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安達太良山

ジャパンナレッジで閲覧できる『安達太良山』の日本歴史地名大系のサンプルページ

日本歴史地名大系
安達太良山
あだたらやま

〔範囲と名称〕

狭義には標高一六九九・六メートルの安達太良山(乳首山・甑明神)をさすが、広義にはこれを主峰として連なる連山の総称。箕輪みのわ(一七一八・五メートル)鬼面きめん(一四八一・六メートル)くろがね(一七〇九・三メートル)船明神ふねみようじん(一六四一・二メートル)和尚おしよう(一六〇一・七メートル)薬師やくし(一〇九二メートル)まえヶ岳(一三四〇メートル)などがおもな山名である。狭義の安達太良山山頂は郡山市に属する。連峰とその裾は二本松市・安達郡大玉おおたま村・郡山市・福島市・耶麻郡猪苗代町にまたがる。古代には「安達嶺」(日本紀略)・「安太多良の嶺」(万葉集)などとよばれていたようであるが、元禄六年(一六九三)の文書(大玉村史)や大玉村の相応そうおう寺の記録(相応寺蔵)に「岳山」、「松府来歴金華鈔」では「安達太良岳」、「相生集」には「安達太良山」とある。「安達郡誌」は「俗二本松岳、西岳、安達岳、安達太良峰、岳山又大華ともいへり」と記す。「万葉集」巻一四に「安太多良の嶺に臥す鹿猪ししのありつつも吾は到らむ寝処な去りそね」「陸奥の安太多良真弓弾き置きてらしめきなば弦着つらはかめかも」とみえる。巻七には「陸奥の安太多良真弓弦着けて引かばか人の吾を言なさむ」とある。

〔歴史と信仰〕

「日本紀略」寛平九年(八九七)九月七日条に「授陸奥国坐正六位上飯豊別神、安達嶺禰宜大刀自神、安達嶺飯津売神並正五位上、従五位下小陽日温泉神正五位下」とみえるのが山名と神名の初見。これによると正六位上の飯豊別神である安達嶺の禰宜大刀自神と飯津売神は正五位上を授けられ、従五位下の小陽日温泉神は正五位下を授けられている。安達嶺のこの二神が飯豊別の神である。「延喜式」神名帳に安積あさか郡三座中の飯豊和気いいとよわけ神社がそれであろう。安達嶺は安達太良山で、安達嶺の神は安達太良の神・神社ということになろうか。「松藩普度記」によると、「安多羅大明神社旧号甑明神ハ岳嶺上ニ在」とあり、安達太良神社の旧号は甑明神といわれたらしい。「松府来歴金華鈔」も「抑安達太良峯の甑明神と申ハ飯豊別の神社と申」と記す。安達太良明神の性格の一つは豊穣をもたらす農業神であろう。麓の田畑を潤す安達太良川・杉田すぎた川・原瀬はらせ川などは安達太良山を水源とすることも安達太良の神の性格形成要素の一つであろう。安達太良山の中腹の残雪は「粟まき法師」といわれ、安達郡の本宮もとみや地方でこの形が見えるようになると、粟をまいたと伝える。寛保元年(一七四一)の俳諧集「粟蒔集」はこの雪形にちなみ、図も挿入されている。

農業神とは別に、温泉神もこの山に祀られる神の一つではないかと思われる。前掲「日本紀略」にみえる「小陽日温泉神」がそれである。「三代実録」貞観五年(八六三)一〇月二九日条に「小結、温泉神等並授従五位下」とみえ、飯豊別神より早く登場する。安達太良山中には鉄温泉・だけ温泉(現二本松市)、会津側の沼尻ぬまじり温泉(現猪苗代町)などの温泉が多く、安達太良山は九世紀中頃から温泉神を祀る温泉の山でもあった。とくに深堀ふかぼりは現岳温泉の元の湯場であった。

一方、安達太良山には仏教寺院が認められる。現大玉村の新義真言宗安達太良山相応寺は、縁起によると大同二年(八〇七)徳一が眉岳(前ヶ岳)に建立。その後宝徳四年(一四五二)畠山持清は長勝に命じて亀山に移し、さらに永禄三年(一五六〇)実弁のとき現在地に移したという。本尊は薬師如来で、宝徳四年の紀年銘がある。相応寺の文化一一年(一八一四)の記録に「岳山は往古より相応寺一山境内之場所」と記し、毎年岳山へ登るとする。「嶽へ登山之節支度」によると安達多羅明神の棟札一枚、湯前薬師尊棟札一枚、中湯坪の板札一枚、番所の板札一枚、表木戸湯元繁昌門札一枚、各小屋中へ配る御影と巻数札(各一二枚)などが用意された。小屋とは湯小屋であろう。また文覚の修行場と伝える遠藤えんどう(現大玉村)についても相応寺持で、四月八日の山開きから八月八日の御山留まで相応寺は山伏らを常置した。山開きには大梵天三本・清川之の幣一本・注連縄・山の法度などを用意した(前掲記録)。遠藤滝への道の途中の石造不動明王に「奉開立不動尊、別当相応寺泰円、開僧正福寺泰誠」と刻され、「女人堂」とある。元治元年(一八六四)の碑には「玉井正福寺住職法印泰誠」とある。また滝にある洞窟手前の嘉永二年(一八四九)の石灯籠には「家内安全灸満足」「正福寺泰誠」とある。大玉村の真義真言宗正福しようふく寺は相応寺実弁が開いた寺である。現安達町の真言宗豊山派安達太良山円東えんとう寺も大同二年徳一の開基で、安達太良山麓に寺があり、箕輪貞義が薬師を勧請した頃は相応寺を学頭、円東寺を別当にしたと伝える(相生集)

〔信仰の範囲〕

安達太良山には一般庶民が登拝したことを示す史料が見付からない。そこで、安達太良神社の所在地を信仰の範囲とし、「安達安積両郡寺院来暦」「松藩普度記」などの記録と「安達太良山」(木村実三著)によってみると、信仰の範囲は現在の本宮町・二本松市・大玉村・安達町などとなろう。

〔登拝ルート〕

近世の登拝ルートははっきりしないが、二本松市塩沢しおざわ温泉を通り鉄山の下を経て登るコース、おく岳を通り同市勢至せいし平を経て登るコース、遠藤滝から登るコースなどがあるという。

〔火山〕

活火山で、大同年間・天文年間(一五三二―五五)・文化九年(一八一二)に活動した記録や口碑が残る。外輪山に囲まれた直径約五〇〇メートルのぬまたいら火口は江戸時代初期までは湖であったが、何回かにわたって決壊し、砂原となった。明治三三年(一九〇〇)大規模なガス爆発が三回あり、沼ノ平に長径三〇〇メートル・短径一五〇メートル、深さ四〇メートルほどの新しい爆裂火口がつくられた。この爆発で火口底にあった六棟の硫黄精練所は跡形もなくなり、七七名が死亡した。沼ノ平の新火口はその後土砂により埋没し、現在では見分けられない。沼ノ平の水は西方に火口瀬をつくり、沼尻川となって流下し、途中溶岩の絶壁を落下して比高五〇メートルの猪苗代町白糸しらいと滝を形成する。

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おうし座のα(アルファ)星の固有名。アラビア語で「後に続くものAlDabaran」の意で、同じおうし座のプレヤデス(すばる)よりも少し遅れて日周運動していることに由来する。日本でもいくつかの地方で「すばるの後星(あとぼし)」とよばれている。冬の夜空で
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