京都の町の真ん中に、「六角さん」と呼ばれる天台宗の寺がある。平安遷都以前に開創された寺で、正称を「紫雲山頂法寺(ちょうほうじ)」といい、「六角堂」という通称でも知られている。587(用明天皇2)年、聖徳太子が大阪の四天王寺建立のため用材を求めて訪れた際、持仏を安置してお堂を設けたことが始まりと伝えられている。その長い歴史の中で多くの伝説があり、親鸞聖人が参籠したことや、華道池坊(いけのぼう)流の名称が、境内の池のそばにあった住坊(僧侶の住まい)から発した、などの史実で知っている人も多いだろう。

 さて、六角通の正門から寺に入ると、六角形をしたお堂の手前に、奇妙な形をした石が地面に埋め込まれていることに気づくはずである。直径40センチメートルほどのこれも六角形をした石で、中央には用途のわからない丸い穴が空けられている。通称「へそ石」という。昔、京都の中心部にあるので「要(かなめ)石」と呼ばれていたことがあり、また、平安京の位置を細かく定めた条坊の制度ができたときには、この石をその基点の一つにしたともいわれている。

 1780(安永9)年の『都名所図会』で「へそ石」を探してみると、「六角さん」の正面を通る六角通の真ん中に描かれている。その後、「へそ石」は交通至便の理由から1877(明治10)年に現在地に移されたが、それまではずっと正面の道の真ん中にあったそうである。京都は千年の都というけれど、平安遷都以前から同じものが同じ場所に存在するケースはほとんどない。「へそ石」はとても貴重な存在であった。現代では「東寺の石段」ぐらいしか、当時のまま残されているものはないのではなかろうか。


六角堂のへそ石。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



  ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任することが決まった。最悪と最低の大統領選は最悪が制した。トランプ氏は1946年ニューヨーク市クイーンズ生まれで70歳。米大統領史上最高齢になる。

 父親の不動産会社を引き継ぎ、ホテル業にも進出して大成功させ、マンハッタンにトランプ・タワーを建てて話題になる。

 だがカジノの経営に手を出し負債を抱え破綻の危機に陥ったり、結婚・離婚・再婚を繰り返す。

 経営を徐々に好転させると、ミスユニバース機構を買収(15年まで保有)。2001年にニューヨークに超高級マンションのトランプ・ワールドタワーをつくり、2004年から始まった自らがホストを務めるリアリティ番組『アプレンティス』の決めゼリフ「おまえはクビだ!」で人気者になる。

 その後、大統領選に出る出ないを繰り返していたが、2015年に出馬を表明。最初はまったくの泡沫候補扱いだったが、過激な発言が注目を集め、ついには大本命といわれていたヒラリー・クリントンを破り、オバマ大統領の次の座を射止めてしまった。

 世界中のメディアが“衝撃的”“驚愕”という表現で、トランプショックの大きさを表した。トランプ勝利はアメリカメディアの敗北をも意味する。ほぼすべてのメディアはしたり顔でヒラリー支持を表明した。彼らは民意を汲み取っていなかったばかりか、メディア不信を増大させ、反発を招き、トランプ支持への流れに手を貸してしまったのである。

 投票直前の11月5日に放送されたNHKスペシャル『揺らぐアメリカはどこへ 混迷の大統領選挙』は、白人労働者層がアルコールやドラッグに溺れ、死亡率が増加するオハイオ州を取材していた。そこで検視官がこう語っている。

 「こんなにひどいのは経験したことがありません。ここは教育もなく仕事もなく、未来や希望もない人々の末路です」

 こうした人たちをヒラリーは「トランプ支持者はデプロラブル(惨め)な人々の集まりだ」と逆なでする言葉を吐き、自身の私用メール問題もあり、自滅していった。

 トランプ陣営の選挙方法のうまさも際立っていた。陣営は、選挙によく行く有権者ではなく、普段はあまり選挙に行かないが現状に不満を持つ有権者を掘り起こし、トランプ支持を訴えて投票に行かせた。この手法は日本の野党がすぐに見習うべきものであろう。

 想定外の事態に驚いた安倍首相はあわてて特使を出し、現職のオバマを無視して17日にトランプと会談。

 各紙の11月10日の社説も、トランプの手法は「露骨なポピュリズムそのものだ」(朝日新聞)、共和党はネオコン(新保守主義派)や「小さな政府」を求める草の根運動「ティーパーティー」などと協調するうちに方向性を見失い、「トランプ氏という『怪物』を出現させた」(毎日新聞)、「米国政治の劣化は深刻である」(読売新聞)と、日本も同じ惨憺たる状態であることを脇に置いて論じている。

 産経新聞などはこの機会に便乗して、安倍首相は「具体的な防衛力の強化策を講じることが不可欠」だと、さらに軍事力を増やせと煽っているのである。

 結果が出る前に発売された『ニューズウィーク日本版』(11/15号、以下『ニューズ』)には、「『トランプ大統領』は独裁者になるのか」という記事がある。

 同誌のワシントン支局長は、もしトランプが大統領になったとしても(あくまで仮定としてだが)、トランプはヒトラーでもなければファシストでもない。独裁者にはなれないと断じている。

 「実際には、トランプ大統領の時代はごく地味になるだろう。(中略)
 トランプは自分の能力と男らしさに自信を持っている。とはいえ、三権分立のアメリカの政治制度には太刀打ちできない。(中略)大統領は本質的に立場が弱く、他の人に自分の望むことをさせるには、説得の力を使うしかない」

 内田樹(たつる)氏は『街場のアメリカ論』(文春文庫)の中で、アメリカの有権者は表面的なポピュラリティに惑わされて適正を欠いた統治者を選んでしまう彼ら自身の「愚かさ」を勘定に入れて、統治システムを構築していると記している。

 「いかにして賢明で有徳な政治家に統治を託すかではなく、いかにして愚鈍で無能な統治者が社会にもたらすネガティヴな効果を最小化するかに焦点化されているのです。(中略)
 そのために配慮されるのは、まず『権力の集中』を制度的に許さないことです」(同書より)

 米大統領より、日本の首相のほうがはるかに大きな権限を持っていることは、安倍が日銀に介入したり、安保法制を強行採決したことでもわかる。

 劣化した国を「偉大なアメリカを取り戻そう」と言って大統領の座を得たトランプは、同じようなスローガンを掲げて就任したロナルド・レーガンを思い起こさせる。

 『ニューズ』は、好戦的だと思われたレーガンは、ソ連と過去最大規模の軍縮協定を結んだし、83年にベイルートで米海兵隊兵舎が爆破されても反撃せず、撤退させた。

 だがトランプも、批判者も認めるべき柔軟なイデオロギー、交渉力、コミュニケーション力といったよい面を備えているが、

 「しかし欠点がそれらを台無しにしてしまう。他宗教へのかたくなな態度、メキシコ人への侮辱、傲慢極まりない姿勢などだ。
 トランプが大統領になっても、強烈な個性と弱い者いじめだけで記憶され、取るに足りない存在として歴史の教科書に名を残すだけだろう」

と書いているが、トランプ大統領が現実になる前に書かれた文章だとしても、楽観的すぎると思われる。

 どうせ失うものなど何もない。既成の政治家はわれわれ貧しい者には目を向けず声を聞いてもくれない。それを聞こうとしたフリをして見せたのが、不動産で巨万の富を築き、弱者のことなど一度も考えたことのなかったトランプだったところに、アメリカの底知れぬ悲劇がある

 アメリカの背中を追い、アメリカの物真似しかしてこなかった日本は、宗主国の迷走をただ黙って眺めるだけである。そうしてアメリカ、日本、世界の崩壊は早まっていくのだろう。

 『週刊ポスト』(11/25号)は「『トランプ大統領で本当に良かった!』と、大マジメに話す人たちの声に耳を傾けてみた」という特集を組んでいる。

 そこでは、安倍首相とトランプはレーガンと中曽根の「ロン-ヤス」関係を超える、「ドン-シン」関係を築くのではと見ている人がいるとしている。

 私はこれにロシアのプーチン大統領を加えて「ドン-プー-シン」独裁者三国同盟になるのではないかと思うのだが。

 トランプが言う「在日米軍撤退」ならば、日本は自主独立のチャンスである。アメリカに守られ頼って生きる時代、つまり戦後が終わることになると言わせているが、私は本当の意味での「アメリカ離れ→自主独立」の最後のチャンスではないかと思っている。

 だが、アメリカのポチ・安倍では期待できはしないだろう。

 トランプは中間層や低所得者層への大幅減税や法人税の大幅引き下げを公約しているし、奨学金がないと学校に通えない状態を改めると言っているから、トランプノミクス(『ニューズ』11/22号では「トランポノミクス」と言っている)が日本の株を押し上げ、強いドルを目指すから円安になり、来年春には日経平均2万円台に回復すると、ノー天気な話を取り上げている。

 この特集の中で頷けるのは、トランプには暗殺の危険があるということである。

 それでなくても東と西海岸では、トランプに反対する大規模なデモが起こっている。イスラム系の住民を追い出すようなことが実行されれば、ISだけではなく、世界中の過激派を敵に回すことになる。命はいくつあっても足りないはずだ。

 『週刊現代』(11/26号)は「トランプが世界経済をぶっ壊す」という特集。

 最初の、今回の大統領選はエリートとマスコミの敗北というのは理解できる。だが、『ポスト』同様、トランプノミクスで、2月になれば日本株が「爆上げ」すると予測している。

 それも湯水のようにカネをばらまいて、橋も道路も造り直し、日本の昔のバブルの頃のようなことをやるというのだが、そんな余裕は今のアメリカにはない。

 トランプとの付き合い方を、スナイダーという米スタンフォード大学アジア太平洋研究センター研究副主幹がこう言っている。

 「いま日本が行うべきことは、ただ一つ。徹底的にトランプ氏に媚びへつらうことです。『日本はあなたのことが大好きです。あなたはとても賢く、素晴らしい人だ。日本国民は、あなたの大統領就任を心から待望している……』」

 ふざけてるのか? いまだって安倍首相はアメリカに媚びへつらっている。これ以上したらバカにしてんのかと怒るはずだ。だがこれはアメリカの本音であろう。

 TPPは完全に終わったし(これはよかったと思う)、NAFTA(北米自由貿易協定)も破棄される可能性が高い。

 地球温暖化にも無知なトランプでは、世界からバカにされるのがオチだろう。『現代』が「イスラム圏からアメリカ企業が引き始める。するとそこに、日本の商機が出てくる」などとバカなことを言う人間まで登場させているのには呆れるしかない。

 イギリスのEU離脱より、トランプショックのほうが世界はもちろん、日本に与える影響も甚大なはずである。

 『ニューズ』(11/22号)はトランプについての大特集を組んでいる。その紙面は、トランプのアメリカの負の部分に対する危惧で埋め尽くされている。

 『ニューヨーカー』誌のデービッド・レムニック編集長はトランプの勝利は「移民排斥、権威主義、女性蔑視、人権差別を掲げる国内外の勢力の勝利」だ。それは「アメリカの共和制にとって悲劇にほかならない」と嘆いている。

 同誌のシニアライターのカート・アイケンワルドは、トランプがこれまで歩んできた道は、「他人の財産やキャリアをつぶして成功を手に入れ、それを自慢してきた。他人の手柄は奪い、自分の失敗の責任は他人に押し付ける。そうやってエゴを無限に膨らませてきた」。トランプは大統領になってもこれまで通り振る舞うだろうが、そうすれば共和党は空中分解し、アメリカも、と結んでいる。

 また、世界中で「TRUMP」名義使用権を売って稼いでいるトランプ・オーガニゼーションが、商売上と安全保障上の利益相反を各国間で引き起こす可能性を指摘し、トランプが大統領になってからは、「彼の会社がすぐに閉鎖されるか、トランプ家から完全に切り離されるのでない限り、アメリカの外交政策は売りに出されたに等しい」と、トランプが大統領という肩書きを利用して、国益よりもビジネスを優先するのではないかと手厳しい。

 言ったことを後で問われると、言っていないとしらを切り、口から出任せの暴言、放言を繰り返す「セールスマン」(『ニューズ』11/22号)に、世界は振り回されることになる。大事なのは、こうした人物を選ばざるを得なくなったアメリカの現状を冷静に見極め、EUやアジアの国々との関係を良好にして、日米同盟という呪縛から逃れることである。

 そのためには安倍一強体制を打破しなくてはいけないこと、言うまでもない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 トランプ大統領を『現代』が予言していた。新大統領が決まる直前の号で『現代』は「えっ、えっ、トランプ? アメリカ大統領選大ドンデン返し」という特集を組んでいたのを、私も見逃していた。
 もちろん記事を作った時点ではクリントン優勢で、トランプ? 冗談だろ~というのが大勢だった。私もそう信じていたから、『現代』の記事を読むことさえしなかった。これは隠れた大スクープだった。失礼!

第1位 「『黒田総裁』白旗で『日本銀行』と『日本財政』の漂流先」(『週刊新潮』11/17号)
第2位 「芸能界のドン・周防郁雄がすべてを語る」(『週刊現代』11/26号)/「レコード大賞審査会11・7『オフレコ議事録』」(『週刊文春』11/17号)
第3位 「『長生きする酒』『早死にする酒』その飲み方がわかった!」(『週刊ポスト』11/25号)

 第3位。『ポスト』に酒の飲み方で長生きできるという記事がある。飲んべえとしては見逃せない。
 11月2日、フランスのパリで開かれた「世界がん会議」で、アルコールを最も発がん性が高いグループに分類したという。
 アルコールはアスベストやダイオキシンと同じだというのだから、ビックリポンだ。
 アルコールが肝臓で分解されるとアセトアルデヒドという発がん性物質がつくられる。日本人の44%は、これを分解する酵素の働きが遺伝的に弱く、がん化する危険性が高いというのである。
 えらいこっちゃ。酒は命を削るカンナといわれる。なんとかならんのか?
 週3日、休肝日を設けろといわれるが、そんなもんムリやで。また焼酎やウイスキーのお湯割りは、食道や胃に負担がかかるから、水割りのほうがいいそうだ。
 キムチ鍋などもキムチに含まれる香辛料が食道や胃の粘膜に強い刺激を与えるからよくない。理想的なのは湯豆腐だという。豆腐にはLシステインという代謝を促進するアミノ酸と細胞膜を構成するレシチンが含まれているから、内臓へのダメージを減らす効果あり。
 白菜、ネギ、ニラも細胞の修復効果ありだそうだ。
 飲んだ後のシメには、お茶漬けやラーメンではなく、蕎麦がいい。とろろ蕎麦やなめこ蕎麦がオススメ。
 今夜は湯豆腐となめこ蕎麦で酒盛りと行こうか。だが、一番いけないのは飲みすぎだそうだ。ご注意あれ!

 第2位。『文春』が報道したレコ大大賞をカネで買ったというスクープは、ほとんどのメディアがダンマリを決めているが、11月7日にTBS本社で今年のレコ大の2度目の審査会が行なわれたそうだ。
 だが、この問題を調査しようという声は上がらず、今年も、バーニング周防郁雄(すほう・いくお)氏の息のかかったライジングプロのアイドルグループふわふわ『フワフワSugar Love』や西内まりやの『BELIEVE』、バーニング幹部の某氏が推す西野カナが有力だという。
 自浄作用のない業界は腐敗し潰れる。これが一番当てはまるのが芸能界であることは疑いようがない。
 『現代』がレコ大を含めて芸能界を牛耳り、ドンの名をほしいままにしているバーニングの周防氏をインタビューしている。
 このところ芸能界の裏話を追いかけて連載しているノンフィクション作家の田崎健太氏が話を聞いている。
 周防氏も75歳。こうしたインタビューに出てくることは珍しいから、出しただけでもある種のスクープではある。
 だが、今出すのなら『文春』のスクープについて聞かなければ何もならないと思うが、それが条件なのであろう、今回はそれについて聞いていないのがもの足りない。
 新栄プロという演歌専門のプロダクションで働き始め、運転手をやったりサイン色紙を売ったりと、それなりに頑張ったそうである。
 懐かしいTBSの音楽プロデューサー渡辺正文氏の名前が出たり、バーニングの由来、郷ひろみ移籍問題、メリー喜多川氏のことなど話してはいるが、どうということはない内容である。
 田崎氏は周防氏が「ぼくは口下手なんです」と言ったとか、「想像とは異なり、芸能界の『ドン』は最後まで控えめな男だった」と書いているが、私が知る限り、彼は酒は飲まないが、舌はかなり回るほうである。
 田崎氏も、ところでレコ大の1億円の話ですが、あれは本当なんですよねと、聞いてみたらよかったのに。
 そうすれば周防氏が無口で控えめではなく、凄みのある饒舌ぶりを聞くことができたはずである。
 そういう意味でも残念なインタビューではある。

 第1位。『新潮』が日銀黒田総裁の「失敗」を取り上げている。任期中に物価上昇率2%は達成できないと、黒田総裁は白旗を掲げたが、ゴメンですむ問題ではない。
 何しろ「10月31日の時点で、日銀が抱える長期国債の銘柄別残高は348兆4117億円」(シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミスト)にもなるのだから。
 日銀には7兆円以上の自己資本があるが、「これを含み損に補填したとしてもまだ追いつかず、現状では差し引き約1兆7000億円の債務超過となっている」(同)という。
 数字を見ているだけで気の遠くなる金額であり、インフレになって銀行間の取引金利を引き上げ物価を抑制しようとしても、政策金利を1%上げただけで3兆円の利息を日銀は払わなければいけないそうだ。
 そうなると手持ちの自己資本など2、3年で消えてしまう。私には何のことかよくわからないが、黒田日銀の大失敗は日本経済に暗い影を落としたことだけは間違いない。昔なら切腹ものだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 東京の「クリスプ・サラダワークス」など専門店が増えていること、またコンビニのセブン-イレブンでも扱いが始まったことから、新顔の域を脱しつつある「チョップドサラダ」。野菜好きならおさえておきたいメニューだ。

 チョップドサラダの「チョップド(chopped)」とは、この場合「小さく(一口サイズに)切ること」を意味する。野菜やフルーツなどを同じサイズにカットすることで、スプーンでライスやシリアルのように食べるカジュアルさが生まれた。これまでのサラダの概念とはだいぶ異なる食感が楽しく、特に砕いたナッツを加えると、これだけで「食事した」という満足感が得られる。また、具材が小さいことはドレッシングがよく絡むということでもあり、テイストもよいのである。

 もともとはニューヨークで人気に火がついたスタイル。近年、現地のセレブの食事の嗜好も、健康面だけでなく味にこだわりだした模様。いままで食の後進国扱いされきてたアメリカから、グルメな話題がとみに増えた気がする。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 近年、日本でも「フットパス」と呼ばれる人が歩くための小径(こみち)の整備が進んでいる。

 フットパスは、田園地帯や森林、伝統的な町並みなどを楽しみながら歩くことを目的とした歩行用の道路。発祥はイギリスのマンチェスター地方で、自由に散策する権利を求める市民が、狩猟用の私有地に侵入した「キンダースカウト集団侵入事件」に端を発したものだ。この出来事を機に、フットパスの原型である歩行用の道路が作られるようになり、現在では総延長22.5万キロメートルものフットパスがある。

 1990年には、優先通行権法が制定され、指定された地域では私的所有地や森林組合などの管理する道路でも、一定のマナーを守れば誰でも自由に通行できるようになった。

 日本でも、1990年代から、北海道、山形、茨城、東京、山梨、熊本などでフットパスが作られるようになったが、こちらは町づくりの一環としての意味合いが強い。地域に根付く産業によって作られた景観、住民たちが大切に育んできた自然を楽しみ、身近に感じられる道路をフットパスとして整備してルートマップや道標を作っている。

 フットパスには、それぞれの地域の文化や歴史を知るスポットが盛り込まれていることが多いため、観光客には新鮮さを与え、地域住民も自らが暮らす土地の魅力を再発見できる。

 フットパスのルートには、私有地のほか、地域の人々が共同で守り続けてきた伝統的な場所もある。そのため、決められたルートを守り、ゴミは必ず持ち帰るのがマナーだ。その土地と景観を守り続けてきた人々への敬意を忘れず、フットパスを楽しみたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 屋内のライブイベントやクラブで気分が高揚するのは、闇と光で視界をコントロールされることが影響している。まず、自分が他者に認識されにくいことによる開放感が挙げられる。同時に、見えないという不安が、周囲とつながりたいという気持ちにも結びつき、集団の一体感を生み出すのだ。じつに心理学をよく理解した演出といえる。

 いま注目されている多様な「暗闇系」のフィットネスは、「スポーツが得意でない」「体型をさらしたくない」という心のハードルを越えさせる秀逸なアイディアだ。いずれも暗いスタジオを利用し、人目を気にしないで運動できる。また、音楽をガンガンかけ、照明の演出も駆使しつつ、クラブで盛り上がるかのような空間を設定する。「ひたすらしんどい」運動からの脱却をはかっているわけだ。

 かのレディー・ガガもはまったというバイクフィットネス「FEELCYCLE(フィールサイクル)」、ヨーロッパを席巻しているトランポリンフィットネス「JUMP ONE(ジャンプワン)」、ボクシングフィットネス「b-monster(ビーモンスター)」など、先に海外のセレブのあいだでブレイクした暗闇系のスタジオが、次々と国内に進出している。都会的でしゃれたスタイルが、いまどきのダイエッターを魅了する。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 大手広告代理店・電通で痛ましい事件が発覚した。24歳の女性新入社員が2015年12月、過労自殺し、長時間労働による精神障害が原因と労災認定されたのだ。

 政府が「働き方改革」を看板政策に掲げ、長時間労働の是正に取り組もうとしている、そのさ中の事件発覚。これを受け、「36協定」に注目が集まっている。

 36協定は労働基準法36条に基づく労使協定。そもそも労基法は、労働時間を「1日8時間、週40時間まで」と定めている。しかし、労使が労基法36条に基づく労使協定を締結すれば、労働時間を延長したり、休日出勤させることができる。事実上、「1日8時間、週40時間労働」が骨抜きになっているのだ。

 厚生労働省(2013年度労働時間等総合実態調査)によると大企業の94.0%、中小企業の43.4%がこの36協定を結んでいるのが実態だ。

 件の電通も、時間外労働の上限を月70時間とする労使協定を結んでいたが、実際には上限を超える違法な時間外労働が行なわれていたようだ。実際、電通は労働基準監督署から是正勧告を受けていることが明らかになった。

 一方、「働き方改革」を進める政府は、36協定の見直しを検討中だ。専門家会議による議論を始めた。2016年内にも長時間労働の是正策をまとめるという。36協定の見直しは待ったなしだ。

 気になるのはその一方で、政府が、労働時間ではなく仕事の成果に給料を支払う「脱時間給制度」の導入を目指していることだ。「36協定の見直し、長時間労働の是正」と「脱時間給制度」は真逆で、矛盾した政策ではないか。政府は国民・労働者にきちんと説明する必要があるのではないか。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 TBS系のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(略「逃げ恥」)のエンディングに流れる、主演男優でもある星野源(ほしの・げん)が作詞作曲を手掛けた『恋』という曲に合わせ、「ガッキー」こと新垣結衣(あらがき・ゆい)が共演者と一緒に踊るダンスのこと。

 「ダンスは習ったこともないし、本来は苦手分野」と、みずから告白する新垣がちょっとはにかみながらも懸命に踊る姿が、老若男女のハートを鷲づかみ。「ガッキー可愛すぎ!」……ほか諸々の賞賛の声で、ピコ太郎に負けず劣らずの勢いで、ネット上が大騒ぎになっている。

 過去のポッキーCMの大ブレイクからもおわかりだろうが、「ガッキーダンス」はメディア側にとっての飛車角にも匹敵する、いわゆる“飛び道具”のようなものであり、この“テッパン”なエンディングが、ドラマ本編の高評価にまで少なからずの貢献を果たしているのは言うまでもない。

 これからの忘年会シーズン、一般社会においても二次会のカラオケあたりでは、酔いにまかせた女子たちの「なんちゃって恋ダンス」が方々で披露されまくることが予測されるが、「ダンスが下手」「テレ」「笑顔」「でもクソ真面目に最後まで躍り通す」……といったポイントだけは押さえておいてもらいたい。中途半端な姿勢で挑む「恋ダンス」ほどサムいパフォーマンスはない、ということをお忘れなく……?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>