日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 まずは『日本国語大辞典 第2版』(『日国』)の「なつかしい」という語の解説をお読みいただきたい。引用されている例文を省略して、意味の部分だけを順序通りに示したものである。

(1)心がひかれ、離れたくないさま。愛着を覚えるさま。魅力的だ。慕わしい。
(2)過去の思い出に心がひかれて慕わしいさま。離れている人や物に覚える慕情についていう。

 いか

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 まずは問題から。表題の○の部分に入る仮名1字を答えなさい。こんな設問があったとすると皆さんは何と答えるであろうか。
 答えは「を」である。だが「や」と答えたかたもけっこう多いのではなかろうか。
 というのも、文化庁が発表した2006(平成18)年度の「国語に関する世論調査」でも、本来の言い方である「上を下への大騒ぎ」を使う人が21.3パーセント、従来なかった言い方「上や下への

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第256回
 

 滋賀県が県名を「近江(おうみ)県」に変更するための検討を始めたという。滋賀県の認知度があまり高くないことがその理由らしい。
 第55回の「志賀で『うみ』といえば」でも触れたのだが、「近江」は滋賀県の旧国名で、これは大化改新のときに定められたものである。「おうみ」は「淡水のうみ」を意味する「あはうみ」の変化した語で、「淡海」とも表記された。旧国名の「近江」は中央に琵琶湖があるところからの

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 いつも私の髪を切ってくれるO君は無類の話し好きである。先日もハサミを使いながら、「北海道でザイセーハジョーした市がありましたよね。なんていうとこでしたっけ。」と言うのである。
 「ザイセイ」は「財政」だということはすぐにわかったのだが、「ハジョー」とはいったい? 思い当たったのは、「破綻」を「ハジョー」と読んでいるのではないかということである。その市とは間違いなく夕張市のことだと気づい

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第254回
 

 たとえば講演会の最後に、講師が「今回は総花的なお話になってしまいましたが、次回からはもう少し詳しくご紹介していきたいと思っています」と言ったとする。みなさんは、この「総花的」の使い方をどのように感じるだろうか。
 この発言者はおそらく、内容が羅列的で話があちこちしているため、メリハリのない話になってしまったと言いたかったのだと思う。だが、この「総花的」の使い方は本来の意味のものではない

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