日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第273回
 

 10年以上も前のことだが、標準語から引ける方言辞典の編集を担当したことがある(佐藤亮一監修『標準語引き日本方言辞典』)。この辞典によって方言語彙の豊かさに惹(ひ)きつけられたのだが、中でも面白いと思ったものに「挨拶のことば」の方言がある。たとえば朝の挨拶語は、大方は「おはよう」を思い浮かべるかもしれないが、もう一つ別系統の言い方が存在するのである。それは、「目が覚めたか」とか「起きたか」といった

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 好きな食べ物は?と聞かれたら、間違いなく「すし」を挙げると思う。仕事で地方に出かけたときも「すし店」に立ち寄ることが多い。
 この「すし」だが、店名にするときの表記が、地方によって違いがあることをご存じだろうか。私がこのことを知ったのは、第218回「『谷』の音と訓」

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 表題のギャグで有名な上方の落語家、桂文枝師匠のことを話題にしようというわけではない。人が来たときなどに、歓迎の気持ちを表して言う挨拶のことばとしての「いらっしゃい」を取り上げたかったのである。
 「いらっしゃい」は、「よく来た」という意味の敬語表現「ようこそいらっしゃいました」などの簡略形から生まれた表現だと言われている。
 もとになった「いらっしゃる」は、元来は、「行く」「

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 辞書で見つけたことばを付せんに書いて辞書に貼る「辞書引き学習」を小学生に広めるため、この学習法の開発者である中部大学准教授深谷圭助氏と週末は全国各地を回っている。先日もたまたまひと月ほどの間に、愛知、岐阜、三重という東海三県を回る機会があった。
 その折にたびたび耳にしたのが、この地域の人たちがよく使う「みえる」ということばである。「みえる」と言っても、「猫は暗闇でも目が見える」のよう

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 まずは問題から。
 実力があって、他人に左右されたり圧倒されたりしないということを、皆さんは「押しも押されもせぬ」、あるいは「押しも押されぬ」のどちらを使っているだろうか。
 もちろん本来の言い方は、「押しも押されもせぬ」である。だからパソコンのワープロソフトで「押しも押されぬ」と入力すると、下に注意を喚起する波線がつくものまである。
 だが、「押しも押されぬ」はじ

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