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  10. 火祭

火祭

ジャパンナレッジで閲覧できる『火祭』の世界大百科事典のサンプルページ

改訂新版・世界大百科事典
火祭
ひまつり

大火をたいたり,灯火やたいまつなどの火が大きな役割を果たす祭り。火祭の根底には,火に対するいい知れぬ畏敬の念があり,それが火祭の原動力をなしている場合が多い。火祭はたいてい夜に行われ,その火には祭場の照明や採暖といった実用的な意味のほか,神を招く目印,神そのものの表象,さらにいっさいを焼尽して浄化するなどさまざまな意味がある。また火は穢に対して敏感であるため,忌の期間は別火(べつび)の生活をしたり,火を更新して新年を迎えたり,神祭の神饌の調理には新たにきりだした浄火を用いるといった風習もある。正月には鬼火焚きや左義長(どんど焼き)などの火祭があり,この火にあたると若返るとか病気にならないなどの呪力があるとされている。盆の前後には柱松(はしらまつ),火揚げ,火柱,竿灯(かんとう),ねぶた,大文字焼き(大文字火),灯籠流しなどの火祭があり,送り火や迎え火のように盆の精霊を送迎したり怨霊を鎮めたりする火に由来するものが多い。また,火祭は年や季節の変り目によく行われるが,冬祭や霜月祭では火をたくことで衰弱した太陽の力をよみがえらせようとしたものであり,小正月の火祭も含めて春季の火祭には修正会(しゆしようえ)や修二会(しゆにえ)にみられるように,いっさいの厄災を焼き払って新しい季節を迎えるという意図がうかがえる。このように,火には水と同様に,浄化や清めの作用があると考えられたのである。有名な火祭には鞍馬の火祭,那智の火祭(扇祭(おうぎまつり)),勝部の火祭など修験と密接な関係をもったものが多いが,これは修験者が柴灯護摩(さいとうごま)や火渡りなど火を自在にあやつる呪者としての一面をもつためであろう。このほか,火祭には火伏せ祭,雨乞いのための千駄(せんだ)焚き,大晦日の火継ぎ榾(ほだ),おけら火などがある。小正月の火祭のなかには,〈火打合(ひぶちあい)〉といって村を二つの組に分けて互いに火のついた竹などで打ちあい,その勝敗で一年の豊凶を占う所もある。
[宇野 正人]

諸民族の火祭

典型的な火祭としては,古代インドの火神アグニAgniと古代ペルシアの火神アタルĀtarを対象とした祭りをあげることができる。古代インドではアグニは大地から生まれた神とされ,雨神,太陽神と並ぶ三大神の一つだった。各世帯では毎朝,炉に神の食物としての薪木が供され,家族は火の周囲で神に対する賛美と祈りの言葉を唱えた。この日常の儀礼とは別に,結婚式などの通過儀礼では,新しく火をおこし,葬礼においては葬列とともに火が運ばれて火葬されたが,その火によって身体の罪は焼き捨てられ,不死の部分が天まで運ばれると考えられた。アグニ神は世帯と氏族の神,人と神の仲介者,恋人たちの守護者などとその性格は多義的である。ヒンドゥー教におけるアグニ崇拝とそれに伴う儀礼は,今日ではブラーフマナ派がその外観を維持するのみとなっている。一方,古代ペルシアのゾロアスター教(拝火教)では,火は天の明りの地上的形態であり,永遠・絶対・神聖であり,その象徴が主神アフラ・マズダの子たる火神アタルである。アタル神に対する朝の礼拝と祈りは,先のインドの例に比べると簡単であるが,その火を消すことが罪である点はインドの例と同様である。この神は著しく死を嫌い,したがって火葬はあり得ず,その点アグニ神と異なる。イランの拝火教徒は今日もこの古代の神観念と儀礼をよく保持している。

アグニ神やアタル神の火祭にみるごとく,火のもつ浄化や排邪の観念は今日でも各地で広くみられるが,火が人や物を聖化するという観念もまた,古今東西に広く普及した観念である。例えば人が炎の中を歩いて純潔や真偽を試したり,献身のあかしをたてたりする行事などは,インドではすでに前1200年にさかのぼって記録がみられる。民族誌的にもこの種の慣行はスペイン,ブルガリア,太平洋地域(フィジー,モーリシャス,ソシエテ諸島,ニュージーランド),日本,中国,インドの中部と南部,アメリカ大陸の中部および北部で報じられている。
[杉山 晃一]

[索引語]
千駄(せんだ)焚き 火打合 アグニ Agni アタル Ātar
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検索コンテンツ
1. か‐さい[クヮ‥]【火祭】
日本国語大辞典
〔名〕旧約聖書の時代に行なわれた各種の犠牲のうち、火を用いて焼くもの。 ...
2. 火祭
日本大百科全書
。以上のほか、いっぷう変わった火祭が福島県などにある。それは、火事を起こした家があると、次年からその火事の日を火祭日とすることで、次に火事があるとその日を次の火 ...
3. 火祭
世界大百科事典
このように,火には水と同様に,浄化や清めの作用があると考えられたのである。有名な火祭には鞍馬の火祭,那智の火祭(扇祭(おうぎまつり)),勝部の火祭など修験と密接 ...
4. ひ‐まつり【火祭(り)】
デジタル大辞泉
8月26・27日に山梨県富士吉田市の浅間神社で行われる「吉田の火祭」、10月22日に京都鞍馬の由岐(ゆき)神社で行われる「鞍馬の火祭」が有名。《季 秋》  ...
5. ひまつり【火祭】
国史大辞典
・修二会などは火祭の形をとるものがあり、奈良東大寺二月堂のそれは代表的なものである。また秋葉神社などでも火祭を行う。修験がかかわって火祭を盛大に行なっているとこ ...
6. ひ‐まつり【火祭】
日本国語大辞典
われる鞍馬の火祭や、山梨県富士吉田の富士浅間神社で八月二六・二七日に行なわれる火祭などが名高い。《季・秋》*善光寺道名所図会〔1849〕四・戸隠山「二季の祭〈略 ...
7. ひまつり【火祭】[標準語索引]
日本方言大辞典
大みそかの夜に行われるひまつり:火祭ととつりあい小正月のひまつり:火祭さいじやき / さいとーやき / さいとやき / さいのかみ / せーとばれー / せーと ...
8. 出雲國造火祭 (見出し語:火祭)
古事類苑
神祇部 洋巻 第4巻 1066ページ ...
9. 戸隱神社火祭 (見出し語:火祭)
古事類苑
神祇部 洋巻 第4巻 767ページ ...
10. 秋葉神社の火祭り[百科マルチメディア]
日本大百科全書
古くから火防(ひぶせ)の神として朝野の信仰を集めた秋葉神社(あきばじんじゃ)の例祭。毎年12月15・16日に行われ、16日深夜には「弓の舞」「剣の舞」「火の舞」 ...
11. 悪魔の火祭
デジタル大辞泉プラス
高木彬光の長編推理小説。1958年刊行。大前田英策シリーズ。 2012年12月 ...
12. あさま‐ひまつり【浅間火祭】
日本国語大辞典
長野県松本市浅間温泉の御射山(みさやま)神社の祭礼。一〇月三日に家々で長さ七尺余りの松明(たいまつ)をつくり、若者たちがそれを持って町を練り歩き、川に投げ入れる ...
13. いみびのまつり【斎火祭】
国史大辞典
飯に用いられる。忌火庭火祭は『延喜式』に、毎月朔日に幣物を供え「宮主、内膳司に於て事を行へ」(原漢文)とあるほか大殿祭の後でも行う。京都市上京区の平野神社などで ...
14. いむこにわび‐の‐まつり[いむこにはび‥]【斎火庭火祭】
日本国語大辞典
〔名〕「いむびにわびのまつり(斎火庭火祭)」に同じ。 ...
15. いむびにわび‐の‐まつり[いむびにはび‥]【斎火庭火祭】
日本国語大辞典
)の翌日、毎月一日などに行なわれていた神事。*延喜式〔927〕二・神祇・四時祭「毎月朔日忌火庭火祭中宮東宮庭火准〓此。但忌火不 ...
16. きりび‐まつり【鑽火祭】
日本国語大辞典
宮中や伊勢神宮のほか、島根県八束郡の熊野神社、京都の平野神社や八坂神社などで行なわれる。忌火祭。斎火祭。 ...
17. くまのきりびのまつり【熊野鑽火祭】
国史大辞典
火」から出てきたものではあるまいかと思われる)、また、毎年の新嘗祭に相あたるものが本社のこの鑽火祭であり、天文十一年(一五四二)以後は神魂(かもす・かもし)神社 ...
18. くらま の 火祭(ひまつり)
日本国語大辞典
京都、鞍馬山の由岐神社で一〇月二二日(もと九月九日)に行なわれる祭。夜中に青少年が松明(たいまつ)を持って参詣し、神社では神輿(みこし)が御旅所(おたびしょ)に ...
19. 鞍馬の火祭
日本大百科全書
割り竹20本ほどを末広に挿したものに点火し、神輿担ぎが担いで庭上を七度半回り、夜明けまで繰り返す。実に豪快な火祭である。萩原龍夫 ...
20. くらま‐の‐ひまつり【鞍馬の火祭】
デジタル大辞泉
鞍馬寺境内にある由岐神社で、10月22日夜に行われる祭礼。若者が松明(たいまつ)をかついで回り、沿道に立て並べた松明の列に火をつけ、一面が火の海となった中を神輿 ...
21. くらまのひまつり【鞍馬火祭】
国史大辞典
で、一丈許の松竹の大松明を焼く。二基の神輿は手甲肩当で裸の男たちが担いで石段を下り未明に終る。火祭の由来は勧請の夜葦の篝火をたいた故事による。 [参考文献]山上 ...
22. 秋葉寺の火祭り[百科マルチメディア]
日本大百科全書
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23. 仙台七夕花火祭
デジタル大辞泉プラス
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24. たいまつ‐まつり【松明祭・炬火祭】
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25. 鎮火祭
世界大百科事典
》巻八の鎮火祭祝詞によると,〈水神匏(ひさご),埴山姫(はにやまひめ),川菜(かわな)を持ちて鎮め奉れ〉とあるから,古儀では水と土と川菜とが用いられたようである ...
26. ちんか‐さい【鎮火祭】
デジタル大辞泉
陰暦6月と12月のみそかの夜、火災を防ぎ、火のけがれを払うために宮城の四隅で卜部(うらべ)氏が火をつかさどる神を祭った神事。ひしずめのまつり。  ...
27. ちんか‐さい[チンクヮ‥]【鎮火祭】
日本国語大辞典
ちんかのまつり。*令義解〔718〕神祇・季夏条「季夏〈略〉〈鎮火祭〉」*風俗画報‐一六二号〔1898〕秋葉神社「大祭日には、社前に於て鎮火祭(チンクヮサイ)を執 ...
28. nbsp;ちんかさい【鎮火祭】
国史大辞典
も有力である。記紀の火神カグツチの誕生神話も鎮火祭の祭儀神話とされている。 [参考文献]武田祐吉『古事記説話群の研究』、青木紀元「火の神―鎮火祭の祝詞を中心に― ...
29. 鎭火祭(ちんかさい)【篇】
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 544ページ ...
30. 東京湾大華火(はなび)祭
デジタル大辞泉プラス
東京都中央区で行われる花火大会。東京湾晴海の臨海地区を主な会場とし、打ち上げ数は約1万2000発、70万人を超える人出がある。 2013年08月 ...
31. とば の 火祭(ひまつり)
日本国語大辞典
愛知県幡豆郡幡豆町鳥羽の神明社の火祭。二月の第二日曜日(古くは正月七日)の夕刻、山萱・真木・藤蔓・竹などを配した松明(たいまつ)に火をつけ、火勢によって天候・豊 ...
32. 鳥羽の火祭り
デジタル大辞泉プラス
愛知県西尾市(旧・幡豆町)の鳥羽地区に伝わる民俗行事。鳥羽神明社で2月10日(かつては旧暦1月7日)に行われる正月の神事。地区を東西にわけて「すずみ」と呼ばれる ...
33. 那智の火祭[百科マルチメディア]
日本大百科全書
和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦(なちかつうら)町 熊野那智大社 〓和歌山県 ...
34. なち‐ひまつり【那智火祭】
デジタル大辞泉
和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町の熊野那智大社で7月14日に行われる祭礼。那智の滝へ向かう扇神輿(おうぎみこし)を途中で大松明(たいまつ)が迎え、神輿を ...
35. はなび‐まつり【花火祭】
日本国語大辞典
〔名〕花火を打ち上げることを特色とする祭。また、観光的な花火大会の呼称。〓[マ] ...
36. 鎮火祭
世界大百科事典
→鎮火祭(ちんかさい) ...
37. 鎭火祭(ひしずめのまつり)【篇】
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 544ページ ...
38. 富士吉田火祭りロードレース
デジタル大辞泉プラス
ン大会。ハーフマラソン、10kmなど。8月下旬の北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社の秋祭り「吉田の火祭り」に合わせて開催される。 2011年10月 ...
39. ほしずめ‐の‐まつり[ほしづめ‥]【鎮火祭】
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〔連語〕令制で、神祇官が行なった祭祀の一つ。火災を防ぎ火のけがれを払うため、毎年陰暦六月・一二月の晦日の夜、宮城の四方の隅で卜部(うらべ)の行なったもの。現今も ...
40. ほしずめ‐の‐まつり【鎮火祭(り)】
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⇒ちんかさい(鎮火祭)  ...
41. まるおか‐ひまつり[まるをか‥]【丸岡火祭】
日本国語大辞典
〔名〕福井県坂井郡丸岡町の秋葉神社で、もと正月一四日夜に行なわれた左義長の神事。現在は廃絶。《季・新年》 ...
42. よしだ‐の‐ひまつり【吉田の火祭】
デジタル大辞泉
山梨県富士吉田市の浅間神社と諏訪(すわ)神社で、8月26・27日に行われる祭礼。富士山をかたどった御影(みかげ)と呼ばれる御輿(みこし)が渡御(とぎょ)したのち ...
43. 吉田の火祭
デジタル大辞泉プラス
間神社と諏訪神社の例祭で、毎年8月末に行われる、富士山の夏山登拝を締めくくる行事。26日の「鎮火祭」、27日の「すすき祭り」の二日間にわたり開催される。26日夜 ...
44. 吉田の火祭り[百科マルチメディア]
日本大百科全書
せんげんじんじゃ)とその摂社である諏訪神社(すわじんじゃ)の秋祭。富士山の山仕舞いの祭りで、鎮火祭ともいう。日本三大奇祭の一つとして知られ、26日夜には市中に立 ...
45. ひしずめ‐の‐まつり【鎮火の祭(り)】
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⇒ちんかさい(鎮火祭)  ...
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47. 神今食忌火庭火祭 (見出し語:忌火庭火祭)
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49. 鎭火祭【篇】 (見出し語:火)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 544ページ ...
50. 鎭火祭幣帛 (見出し語:幣帛【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 545ページ ...
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