日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 以前あるテレビ番組で、番組中に出題したことばの問題について、コメントをして欲しいと頼まれたことがある。タイトルに示したものはその時の問題の一部である。おわかりだろうが、すべて国名の当て字である。順番に「トルコ」「オーストラリア」「ブラジル」となる。ただ、なぜそのように表記するようになったのか説明しろと言われると、これがけっこう難しいのだ。
 「土耳古」……なぜ「ル」が「耳」になるのかわ

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 また「的を得る」は間違いだという話か、とお思いになった方も大勢いらっしゃるかもしれない。確かにそれもあるのだが、ことはそれほど単純ではないという話をしたいのである。
 国語辞典を引くと、「的を射る」が正しく、「的を得る」は「当を得る」との混同で誤用とするものが多い。そういわれれば、はいわかりましたと引き下がるしかないのだが、「的を得る」は本当に「当を得る」との混同なのか、さらには「的を

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 『読売新聞』の朝刊に「日本語日めくり」という、ことばに関する興味深い連載コラムがある。以前そのコラムで「ひもとく」ということばを話題にしていた(2010年3月17日付)。「ひもとく」とは「繙く・紐解く」と書き、本の損傷を防ぐために包む覆い(帙(ちつ))の紐を解く意から、元来は本を読むことをいう。その「ひもとく」に、「調べる」「解明する」といった新しい意味が広まりつつあるというのがコラムの内容であ

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 標題のような質問を受けた。質問者は、「一倍」は数学だと×1なので、「人一倍がんばる」というのは、結局人と同じではないのか。人よりもがんばるのなら、正しくは「人二倍」ではないのか、というのである。
 『日国』によれば、「一倍」は「二倍の古い言い方で、ある数量にそれと同じだけのものを加えること」とある。一番古い用例は奈良時代のものなので、かなり古くから2倍の意味で用いられていたことがわかる

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 前回、「悩ましい」は問題の多い語だと書いたが、「悩ましい問題」という表現に違和感を持った方も大勢いらっしゃったのではないだろうか。本来この語は「官能が刺激されて心が乱れる思いである」という意味で使われることが多かったのだが、近年になって「どうしたらいいのか悩んでいる状態である」という意味が生じているのである。
 文化庁が平成14(2002)年1月に行なった「国語に関する世論調査」でこの

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