日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 犬を「わんわん」、歩くことや足を「あんよ」、寝ることを「ねんね」などと言うのを「幼児語」ということはご存じだと思う。これらは幼児とその養育者との間で使われることが多いことばである。だから子どもがある程度の年齢になればあまり使われなくなる。だが、「うんこ」「おしっこ」などは、小学生になっても特に男児には大人気のことばだ。従来小学生向けの辞典では、このようなことばは下品だから避けたほうがいいという判

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 父親の呼称に関してももう一回お付き合いいただきたい。
 「ちち」という呼称も「はは」同様かなり古く『万葉集』にその例が見られる。ただしさらに古い例だと、『古事記』の歌謡に「まろが知(チ)」という例があることから、「ち」に父の意があったと考えられている。この歌謡自体の意味は、お酒ができたのでおいしく召し上がってください、われらのおやじさんよ、といったものである。「ち」は、「おほぢ」(祖父

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 第260回で「おかあさん」という呼称が急激に広まったのは、1903(明治36)年の第一期国定読本「尋常小学読本-二」からだと書いたが、「おとうさん」という呼称も同様である。それは、
 「タロー ハ、イマ、アサ ノ アイサツ ヲ シテヰマス。オトウサン オハヤウゴザイ

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第265回
 

 社員の結婚式でスピーチを頼まれたという知り合いの社長さんから、「最近“そじ”っていうことばをよく聞くんだけど、知らない?」と尋ねられた。
 “そじ”?
 知らないことばを聞くと、職業病ゆえか、同音の熟語を頭の中で検索してしまう。すぐに思い浮かんだのは「措辞」「素地」「楚辞」の3語なのだが、どれも結婚式とは関係なさそうだ。「措辞」はことばの使い方のことだし、「素地」は何かをする

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 「今日は天気がよい」とも「今日は天気がいい」とも言う。何か違いがあるのか。また、「よい」と「いい」はどういう関係なのかという質問を受けた。
 この2語に意味の大きな違いはなく、どちらも物事の性質、状態、様子、機能などが好ましく、満足すべきさまであるという意味である。だが、ことばとしては「よい」のほうが格段に古い。「よい」の文語形は「よし」だが、『日本書紀』『万葉集』といった奈良時代や平

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