亀廣永(かめひろなが、中京区)の棹菓子。「したたり」は、祇園祭の山鉾の一つである菊水鉾(きくすいぼこ)に献上するためにつくられた和菓子である。

 菊水鉾は、珍しい唐破風(からはふ)屋根で知られる山鉾で、かつて京都一と讃えられていた名水「菊水の井戸」とゆかりが深い。菊水鉾保存会がある菊水鉾町(中京区室町通四条上ル)には、2001(平成13)年まで金剛能楽堂があり、その堂内には本物の「菊水の井戸」があったそうだ。そのようないきさつのため、菊水鉾は能楽の演目として名高い謡曲「菊慈童」を材料に作られた。「菊慈童」とは中国の故事で、「山中で甘菊の葉から『したたる』露を飲み、700年もの長寿を保った」という仙童の説話である。そして、こうした「菊水の井戸」や「菊慈童」にあやかり、山鉾町での振る舞い菓子として作られたのが「したたり」というわけである。

 創製は1970年ごろのこと。当初は祇園祭の時だけに作られるものだったという。その後、手土産などとしての要望に応えるため、通年作られるようになったという。

 澄んだ琥珀色の「したたり」は、腰の強い寒天、沖縄の黒砂糖、阿波の和三盆糖などを用いた上品な寒天菓子である。生地には腰があるのに、口に含んだ途端、ほろほろと崩れていく。この黒糖の味わいを残しながら、水のように口に溶けていく食感は独特である。上品な味わいでありながら、疲れを癒やすような黒蜜特有の力強さがあり、これもまた魅力になっている。

 豆かんや黒蜜寒天のように、簡素でありながら、個性の強い和菓子が好きな人には、ぜひ一度味わってもらいたい菓子である。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊新潮』(7/21号)は今回の参院選を「我ら凡俗の審判」とタイトルを銘打っている。冒頭のグラビアで、安倍首相は「経済の再生を旗印にしていたのに、株価は低迷、為替は円高、アベノミクスもどこへやら、とても選挙を戦える状況になかった」はずが、蓋を開ければ改憲勢力で3分の2を占める圧勝劇だった、と報じている。

 私を含め多くの有権者たちはこの結果に当惑し、どこの誰がこんな審判を下したのかと天を仰ぐばかりなのである。

 「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本が個人的に推していたミュージシャンの三宅洋平(東京選挙区・落選)に対して、熱烈なファンだという首相夫人・安倍昭恵がfacebookを通じて「三宅洋平さん、公邸でお待ちしています!」とメッセージを出した。

 さらに昭恵は選挙戦の中盤に新宿駅前を訪れ、「アベ政治を許さない」の紙を持った男たちと3ショット写真を撮り、自分のInstagramにアップして話題をさらった。

 夫婦揃って野党を舐めきっていたのである。

 そのうえ安倍は、参院選を盛り上げないようメディアへ圧力をかけ続け、「憲法改正」という四文字を封印して選挙戦を戦った

 党首討論を逃げ続け、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株の運用で5兆円もの赤字を出したことを選挙中には発表させなかった。

 メディアへ圧力をかけ続ける一方で、潤沢な資金を使って安倍自民党のCMを大量に流す「あめ玉」作戦にも抜かりがなかった

 たしか7月8日のNHK『ニュースウオッチ9』だったと思う。冒頭、東京都知事選挙関連で始まり、次は九州を襲った豪雨のニュース。

 都知事選はいくら関心が高いといってもローカルな話題である。選挙戦最後の金曜日だから、参院選関連のニュースに多くの時間を割くべきだが、NHKの上のほうから参院選にはなるべく触れるなという指示があったのではないか。

 投票当日の朝刊に載った安倍自民党広告を見て違和感を感じた向きも多いだろう。私が見たのは朝日新聞だが、読売、毎日にも掲載されていた。

 YAHOO!ニュース(7月10日)で渡辺輝人弁護士がこう書いている。

 「自民党の新聞広告は公職選挙法違反(法129条。選挙当日の選挙運動の禁止)に該当する可能性が高いはずです。(中略)
 自民党の今日の広告が許されるのなら、投票所の前で、各政党が、例えば消費税増税に反対する署名を集めたり、残業代ゼロ法案に反対するアピールを行うことも特に問題ないことになるはずです。(中略)
 自民党が、『選挙の公正』も『金権選挙の防止』も目もくれず、自分だけはその規制をないもののようにする行為をやったのは卑怯・卑劣というほかないでしょう」

 毎日や読売は、これまでも投票日当日の広告を掲載している、今回の自民党の広告も通常の政治活動の一環と考えているから何の問題もないという見解のようだ。だが、私は納得できない。

 投票前には安倍の経済政策を見直すべきだという世論が55%だと朝日新聞は報じていた。原発再稼働や安保法制に批判的な声は多数だったに違いない。憲法改正についても9条を変えるなら反対という世論が過半数を大きく超えていたはずである。

 だが、こうした真っ当な声は、メディアの沈黙と安倍自民党の宣伝の巧みさ、安倍の改憲隠しが功を奏して、大きなうねりにはならなかった

 憲法改正か否かという戦後最大のターニングポイントになる選挙戦であったはずが、終わってみれば投票率は54.70%、戦後4番目の低さだった。

 朝日新聞は7月11日の社説にこう書いた。「『安倍一強』に対抗できる、あるいは歯止めとなりうる力が統治機構の中に見あたらない」と。おきゃあがれ! 野党がだらしなければメディアが安倍政権をチェックしてやるぐらいの気概がなくてどうする。

 改憲イエスかノーかが最大の争点であったはずが、大メディアは選挙後の安倍の報復に恐れをなし、争点ぼかしに力を貸してしまった。結果、有権者の多くは何が争点かわからず投票してしまったのである。メディアの責任は「犯罪的」といってもいいかもしれない。

 安倍は選挙直後「次の国会から憲法審査会を動かす」と明言した。これまでは絵空事だった改憲に手が届くところまで来たのである。

 「おじいちゃん(岸信介)、ボクやったよ」と仏壇に手を合わせたかもしれない。

 だが、今回の参院選大勝は安倍政権の終わりの始まりだと、私は思う。『週刊ポスト』(7/22・29号)でジャーナリストの山口敬之(のりゆき)はこう書いている。

 山口は、第二次安倍政権が、特定秘密保護法、原発再稼働、安全保障法制といった難しい課題を次々と突破できた原動力は、安倍が「サイレント・マジョリティ」と呼ぶ「非リベラル層」によるところが大きいが、一口に「改憲勢力」と言ってもその内容から方法論に至るまで千差万別、百家争鳴であるとしている。

 「2/3という遠かったはずの目標が目の前まで来た安倍にとって、憲法改正はもはや、リベラル護憲派との戦いではなくなりつつある。いわゆる『改憲勢力』内部の不統一にこそ、最も深刻なリスクが内在している。さらに、衆参両院で憲法改正の発議を勝ち得た先には、国民投票という最後の難関が控えている。
 安倍は消費税先送りと衆議院解散の是非を巡って麻生と対峙した5月30日、こう漏らしたという。
 『憲法改正はもちろん悲願だが、どう実現できるか、心が揺れないと言ったら嘘になる』 
 もし安倍が憲法改正に向けて逡巡したり、決断を先送りしたりすれば、今度は『非リベラル層』の中の『保守層』が黙っていない。安倍を強く支持してきたコア層の失望は、政権の求心力を大きく毀損するだろう」(山口)

 保守といっても様々である。今話題の「日本会議」は「西洋の植民地主義から東アジアを解放した日本を称え、再軍備をし、生徒たちに愛国心を植え付け、天皇を敬えと訴えている」(英国『エコノミスト』2015年6月6日号)というウルトラ保守派である。

 さらに憲法改正発議にまで何とか漕ぎ着けたとしても、国民投票になれば国論を二分することになる。そうなれば英国のEU離脱のように、投票後にさまざまな遺恨が残り、憲法改正どころか自分が総理の座から降りざるを得なくなるはずである。

 もちろん『新潮』が言っているように、「お試し改憲」という姑息な手を安倍が使ってくることも考えられる。

 「国民的合意の得られていない9条改正はとても無理でしょうから、環境権や緊急事態条項を加えるといった、多くの人が反対しないであろう『つまみ食い改憲』から手をつけることになると思います」(政治アナリストの伊藤惇夫氏)

 公明党は改憲には及び腰だが、加憲には賛成するといわれているから、乗ってくる可能性はある。

 『新潮』によれば、最短の場合は来年秋の臨時国会で憲法改正の発議をして、その年末に国民投票を行ない衆院を解散して信を問うという「奇策」に打って出るかもしれないと見る。

 しかし安倍の悲願である9条改正には至らず、後継を指名して引退後に夢を果たすというシナリオがあるというのである。

 だが、田中角栄のような大派閥を率いているわけではない安倍が、引退後に院政を敷けるわけはない。中途半端な憲法改正は、先ほど触れた思惑がバラバラの保守層からも強い批判を浴びることであろう。

 どちらにしても、勝つ理由のほとんどない選挙で大勝してしまった安倍首相は、憲法改正というルビコン川を渡りきらないうちに沈没することになると、私はゆったりした気持ちでこれからの政局を眺めたいと思っている。(文中一部敬称略)

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 参議院選挙の結果のように「嫌な話」が多いので、人気グループのお目出度い話を中心に選んでみた。「水曜日のカンパネラ」のコムアイという女性の同棲話が『フライデー』にある。カラッとしてどこか飛んでいる女性で、インタビューにきた記者を誘って彼氏と食事に行っちゃうところがすごくいい。YouTubeで900万回再生されたという『桃太郎』は、彼女のキャラもあって乗りのいいラップ。プレスリーやビル・エバンスばかりでなく、たまにはこういう曲を聴かなくちゃね。

第1位 「二宮和也を離さない!野心の35才美人女子アナと真剣愛」(『女性セブン』7/21号)
第2位 「人気AV女優〈香西咲〉実名告発『脅迫・洗脳・囲い込み地獄』」(『週刊文春』7/14号)
第3位 「『水曜日のカンパネラ』コムアイ『秘密の同棲生活』直撃!」(『フライデー』7/22号)

 第3位。水曜日のカンパネラのコムアイ(23)が同棲生活を送っているという『フライデー』の記事。なんのこっちゃと思われる方が多いと思う。私もそうだった。
 『フライデー』によれば、12年から活動を開始し今注目を浴びている音楽ユニットのボーカルだそうだ。ちなみにカンパネラはイタリア語で「鐘」を意味する。

 「『きびだーん♪』というラップがクセになる『桃太郎』は、YouTubeで900万回以上の再生を記録している」(『フライデー』)

 私も聴いてみた。なかなかカネがかかったミュージックビデオで、昔話をラップにしてコムアイが魅力たっぷりに歌っている。いいよ!
 慶應大学の環境情報学部を卒業した才媛だが、なかなか個性的な女性らしい。同棲相手は30代のクリエイターのようだ。
 『フライデー』が直撃すると、その答えっぷりが堂々としていて、またいい。『フライデー』に撮られるのは紅白歌合戦に出てからだと思っていた。この人の恋愛事情はどうなっているんだろうと謎にしておきたかったと言いながら、その彼氏と食事をするから一緒に来ないかと記者氏を誘うのである。
 行ったところが大衆中華屋というのも泣かせる。結婚するかどうかはわからないらしいが、このコムアイはナイスキャラで売れると思うな。

 第2位。今週の『文春』には読み応えのある特集が多いが、人気AV女優の香西咲(こうざい・さき)の実名告発が興味深い。
 このところタレントとして勧誘したと思わせてAVに出演強要させる悪徳プロダクションの実態が明るみに出て社会問題化しているが、実名・顔出しの彼女の話は微に入り細を穿ち、この業界の悪辣さを浮かび上がらせる。
 香西氏が「マークス(後にマークスインベストメントと社名変更)」の社長・青木亮氏(40)と出会ったのは2010年だという。
 青木氏は当時六本木ヒルズに拠点を構え、投資会社という触れ込みだったそうだ。

 「面会した青木は、『俺なら君を売り出すのに、まずはストーリー仕立てのイメージDVD三本セットを発売して、芸能活動のフックにする』と持論を展開しました。肌の露出は『背中が見える程度』だと」(香西氏)

 だがそれから彼女をAVに出演させるべく追い込んでいく「洗脳」が8か月も続くのである。
 週1回の面談と自分の未来設計をノートに書き込ませるなど、私が見ても念の入った洗脳の仕方である。
 一人の魅力ある女性をAVに出せば、どれほど儲かるのかが透けて見える。相談係の女性をつけたり、マネジャーも何人かいた。そうして彼氏や家族から切り離され、彼女のまわりは青木氏の関係者ばかりになってしまう。
 その上占い師まで動員して洗脳した。そうして最初のAVに出演するときには「“思考停止”状態になっていました」(同)
 約3年の間に30本余のAVに出演し、ようやく独立を果たすのだ。

 「私は、AV業界そのものを否定するつもりはありません。知っていただきたいのは、一部には悪質なプロダクションが存在すること。そして、私のように何本もAV作品を出し続けた女優たちの中にも、実は苦しみ、のたうち回っている人間がいるんです。なぜ辞めなかったんだと思われるかもしれません。ですが、抜けるに抜けられない状況に追い込まれ、搾取され続ける絶望感は、体験した者にしか分からない。青木の支配下に置かれていた頃、私にとってAV撮影は、自傷行為そのものでした」(同)

 青木氏は『文春』の取材に答えて「出演するよう脅迫したことはないですし、AVであることを隠してきたつもりはありません」と話している。
 香西氏ともう一人の女性は、青木氏を相手取って訴訟の準備に入っているという。

 第1位。このところ『女性セブン』(以下、『セブン』)がすごい。今週も大スクープだが、ワイドショーはどこもやらなかったのではないか。
 あの『嵐』の二宮和也(かずなり)とフリーアナ・伊藤綾子とが「厳戒態勢」交際中であるというのである。

 「ふたりの逢瀬は、いつもマンションの部屋の中だ。
 東京都心にそびえる超高級タワーマンション。多数の監視カメラ、オートロックはもちろん、警備員やコンシェルジュが24時間常駐で、セキュリティーは万全。住民のプライバシーは守られ、多くの芸能人が住んでいる。
 その最上階近くの一室に、嵐・二宮和也(33才)が暮らしている。
 部屋の広さはゆうに100㎡を超える。彼にとってリラックスできる空間は何事にも代えがたい。二宮は、オフの時間があってもほとんど外出はしない“引きこもり”。家にこもってテレビゲームをしたり、マンガを読んだり、ギターで曲を作ったり。過去にテレビ番組で、『外食は年に2回だけ』と明かしたこともあった。
 そんな生活を送る二宮のそばに、最近、1人の女性の姿がある。彼女は、夕方のニュース番組『news every.』(日本テレビ系)で、『カルチャー&スポーツ』などを担当する伊藤綾子アナ(35才)だ」(『セブン』)

 6月のある週末、二宮が朝早く東京ドームに向かった日の夕方、「マンションの裏口から出てきたのは、ブルーのTシャツ、ジーパン、白スニーカーというラフな格好の伊藤アナだった。小さな斜めかけバッグを肩からかけている。ときおり左右を見渡したり、後ろを振り返ったりと周囲を気にしながら、近所にある高級スーパーへ。店内では手慣れた様子で食材を選ぶと、マンションに帰っていった」(同)という。
 仕事帰りに二宮のマンションへ向かって、近所で買い物を済ませると部屋に戻る。そんな伊藤アナの姿が連日、目撃されているという。
 二人の出会いは2012年8月。その年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)の総合司会を務める二宮が、番組の宣伝のために『news every.』に出演したときだそうだ。
 二人はお互いのマンションを行き来し、外では絶対会わないという。
 彼女はすでに自分の家族に二宮を紹介したと関係者が話している。周囲にも結婚式の司会は誰にしようかなと言っているというから二人は本気のようだが、「ジャニーズ事務所」が許すか、そこが大きなハードルかもしれない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 昔ほど「テレビ」というものに夢と華がない時代。コンテンツの王様としての立場は、スマホの台頭によってずいぶんとあやういものになった。こうした状況下で、4月11日にインターネットテレビ局として開局(先行配信は3月)した「AbemaTV」が、識者の予想をはるかに上回る好調ぶりをみせている。6月半ばの時点で、視聴アプリが400万ダウンロードを突破した。

 サイバーエージェントとテレビ朝日の出資による動画配信事業であり、テレビを本職とするスタッフがオリジナル番組を手がけている。これまでの動画サイトと比べ、明快なメジャー感があるのはそのためだ。『みのもんたのよるバズ!』『若槻千夏と生で行ってみた』といった、有名タレントを起用した番組も多い。一方で、「釣り」「麻雀」といったコンテンツに、ネットコンテンツとしてのホビー感も残している。

 テレビが不振の時代に、(ある意味でライバルであるところの)ネット企業がテレビを創った。この構図は非常におもしろい。サイバーエージェントの藤田晋(ふじた・すすむ)社長自身がマスコミの取材を受けることも多く、その語り口から事業に対する本気のほどがうかがえる。スマホで見る24時間無料のテレビというビジネスモデルの、行く先やいかに。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 東日本大震災をきっかけに、全国で広く利用されるようになったボランティアバスに対して、今年5月、観光庁から待ったがかかった。

 ボランティアバスは、地震や津波、土砂災害などを受けた被災地に、ボランティアを派遣するために利用されている。募集の主体となっているのは、被災地支援をするNPO法人や任意団体など。

 被災地にボランティアに行くときは、交通手段も宿泊先も自分で確保し、食べるものなどは自分で用意し、現地に負担をかけないのが原則とされている。だが、被災地支援のノウハウや現地との繋がりがないと、「ボランティアに行きたい」という意思はあっても、現地で活動するのは難しい。また、個人がそれぞれ車で被災地に行くと交通渋滞の原因にもなる。

 そうした人の受け皿となってきたのがボランティアバスで、一定の参加費用を参加者から集めてバスを運行する。また、参加する人も交通費や宿泊費などを軽減できたり、交通渋滞の緩和につながったりするとして、ボランティアに行く手段として定着してきていた。

 だが、旅行業法では、報酬を得て運送や宿泊の手配をする場合は「旅行業」とみなされ、たとえ利益の出ない実費の徴収でも、国や都道府県に対して旅行業者としての事前登録を義務づけている。そのため、この法律を厳密に運用すると、登録をしていないNPO法人や社会福祉協議会などが、参加費を集めてボランティアバスを運行するのは違法となる。

 ただし、復興庁のホームページには、被災地にボランティアに行くための手段として、ボランティアバスツアーの活用が紹介されている。被災地でのボランティアニーズの高まりもあり、これまではボランティアバスは黙認されていた形だった。

 ところが、ここにきて旅行業法違反を問題視した観光庁が、ボランティアを募集する団体に対して、「旅行業者としての登録を受ける」もしくは「旅行業者にツアー自体やツアーの参加費の徴収を委託する」などの改善策を求める通知を出したのだ。

 通知を受けた被災地支援団体は、今後、旅行業者への委託をすることでボランティアを募集することになるが、旅行業者を通すと、手数料などによって、ボランティアに参加する人の経済的負担が増えることになる。その結果、参加者が減ってしまったり、迅速な対応ができなくなったりすることも懸念されている。

 4月に発生した熊本地震の被災地では、まだまだ瓦礫の片付けなどのボランティアが必要だが、この通知によって、熊本への派遣を中止する団体も出ている。

 今年1月、軽井沢で起きたスキーバスの転落事故の影響もあり、バスの運行には社会の厳しい目が注がれている。もちろんバスが安全に運行されるように、国が規制をかけるのは必要なことだ。だが、被災地支援のボランティア活動を妨げるような法の運用には首を傾げざるを得ない。

 現状に合っていないのであれば、法律を変えるべきだし、安全なバス業者の選定に観光庁が協力するなど、支援団体の負担を抑えられるような行政の配慮が必要になるだろう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 結婚式は人生における一大イベント。楽しき思い出にしたいものだが、互いのイエ同士のしがらみ、面倒なしきたりのせいで、気疲れする例も多かっただろう。主役はあくまで新郎と新婦。近年においては、ふたりの「らしさ」の感覚を大事に、必要最小限で式を済ませるカップルも少なくない。「ジミ婚」という言葉も一般化している。

 ところが現在、式における「家族」の存在感が増しているそうだ。これは時代の逆戻りなのかと思いきや、さにあらず。せっかくの機会なのだから、家族みんなでイベントを楽しもうではないか、というカジュアルな感覚によるものらしい。人呼んで「ファミリーウェディング」、略して「ファミ婚」である。たとえばケーキ入刀も、いまどきは両家の両親とともに行なう趣向が多いとか。親と仲のよい若者が多い(とされる)時代を象徴しているのかもしれない。

 ファミ婚では、これまで親族席で座りっぱなしの地味な役回りであった母親が、前に出るようになった。「最後のお世話」といった意味を込めて、ケーキを新郎新婦に食べさせる「ラストバイト」。純潔の象徴たるウェディングドレスのベールを下ろす「ベールダウン」。いずれも母親に任せられる重要な儀式である。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 これこそ、「時代の遺物」という規定ではなかったか。

 女性の再婚禁止期間が、6か月(180日)から100日に短縮されることになった。

 「100日を超える再婚禁止期間は憲法違反」とする最高裁判決(2015年12月)を受け、民法が改正されたからだ(平成28年6月7日公布・施行)。再婚禁止期間が見直されるのは民法が施行された1898(明治31)年以来、初めてのことだ。

 民法の再婚禁止期間は、離婚した女性が出産する子どもの父親について「前夫なのか、再婚相手なのか」と、混乱しないよう設けられた。しかし、医学や科学技術の進歩した現在、DNA鑑定で親子関係の特定は簡単にできる。

 また民法の改正では、新たに、離婚時に妊娠していないことや、離婚後に出産したことなどが医学的に証明できれば、100日以内でも例外的に再婚が認められるようになった。当然である。

 今回、再婚禁止期間が100日に短縮されたわけだが、そもそも「再婚禁止期間の規定を撤廃すべきだ」との意見もある。

 海外ではドイツやフランス、スイスなどが廃止、お隣韓国も日本と同じ180日禁止規定があったが、2005年に廃止した。アメリカやイギリスはそもそも禁止規定がない。

 民法の世界には、結婚可能年齢の男女差(男18歳以上、女16歳以上)など、時代遅れ、社会の実情にそぐわない規定がまだまだありそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 目は一重や奥二重で、鼻や口などのパーツも小ぶりで控えめな顔立ちの女子のことをこう呼ぶ。肌が白くてメイクは薄めなのもマストであるらしい。

 タレントに例えるなら、吉高由里子・蒼井優・宮崎あおい・蓮佛美沙子(れんぶつ・みさこ)・黒木華(はる)……あたりが「典型的」とされ、「好かれやすい」というよりは「嫌われにくい」といった観点から、昨今はCMでも引っ張りだこなのだそう。

 わかりやすい華やかさがないぶん、男からすれば「一目惚れ」よりは「じわじわと好きになってしまう」ケースのほうが圧倒的に多いが、そういう傾向を客観的に自覚し、たまーに「気の強い一面」などの外見とのギャップを緻密な計算のうえで小出しにでもされた日にゃあ、最初こそ軽い気持ちでアプローチしたつもりが、“いつの間にか”のめり込んでしまっていた……なんてこともよくあるパターンだったりするので、まことにもってタチが悪い。

 ちなみに、西島秀俊、綾野剛を代表格とする塩顔男子ブームは“女子”よりもだいぶ早い時期から騒がれていたが、現時点でまだ下火となる気配はまったくない。塩とは180度かけ離れた濃い顔系の筆者としては、“シオの流れ”がとっとと男子から女子へと移り変わり、「焼き鳥と男は、やっぱ塩よりタレよね〜」といった時代が来ることを心待ちにしている。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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