日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 幼児が「とうもろこし」のことを「とうもころし・・・」と言ったり、「エレベーター」のことを「エベレ・・ーター」と言ったりしているのを聞いたことは無いだろうか。
 このようなひとつの単語の中の隣接する音が位置を交換させてしまう現象を、言語学では「音位転倒(転換)」

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 まずは問題から。

A 「そっけない」「あじけない」「いくじない」「かぎりない」
B 「あどけない」「せわしない」「せつない」「はしたない」

 AとBに掲げた語はすべて末尾に「ない」が付く形容詞だが、Aの語例の「ない」とBの語例の「ない」は別のものである。その違いを答えなさい。
 このような問題が学校のテストで出題されることはまずない

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 高校時代に習ったであろう、漢文のことを思い出していただきたい。その中に「再読文字」と呼ばれる、特殊な読み方をする漢字があったことをご記憶だろうか。訓読の際に、一度読んだあと、下から返ってもう一度読む漢字のことである。たとえば、「当」を「まさに(…す)べし」、「未」を「いまだ(…せ)ず」、「猶」を「なお(…の)ごとし」などと読むたぐいである。
 「須」という漢字もその仲間で、「すべかラク

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 『夕焼け小焼け』(詞:中村雨紅)という童謡は、ほとんどの方がご存じであろう。だが、タイトルにもある「小焼け」っていったいどういう意味なのかと疑問に思ったことはないだろうか。
 「小焼け」だから、夕焼けになりかかった状態のことだろう、などと想像した方もいらっしゃるかもしれない。それなら国語辞典に「小焼け」が載っていてもよさそうなものだが、ほとんどの辞典に「小焼け」は載っていない。

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 「山路を登りながら、かう考へた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。」
 夏目漱石の小説『草枕』の有名な書き出しである。『草枕』は漱石の他の小説とは異なった味わいをもつ小説で、好きな作品のひとつである。かつてレコードで愛聴していたカナダのピアニスト、グレン・グールド(1932~82)が『草枕』に深く傾倒していたと知ったとき、愛好している二つのものが思いがけず結びついたことに、とて

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