は「『東芝』30代社員のトホホな『転職活動日記』」を掲載している。

 「綱川社長が3月29日に記者会見を開きWHの破産法申請と同時に、その処理で赤字が最大一兆100億円になると発表。2年前だったらビックリしたかもしれないが、これまで数々の問題が起きて数千億円単位の損失などが明らかになったからだろう。危急存亡のときに立たされても、もはや驚愕しなくなった自分の感覚は、完全に麻痺している」

 筆者は有名国立大学を出て、当時勝ち組中の勝ち組で旧財閥色も薄い自由な社風だと感じた東芝に入った。

 支社勤務を経て本社の企画部門に「栄転」した中堅社員で、独身。年収は700万円台だったが、ボーナスカットにより2年間で100万円近く減っているという。

 日記では、次々に去っていく同僚がいるが、転職ができるのは引く手あまたの技術職で、彼のような企画畑では転職先もなかなか見つからないと悩みを綴っている。

 1月には東芝京浜事業所品質保証部の社員が、水力発電機器の安全検査データをねつ造していたことが報道された。2月にはWHの幹部が、米国で建設中の原発を巡り、部下に建設費の圧縮を指示していたことが発覚し、原子力事業を統括する会長と、社内エネルギー部門のトップが退任した。

 そのエネルギー部門のトップであるダニエル社長が部下に出したメールが、同僚から彼のところへ転送されてきた。それを読んだ彼はブチ切れる。

 「“短い間でしたが、みなさんと一緒に仕事ができて幸せでした”と。ふざけるな。お前と志賀会長が“チャレンジ”と称して、部下に圧力をかけたんだろ。同僚の話では、ダニーの給与は億単位だとか。この泥棒猫!」

 東芝が倒産すれば、当然ながら株主代表訴訟が起こるはずだ。本社、子会社を含めて、トップたちには賠償責任が生じるのではないか。そうしなければ、東芝社員たちが可哀そう過ぎると思う。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 私は横山やすしが亡くなってから漫才は見も聞きもしなくなったが、あれほどの天才でなくとも、喋りがそこそこできる芸人なら見てみたいと思う。だが、テレビに出てくる連中は、いたずらに大声を出し、裸になったり、バカ騒ぎをするだけで、芸無しである。最大の元凶はテレビ局だ。ギャラが安い、一歩間違えば大ケガをしかねない企画でも断らないから、芸NO人がテレビに溢れてしまう。どうだろう、お笑い芸人はテレビには出さず、ラジオだけに出すというのは。そこでリスナーから認められた芸人だけをテレビに出すのだ。そうすれば、話芸だけで勝負せざるを得ない。そうしないと、日本のお笑い芸はそっぽを向かれ、廃れると思う。

第1位 「香取慎吾20年恋人と“謎の少年”」(『週刊文春』4/13号)
第2位 「正直言って、つまんない『笑えない』お笑い芸人ワースト実名30人」(『週刊現代』4/22号)/「ブルゾンちえみに“パクリ疑惑” を聞いてみた」(『週刊文春』4/13号)
第3位 「『余罪』が発覚『核兵器解体』詐欺師との『ただならぬ関係』!」(『アサヒ芸能』4/13号)/「安倍昭恵首相夫人と『元暴力団組長との親密写真』」(『フライデー』4/21号)

 第3位。森友学園問題で渦中の人になった安倍首相夫人・昭恵だが、『アサヒ芸能』(以下『アサ芸』)と『フライデー』に詐欺師と元暴力団組長とも“交流”があったと報じられている。
 『アサ芸』が名指しするのは40代の米国人平和活動家、マット・テイラー。08年に車の中で練炭自殺した元TBSアナウンサーの川田亜子(享年29)の最後の恋人として、メディアに取り上げられたことがある。
 山口県出身者で占められている後援会「長州友の会」は、昭恵が運営委員を務め安倍首相も何度も講演に訪れている。そこに映画監督としての顔も持つマットが入り込み、広島の原爆を題材にしたドキュメンタリー映画を製作すると吹聴し、昭恵はそれに共鳴して、「事あるごとに上映会を開いては、彼の活動のための募金箱を設置して、参加者から集金していました」(地元有力者)
 中には信用して一度に10万円も募金した人もいるという。カネは彼が代表を務めるNPO団体「GNDF(世界核兵器解体基金)」の活動費になったそうだが、今に至るまで核のひとつも解体していないどころか、こうした高尚な名目を立て、カネを集めるのがマット流だそうで、98年には「タイタニック引き上げ品展」をやったが、イベント運営費を払わず、「収益をネコババした過去もあります」(NPO関係者)
 大手芸能事務所幹部は、マットが核兵器を解体する瞬間を映像に撮らせるからという条件で1000万円出資したのだが、出資金詐欺だと知り返還を求めたところ、逆に活動妨害で訴えられたそうだ。反訴してマットの詐欺行為が認定され、返金命令が出たという。
 それ以外にも、マットが付き合っていたミス・インターナショナル・吉松育美が、件の幹部をストーカーだと訴えたとき、昭恵は支援者として名乗りを上げ、彼はストーカーだと断定した騒動があった。
 だが吉松が、昨年2月にその発言を撤回してしまったのだ。後に昭恵は、その幹部に平謝りしたそうだが、「総理夫人という立場をあらためて自覚し、周囲の人間を疑うことを覚えなければ」(地元有力者)
 『フライデー』によれば、最近「アキエリークス」というサイトが開設されたという。そこに、動物愛護団体「J-Taz’s」の代表と彼女が写っている写真が掲載されている。 その代表は元暴力団組長だった人間で、そこが昭恵の名前を使って寄付金集めをしているという情報が流れているそうである。
 『フライデー』の取材に代表は、昭恵の友人が渋谷で犬を保護したことがきっかけで連絡を取り合うようになったと話している。自分が元暴力団の組長で、指がなく入れ墨があるのも事実だが、昭恵の名前でカネ集めをしたことはないと否定した。
 飲み会のとき、酔った昭恵から「代表、入れ墨見せて!」とよくせがまれたが、「こんなもん人に見せるもんやない」と断ったという。天真爛漫なのかバカなのか。「大麻容認発言」など、一歩間違えれば大スキャンダルになりかねない妻の行動や発言に、夫は気が気ではないだろう。

 第2位。キャリアウーマン風のいで立ちで「花は~自分からミツバチを探しに行きますか? ……探さない。待つの」と上から目線の恋愛指南をするネタでおなじみのお笑い芸人に、ブルゾンちえみ(26)というのがいるそうな。
 『文春』は、先の言葉が、某占星術師の本からのパクりではないかと、ネットで話題になっていると報じているが、そんなことはどうでもいい。
 どうせ今の芸人にオリジナリティなどあるわけがない。私はお笑いを見なくなって久しいが、ときどき、チャンネルを間違えて芸人が出ていることがあるが、まったく笑えない。笑えないお笑い芸人など、何とかのないコーヒーより始末が悪い。
 そんな芸無し芸人をもてはやすテレビ局やファンがいるから、さらに彼らを増長させるのだ。
 先日も、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建(44)と俳優の佐々木希(29)が結婚することをテレビ番組で公表したとスポーツ紙が報じていた。
 何が悲しくてこんな年上のオジンと、可愛い盛りの女が結婚しなくてはいけないのだ。
 忠告しておく。才能のある芸人は家では面白くもなんともない。外面は仮面だ。女だって通りを歩いている犬だって笑わせることができるが、家ではうんともすんとも言わないのが当たり前なのだ。
 渥美清を見なさい。彼は仲間に自分の住所さえ教えなかった。ビートたけしを見なさい。家にあんな顔の男がいたら、子どもはひきつけを起こす。
 昔、私が付き合った萩本欽一だって、舞台を降りれば、タダの無口な人間だ。外でも家でも、ヘラヘラしている奴にろくな芸人はいないのだ。
 『現代』が、笑えないお笑い芸人ワースト30をやっているが、これは企画間違いだと思う。笑える芸人のほうが圧倒的に少ないのだから、ベスト3を選んだほうが読者の役に立つ。
 このワースト1にもブルゾンちえみが選ばれている。ただの素人の宴会芸だと評されているが、そんなのばかりだろう。
 2位にはオリエンタルラジオの中田。3位が昨年200本以上のテレビに出たという永野。続いて品川庄司、芥川賞のオマケといわれるピース綾部が5位。
 30位まで挙げても何の足しにもならないからここでやめておく。
 芸無し芸人がテレビを席巻しているのは、安く使えて便利だからで、テレビのディレクターにも芸のわかる人間などいないからだ。
 元吉本興業の木村政雄が言うように、今は籠池(かごいけ)のような濃いキャラクターのほうがはるかに面白い。心から笑いたかったら、バラエティ番組を消して報道番組を見るべきである。

 第1位。今回の「文春砲」は、元SMAP香取慎吾(40)の“家族”についてである。
 3月5日、後楽園遊園地・東京ドームシティアトラクションズに香取の姿があった。一緒にいるのは中学生ぐらいの少年。
 モノクログラビアに後楽園のゴンドラに2人して乗り、香取が自分と少年を自撮りする写真が載っている。
 どこにでもいる父と子どもという風情だ。だがなぜ『文春』は香取の子どもと書かずに「謎の少年」としたのか。
 香取が2歳年上の彼女との「熱愛」を『フライデー』で報じられたのは97年早々。その年の6月には、彼女との「婚前旅行」も同誌で報じられている。
 当時、彼女は会社勤めをしながら歌や踊りのレッスンをしていた「アイドルの卵」だったという。『フライデー』が報じる2年ほど前から交際していて、香取はテレビ局に、彼女の家から出かけることもあった。
 香取は祖母の葬儀にも彼女を同伴し、香取の両親が経営していた雑貨店でも働いていたそうである。事実婚のような状態だったのだろう。
 だが、05年に、2人は鶴見区の一軒家から六本木のマンションに引っ越してしまう。そのころこんな噂がファンの間で流れたという。
 「慎吾に子どもができた」
 そして熱愛報道はぴたりと止み、それから10年以上ツーショットが撮られたことはない。 だが、昨年3月末に、ハワイで香取が少年と一緒に歩いている写真がツイッターに上げられた。
 彼女とは事実婚ではなく、結婚しているのではないか。少年は2人の子どもで、SMAPが解散して時間のできた香取が、子どもと一緒に後楽園へ遊びに行き、ファンに気づかれても気軽に握手していたそうだ。
 だが、ジャーニーズ事務所に、この件を問い合わせても「結婚の事実はない」と答え、香取本人を直撃しても無言。
 香取を可愛がっていた元マネージャーの飯島三智氏に聞いても、彼女のことは知らない、子どもはいないでしょと否定した。
 香取が彼女と暮らし始めた頃、アイドルが同棲や結婚するなど、事務所ではご法度だった。木村拓哉が工藤静香とできちゃった婚を発表したのが2000年11月。だが、香取には好きな彼女がいることも、結婚したいと公言することも許されなかった。
 SMAPの解散を強く主張したのは香取だった。結婚を公表したキムタクへの「思い」もあっただろうが、自分たちの仲を公にできない事務所への長年の不信もあったのではないか。
 『文春』は「二十年以上に及ぶ“悲恋の物語”に終止符を打つことができるか」と結んでいる。
 今、香取は新規の仕事のオファーを受けていないという。彼は絵が得意で、芸能界を引退してアーティストとして生きていくという見方もあるようだ。
 一方、香取は4月8日放送のテレビ朝日系列『SmaSTATION!!』で、「隠し子じゃないんです。友達の子どもなんです。困っています」と隠し子報道をキッパリと否定。今週発売の『文春』(4/20号)で続報はなかった
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 若者に圧倒的な支持を受けているテレビ朝日系(AbemaTVでも配信)の『フリースタイルダンジョン』。「即興によるラップバトル」というスタイルの知名度を、一気に高めた番組である。その場で絶妙に韻を踏みつつリリック(歌詞)を紡ぐ、門外漢からすれば「高等技術」を、ニッポン人がやっている。エミネム主演の映画『8 Mile(エイトマイル)』の世界が、我が国でも根付いていたのか、という新鮮な驚きが、一般視聴者にはあったはずである。

 だが、そもそも地上波放送でのフリースタイルは、非常にリスクが高いといえよう。相手を「ディスる」(編集部注:disrespectに由来したスラング。言葉遊びを交えながら相手をけなす行為をさす)ことが認められているラップでは、放送禁止用語が乱れ飛ぶ。倫理のストッパーをはずすことはアリなのだ。それをテレビだからといってあらかじめ制限するのは、いかにも不粋。これに対処すべく番組が発明したのが、「コンプラ」である。

 コンプラとは「コンプライアンス」の略で、企業が社会的責任として法や倫理を遵守することを意味する。本来は正しいことなのだが、テレビ界においては、コンプライアンスにがんじがらめの現況が問題視されることも多い。おもしろいと思っても過激なことができない、窮屈だという現場の悩みだ。

 『フリースタイルダンジョン』でのコンプラは、リリックの字幕が流れる際に、「まずい」言葉を隠すために使われる。そのためには、通常テレビで使われるように単に「××」などのマークでもいい。だが、あえてコンプラと示すことで、批評精神、あるいは反抗心のようなものが表現されるわけだ。ちなみに正しい英語の略語としてコンプラと表現することはないらしく、「変な略にしている」のも、おそらくコンプライアンスのディスりにつながっているのだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 体外受精による「着床前スクリーニング」の臨床研究が始まった。2月14日に日本産科婦人科学会が発表したもので、体外受精でつくられた受精卵の染色体を調べ、変異がないものだけを子宮に移植するという。

 スクリーニングすることで、流産を予防し、妊娠率や出産率を引き上げるのが研究の目的だが、染色体に変異のある受精卵を作為的に排除することは命を選別することになる。そのため、今回の臨床研究には大きな懸念の声も上がっている。

 体外受精は、ヒトの卵子と精子を体の外で受精させて子宮に移植する不妊治療のひとつ。しかし、体外受精した卵子を子宮に入れても必ず妊娠するわけではなく、妊娠しても流産を繰り返すケースもある。原因のひとつとして考えられているのが染色体の変異だ。

 染色体は、人を形づくる遺伝子の情報を伝達するもので、通常は2本1組のものが23組ある。ただし、卵子や精子が分裂したり、受精卵が成長したりする過程で何らかの異常が起こると、1組の染色体が1本になったり、3本になったりすることがある。

 今回、新たに行なわれる臨床研究では、体外受精した受精卵を培養皿で育てる過程で染色体の数を調べ、1組2本の染色体をもつ受精卵だけを選んで子宮に移植する。

 対象は、女性が35~42歳のカップルで、「過去に3回以上体外受精しても妊娠しなかった」「原因不明の流産を2回以上経験した」という人のなかから、まず50組を予備的な研究対象とする。受精卵のスクリーニングをしないで、選別なしに子宮に移植した場合と妊娠や出産、流産の割合を比較し、その結果を踏まえて本格的な研究を始めるという。

 すでに欧米では着床前スクリーニングは実施されるようになっており、不妊や流産の確率を減らせるという研究結果もある。不妊や流産に悩んでいるカップルには朗報だが、倫理面では大きな問題をはらんでいる。

 着床前スクリーニングは、超音波診断(エコー)や羊水検査などの出生前診断と異なり、子宮に移植する前の受精卵の段階で染色体数が1組2本以外のものを排除する。

 だが、染色体が1組2本以外の受精卵が、すべて着床しないわけではない。たとえば、21番染色体が3本あるとダウン症候群となるが、そのすべてが流産しているわけではなく、元気に生まれて天寿を全うしている人もいる。

 また、性別を決定する性染色体のうちX染色体が2本以上ある男性はクラインフェルター症候群となるが、流産しないで成長しているケースもある。クラインフェルター症候群は無精子症になることが多いが、大人になって結婚した場合、体外受精で子どもを授かることも可能で、その子どもにクラインフェルター症候群が遺伝する確率は低いといわれている。

 染色体の数や構造に違いのある受精卵が流産する確率が高いのは事実だが、多様な染色体をもって生まれて、その人らしい生を全うしている人がいるのだ。

 着床前スクリーニングで「異常」と決めつけ、1組2本以外の染色体をもつものを受精卵の段階ですべて排除することは、多様な染色体の形をもつ人が生まれる機会を奪うことになる。それは、障害の有無などによって人に優劣をつけようとする優生思想につながりかねず、多様な人々を包摂する社会を否定することにもなる。

 日本産科婦人科学会は、研究の有用性とは別に倫理面の検討も行なうとしている。だが、一度始まってしまうと、検査の範囲は染色体の変異だけではなく、さまざまな病気や障害に関係する遺伝情報にまで広がる可能性もある。そうなれば、生まれることを拒否される命はさらに増えることにもなりかねない。

 命の誕生という神の領域を、人間が作為的に手を加えた世界には何が待っているのか。どうしようもない不安を覚えるのは、筆者だけではないだろう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 そのネーミングからは想像しにくいほど、華やかな存在である。「モグラ女子」とは、女性誌などのファッションモデルと、男性誌のグラビアを両方こなすタレントのことだ。モデル+グラビアで「モグラ」というわけである。もとより、人気モデルがセクシーなグラビアに登場する企画は珍しいわけではないが、活動の比重に偏りがないことが特長。結果、女性からも男性からも一定数の支持を受けている。

 『CanCam』(小学館)の専属モデルである久松郁実(ひさまつ・いくみ)、『JJ』(光文社)の大川藍(おおかわ・あい)など、枚挙にいとまがない。モグラ女子は「撮られる」という仕事、たとえば表情のつくり方などに秀でているといえそうだ。『non-no』(集英社)の馬場ふみか、『MORE』(集英社)の内田理央(うちだ・りお)など、なぜか「仮面ライダー出身女優」も目立つ。彼女たちの場合、そのドラマや映画での好演も語られる機会が多く、今後ますますメディアへの露出が増えていくことだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 中国という一つの国の中に、社会主義と資本主義が並存する制度のことをいう。

 英国(1997年返還)、ポルトガル(1999年返還)からそれぞれ中国に返還された香港、マカオに適用されている。外交と防衛を除く行政分野に「高度な自治」が保障され、当地には返還前の資本主義制度を維持させた。提唱者は鄧小平(とうしょうへい)である。

 香港の場合、特別行政区として独自に行政、立法、司法権が認められており、公用語も中国語と英語である。一国二制度は返還後50年間維持するとされた。

 ところがである。香港でこの一国二制度が形骸化しそうな気配が出てきたのだ。2017年3月、香港行政長官を決める選挙が行なわれ、親中国派の林鄭月娥(りんてい・げつが)氏が当選した。問題なのは、その際、習近平政権が介入したからだ。選挙を前に、政権の要人が「林鄭月娥氏は、党中央が支持する唯一の候補者だ」と発言したのだ。香港の行政長官選挙は、選挙と言っても選挙委員(1194人)による間接投票だ。「一人一票」の普通選挙ではない。しかも委員の大半は親中派で占められており、要人の発言は「林鄭月娥に投票せよ」と大号令したようなものだった。世論調査では当選した林鄭月娥氏は、ライバル候補に30ポイント近く水をあけられていた。民意は林鄭月娥氏に「ノー」だったのだ。

 台湾を自国の一部と主張している中国は、台湾に対しても「一国二制度」を求めている。香港における一国二制度の形骸化の動きは、台湾としても到底、看過できないだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「隅っこが大好きな、ものかげにひっそりと隠れながら暮らす妖精」をイメージした小さなフィギュア人形のこと。その可愛らしいが、どことなく哀愁ただようシンプルな表情とポーズ、さらには周囲が暗くなると発光するため、第一弾発売以来「SNS映えする」という理由で、ネット上を中心に話題となっているらしい。

 500円台から……と価格的にお手軽で、球体の顔に棒状の胴・手足……と両性具有的(?)なデザイン、そして「部屋内に自然と生じる中途半端な空間(半分しか書籍が入っていない本棚とか?)を埋めるのにもってこい」な点が功を奏したのか、女性だけではなく流行感度の高い男性のあいだでも、なかなかの人気を博していると聞く(自宅に彼女を連れ込んだときのキラーコンテンツ、との噂もある)。

 この4月に第四弾が発売。ヒザカカエスキー、フリムキスキー、ゴロネスキーなどポーズを表したネーミングも可愛く、部屋の隅だけでなく、本棚の上、壁際などそれぞれのポーズに合った隅を見つけて飾る。シリーズは「6種類+1シークレット」のうちどれか1つが入っていて、箱を開けるまで何が出るかはわからないというのも人気の秘密らしい。

 だが、一番のポイントは、やはり“発光”なのではなかろうか? 筆者は昔、『王様のア○デア』あたりで売っていた赤やら青やら緑やらに変光する、水だか油だかのなかにできる気泡が揺れる細長く塔状のライトが欲しくて欲しくてたまらなかった時期がある……という恥ずかしい過去を告白するが(今でもちょっとだけ欲しかったりもする)、人間なんだかんだ言って「暗闇で怪しげな光を放つグッズ」には、蛾のごとく本能レベルで惹かれてしまうのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>