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  10. 祈年祭

祈年祭

ジャパンナレッジで閲覧できる『祈年祭』の日本大百科全書・世界大百科事典のサンプルページ

日本大百科全書
祈年祭
としごいのまつり

字音で「きねんさい」と称することが多い。この「とし」とは五穀(ごこく)のなかでもっぱら稲をいうが、稲を主として他の穀類に至るまで成熟を祈る祭りである。わが国の社会文化は、本来この稲作中心の農耕社会を基盤として成立しており、春に年穀の豊穣(ほうじょう)を祈り、秋に豊作を感謝する祭り(新嘗祭(にいなめのまつり))を行うのが農耕祭祀(さいし)儀礼の基本であった。古代では祭政一致の語が示すように、政治(まつりごと)は生産物の収穫に基づいていたので、祭祀も重要な国家儀礼に位置づけられていた。律令(りつりょう)国家体制では、祈年祭は、2月に神祇官(じんぎかん)での国家祭祀となり、6月・12月の月次(つきなみ)祭、11月の新嘗祭とともに四箇祭(しかさい)として「国家の大事」とされた。『延喜式(えんぎしき)』神名帳に載せる3132座の神には、祈年祭にあたり幣帛(へいはく)が奉られる決まりであったが、律令制が弛緩(しかん)し、応仁(おうにん)の乱以後はまったく廃絶した。明治になって神祇官とともに、伊勢(いせ)神宮・宮中の祈年祭が再興され、また諸国の神社でも官祭として執り行われるに至り、皇室・国家から幣帛が供進(ぐしん)されたが、第二次世界大戦後は公的な性格は失われた。現在、各地の神社においては、祈年祭とは称さないが、祭りの性質上同様の神事が広く行われている。
[牟禮 仁]



改訂新版・世界大百科事典
祈年祭
としごいのまつり

年穀の豊穣と国家の安泰を祈る祭り。年のはじめに豊作を願う春祭と同意。訓読して〈としごいのまつり〉ともいう。その起源は律令以前にさかのぼる春の予祝儀礼にあると思われる。それは当時祈年祭にあたって,御年皇神(みとしのすめがみ)に〈白馬・白猪・白雞〉を献ずるのが例であったが,その理由について《古語拾遺》がきわめて呪術的な起源説話を載せているところから推察できる。しかし,祈年祭それ自体は古来の伝統的祭祀をふまえて,律令制確立とともに始まったと見てよい。祭日は,神祇令で仲春(2月)に執行とあるだけだが,しだいに固定化がすすみ,《延喜式》では2月4日に決まった。当時は,《延喜式》神名帳に載せるすべての神(全国3132座)に幣(みてぐら)を奉ったのであり,この祭りの意義と盛大さもここに見いだすことができる。この祭りは,神祇官の斎院(さいいん)に百官を集めて執行され,中臣氏が祝詞を奏し忌部氏が諸社の神主に幣を頒った。したがって,地方の神主や祝部(はふりべ)はこれを受け取りに参上し,それぞれ帰社の後祭祀を奉仕した。そのため遠隔地ではその実行が難しく,なかなか徹底しなかった。応仁の乱後廃絶し,その後,江戸の元禄期に再興をはかったができずに,1869年(明治2)に至って再興した。古儀再興に伴い,まず2月4日に宮中において頒幣の儀を行い,同17日に宮中三殿で祭祀を行った。また同日,伊勢神宮へは勅使を派遣して祭祀を執行するほか,全国の官国幣社でも大祭で奉仕した。1914年以後は府県社以下の神社へも頒幣が行われるようになった。第2次大戦後は占領軍の〈神道指令〉によって,一時期衰微したが,春祭と名を変えて存続し,最近では旧称に復した。伊勢神宮では現在も古儀による祈年祭が厳修されている。
[茂木 貞純]

[索引語]
春祭 祈年祭
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検索ヒット数 504
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検索コンテンツ
1. 祈年祭
世界大百科事典
祭と名を変えて存続し,最近では旧称に復した。伊勢神宮では現在も古儀による祈年祭が厳修されている。茂木 貞純 春祭 祈年祭 ...
2. きねん‐さい【祈年祭】
日本国語大辞典
也。官史記云。天武天皇四年二月甲申祈年祭。神祇令云。仲春祈年祭。欲〓令 ...
3. きねんさい【祈年祭】
国史大辞典
たねばならなかった。すなわち、明治二年(一八六九)二月、神宮の祈年祭が再興、翌三年、八神ならびに諸国の神社に幣帛が奉られ、祈年祭はおよそ四百年ぶりに再興した。し ...
4. 祈年祭(きねんさい)【篇】
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 1ページ ...
5. 祈年祭(としごいのまつり)
日本大百科全書
基づいていたので、祭祀も重要な国家儀礼に位置づけられていた。律令(りつりょう)国家体制では、祈年祭は、2月に神祇官(じんぎかん)での国家祭祀となり、6月・12月 ...
6. としごい‐の‐まつり【祈年祭】
デジタル大辞泉
奈良・平安時代、陰暦2月4日に神祇官・国庁で五穀豊穣を祈り行った祭。祈年祭。  ...
7. としごひ-の-まつり【祈年祭】
全文全訳古語辞典
〔名詞〕毎年春、農耕の初めにその年の豊作を神に祈る祭。古くから民間で行われていたが、国家的行事としては、陰暦二月四日、中央では神祇官、地方では国司の庁で行われた ...
8. きねんさい【祈年祭】[標準語索引]
日本方言大辞典
ぷーり / ゆーくい / ゆーんぐい ...
9. きねんさい【祈年祭】[標準語索引]
日本方言大辞典
ぷーり / ゆーくい / ゆーんぐい ...
10. 依祈年祭釋奠延引 (見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
文學部 洋巻 第2巻 1395ページ ...
11. 大神宮祈年祭【篇】 (見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 484ページ ...
12. 齋宮祈年祭 (見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 763ページ ...
13. 熱田神宮祈年祭 (見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第4巻 323ページ ...
14. 祈年祭加鍬靫幣(見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 370ページ ...
15. 預祈年祭國幣社 (見出し語:祈年祭【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 374ページ ...
16. 祈年祭(きねんさい)
日本大百科全書
祈年祭 ...
17. きねん‐さい【祈年祭】
デジタル大辞泉
⇒としごいのまつり(祈年祭)  ...
18. としごいのまつり【祈年祭】
国史大辞典
⇒きねんさい  ...
19. 祈年祭時獻白猪 (見出し語:猪)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 32ページ ...
20. 祈年祭時忌部班幣帛 (見出し語:忌部[神祇官])
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 10ページ ...
21. 祈年祭時近江國爲白猪 (見出し語:近江國【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 32ページ ...
22. 祈年祭觸穢大祓 (見出し語:大祓【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 24ページ ...
23. 祈年祭幣帛加鍬靫(見出し語:鍬)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 370ページ ...
24. 祈年祭齋戒 (見出し語:齋戒)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 8ページ ...
25. 祈年祭祭神 (見出し語:祭神)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 6ページ ...
26. 祈年祭時獻神馬 (見出し語:神馬【併入】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 31ページ ...
27. 祈年祭時中臣宣祝詞 (見出し語:中臣)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 10ページ ...
28. 祈年祭時獻白鷄 (見出し語:鷄)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 32ページ ...
29. 祈年祭祝詞 (見出し語:祝詞)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 19ページ ...
30. 祈年祭幣帛 (見出し語:幣帛【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 21ページ ...
31. 祈年祭祈豐稔 (見出し語:豐稔)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 3ページ ...
32. 祈年祭【篇】 (見出し語:祭)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 1ページ ...
33. 祈年祭幣帛加鍬靫(見出し語:靫)
古事類苑
神祇部 洋巻 第1巻 370ページ ...
34. じんぐう‐きねんさい【神宮祈年祭】
デジタル大辞泉
伊勢神宮で行われる祈年祭。近世までは毎年陰暦2月12日に、現在は2月17日に行われる。  ...
35. じんぐう‐きねんさい【神宮祈年祭】
日本国語大辞典
〔名〕伊勢神宮年中行事の大祭の一つ。明治一〇年(一八七七)から二月一七日を祭日とし、午前に外宮、午後に内宮の順で奉幣の儀が行なわれる。延喜式に規定され、古く平安 ...
36. 依觸穢祈年祭奉幣延引 (見出し語:觸穢【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 104ページ ...
37. 依觸穢祈年祭延引 (見出し語:觸穢【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第2巻 24ページ ...
38. 大神宮祈年祭【篇】 (見出し語:大神宮【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 484ページ ...
39. 大神宮祈年祭祝詞 (見出し語:祝詞)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 486ページ ...
40. 大神宮祈年祭幣帛 (見出し語:幣帛【篇】)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 494ページ ...
41. 大神宮祈年祭【篇】 (見出し語:祭)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 484ページ ...
42. 齋宮祈年祭 (見出し語:祭)
古事類苑
神祇部 洋巻 第3巻 763ページ ...
43. あお‐くも【青雲】
デジタル大辞泉
《「あおぐも」とも》青みを帯びた灰色の雲。 「―のたなびくきはみ、白雲のおりゐ向伏(むかぶ)す限り」〈祝詞・祈年祭〉 ...
44. あお‐くも[あを‥]【青雲】
日本国語大辞典
のれ神さび青雲(あをくも)のたなびく日すら小雨そほ降る〈作者未詳〉」*延喜式〔927〕祝詞・祈年祭(出雲板訓)「青雲(アヲクモ)の靄(たなひ)く極(きは)み」( ...
45. あおみ‐の‐はら[あをみ‥]【青海原】
日本国語大辞典
おうみ」の変化した語)青々とした広い海。青い大海原(おおうなばら)。*延喜式〔927〕祝詞・祈年祭(九条家本訓)「青海原(アヲミノはら)に住む物は、鰭の広き物、 ...
46. あか・る【明る】
デジタル大辞泉
山ぎは少し―・りて」〈枕・一〉2 光沢がある。つやがある。 「御服(みそ)は―・る妙(たへ)、照る妙」〈祝詞・祈年祭〉 ...
47. あかるたえ【明妙】
国史大辞典
『延喜式』祝詞、祈年祭に、「御服(みそ)者、明妙、照妙、和(にぎ)妙、荒妙に称辞竟へまつらむ」(原漢字)とあり、明妙・照妙とも白く光沢のある織物をいっているが ...
48. 県
世界大百科事典
奉仕するトモを貢じた山背の葛野県主,大和の菟田(うだ)県主などをその典型とする説。《延喜式》祈年祭祝詞以下にみえる,大王の供御料地化した大和の六御県(むつのみあ ...
49. あがた【県】
国史大辞典
生き残り、倭の六御県や山背の鴨県などでは、薪炭・酒・氷・菜などの貢上が行われた。『延喜式』の祈年祭祝詞などにも倭の六御県から甘菜・辛菜を献じたことが記されている ...
50. あきまつり【秋祭】
国史大辞典
農作の始めと終りを画する春秋の祭と解する説と、折口信夫のように、収穫祭、十二月の鎮魂祭、正月の祈年祭をもとは、一年の半分の聖なる季節の連続した祭とみなして、ここ ...
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