日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 陰暦7月の異称で、「ふづき」ともいう。陰暦では7月から秋である。
 7月をなぜ「文月」というのか、実はよくわかっていない。「水無月」(第10回)でも引用した平安時代後期の和歌の研究書『奥義抄』には、「七夕に書物を供える意からフミヒラキヅキの誤り」とする説が見える。他に、稲の穂のフフミヅキ(含月)の意とする説(賀茂真淵『語意考』1769年)、七月に書物の虫ぼしをするところからとする説

キーワード:


 京都に行くといつも思うのだが、車のすれ違いが難しそうな狭い道がとても多い。
 先日もそんな道をタクシーに乗っていたら、前から車がやってきた。お互いにこのまま進んだらすれ違いは難しかろうと見ていたら、タクシーの運転手さんが相手の車に「そこにいてくれれば“リゴウ”できる」と声をかけた。対向車の運転手も何事もなかったかのようにその場で車を停めたので意味が通じたのであろう。
 リゴウ?

キーワード:


 「梅雨」と書いて「つゆ」とも「ばいう」とも読む。夏至(げし)前後の雨や曇りの日が多く現れる時期、つまりちょうど今頃のことである。
 この時期をなぜ「つゆ」と言うのか、実はあまりよくわかっていない。
・露の多い時節の意味
・「ツユ(露)」の意味
・物がしめりくさるところから「ツイユ(潰)」の意味
・梅が熟すところから「ツハル」の意味でそれが縮まった

キーワード:


 京都の人に「水無月」というと、どうやら月の異名よりも、その名のついた和菓子を真っ先に思い浮かべるらしい。関東の人間にはあまりなじみがないのだが、白い外郎(ういろう)を台にしてその上に甘く煮た小豆をのせ、三角形に切った菓子である。外郎は氷に見立てたもので、小豆は悪魔払いの意味合いがあるのだそうだ。
 なぜ6月に氷なのかというと、古く6月1日に氷室に蓄えておいた氷を取り出して、天皇に献上し

キーワード:


 「水無月」とは陰暦6月の異称であるが、現在では梅雨の時季に重なるこの月をなぜ「水の無い月」と書くのか、ずっと疑問に思っていた。もちろん陰暦の場合、4、5、6月が夏なので、陰暦6月は一番日差しの強い夏の真っ盛りであるということは知っていた。だが陰暦6月に当たる新暦の7月だって、干ばつの年は別にして、雨がまったく降らないというわけではない。この月だけ「水が無い」という理由がわからなかったのである。<

キーワード: