日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 八百屋さんの店先で、「きうり 3本〇〇円」などと書かれた値札を見かけることがある。もちろん「きうり」は野菜のキュウリのことだが、なぜ「きうり」と書かれるのか、みなさんは疑問に思ったことはないだろうか。よもや、「きうり」と書くと文字が1字少なくてすむので省エネになっているとか、「きうり」は八百屋さんの符丁だなどと思っている人はいないであろう。
 キュウリは「胡瓜」と書かれることもあるが、

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 「さようなら」はもちろん別れのあいさつに用いることばであるが、どうして「さようなら」と言うのかご存じだろうか。
 「さようなら」は「さようならば」の変化した語で、もともとは、それならば、それではという意味の接続詞である。それが、「ごきげんよう」「のちほど」などのほかの別れの表現と結びついた形で用いられるようになり、江戸時代後期に独立した別れのことばとして一般化するのである。

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 前回「おかあさん」という語について書いたのだが、それを読んでくれた友人から、続きを書きたくなるような内容のメールをもらった。彼が中学時代に通っていた英語塾の先生が、古いなぞなぞに「母には二度あうけれども父には一度もあわない」というのがあり、答えは「唇(くちびる)」であることか

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 5月の第2日曜日は「母の日」である。今年は5月10日がその日なので、今回は「母の日」にちなんで、「おかあさん」という語について触れてみたい。
 母親の呼称は「母(はは)」が古く、『万葉集』などにもその例が見られる。ただ、時代はやや下るが、12世紀頃から「ハハ」ではなく「ハワ」という表記も見られることから、「ハワ」と言っていた時代もあったと考えられている。
 これに対して「おか

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 かれこれ40年近くも前の話である。大学の同級生に「従来のやり方に固執する」などと言うときの「固執」を「コシュー」と言う友人がいて、あれ?と思ったことがある。自分は「コシツ」と言っていたからである。失礼な話だが、彼は地方の出身だったので、最初は方言か何かなのだろうかとさえ思った。
 だが、ずいぶん経ってからではあるが、彼は「固執」の本来の読みをしていることがわかった。
 「執」

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