加計(かけ)学園問題で、官邸からの圧力があったと爆弾証言をした前川喜平(きへい)前文科省事務次官が、「風俗店通い」をしていたと、官邸のリークであろうと思われる情報をデカデカと報じた読売新聞は、自ら安倍のポチ新聞であることを公言して世の顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 この“マスゴミ”的所業は、末代まで読売新聞の恥として語り継がれるであろう。

 だが、ほかの大メディアも似たり寄ったりで、読売に石をぶつけることができるメディアなどないのが、日本のジャーナリズムのお粗末な実態である。

 『週刊ポスト』(7/14号、以下『ポスト』)は、元祖・安倍ポチ新聞である産経新聞が運営する神戸「正論」懇話会の講演で、安倍首相が加計学園問題について、「私の友人だから認めてくれ、という訳のわからない意向がまかり通る余地などまったくない」と潔白を主張し、反省も国民への真摯な謝罪もなかったと報じている。

 そもそも論でいえば、国家戦略特区というのは安倍首相が言い出し、その内容を決める諮問会議の議長が安倍なのだから、安倍の「意向」が働いているのは至極当たり前なのである。

 「私がすべてを勘案して加計学園に決めた。文句があるか」と言えば済む話である。疚(やま)しいところがあるから説明もできずに逃げ回っているのだ。

 安倍政権の支持率も急降下し、崩壊する危険水域といわれる30%を切るのも時間の問題であろう。

 一強と言われてきた安倍政権も追い詰められているように見えるが、そうさせないように支えているのもメディアだと『ポスト』が批判している。

 それは、安倍政権の「政府広報費」欲しさのためだというのである。

 都議選告示日から朝日、読売、毎日をはじめ全国の新聞70紙に「弾道ミサイル落下時の行動について」という黄色と赤の派手なレイアウトの政府広報が掲載された。

 政府の全国瞬時警報システム「Jアラート」でメッセージが流れたら、屋外にいる場合は「できる限り頑丈な建物や地下に避難する」、建物がなければ「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」という、子どもだましのバカバカしいことが書いてあるだけだが、これに加えて、全国の民放43局でも同じ内容のテレビCMが流れ、これに支払われた政府広報という税金は3億6000万円にもなると『ポスト』が報じている。

 同じような時期に流れた「男女共同参画週間」の政府提供テレビ番組を合わせると、メディアに流れたカネは約4億円にもなるという。

 都議選の自民党支援、加計学園問題隠しであること間違いない。上智大学新聞学科の田島泰彦教授は、弾道ミサイルの政府広報は、いたずらに国民の危機を煽って不安にさせ、「外敵」の存在を強調する問題の多いやり方で、国民のナショナリズム的な感情を高め、政権が抱えている様々な疑惑から、国民の目をそらせるのが狙いではないかと批判する。

 事実、この一連の政府広報が流された後に行なわれた前川前事務次官の2回目の会見は、「なぜかワイドショーでもほとんど取り上げられることはなかった」(『ポスト』)

 さらに都議選の最中に、日本テレビ系『スッキリ!!』(26日放映)でコメンテーターの橋本五郎・安倍ポチ読売新聞特別編集委員がこう話したというのだ。

 「地方自治は二元代表制。互いにチェックし合ってほしいと住民が知事を選び、都議会議員も選ぶ。あまり知事与党ばかりになってしまうと、チェック機能がなくなってしまう恐れがある」

 一見正論風だが、読売の人間が言うと眉に唾を付けたくなる。

 テレビ局はスポンサーからの広告料が減り、新聞は発行部数が落ちて経営はどこも苦しい。政府広報は取りっぱぐれがない確実な収入源だから、メディアにとっては美味しいが、そうなれば、政権批判がやりにくくなることは当然であると、前出の田島教授は語る。

 私なりに、現在のメディアを色分けしてみるとこうなる。安倍のポチメディアは、産経新聞と読売新聞。経済紙という新聞の性格上、政権寄りにならざるを得ない日経もここに入る。

 毎日新聞が是々非々の中間で、やや反安倍寄りなのが朝日新聞と東京新聞であろう。テレビ局は、政権の管轄下にあるNHK、民放はフジテレビ、日本テレビ、テレビ東京がポチテレビ。

 中立がTBSで、朝日新聞傘下だが、このところ急激に安倍寄りに右旋回しているテレビ朝日もポチと言っていいだろう。いまのところテレビは安倍の思うがままで、真っ当な政権批判など言える局はどこもない。恥ずかしいことだが。

 政府広報予算の話に戻ろう。『ポスト』によれば、この予算は、民主党政権時代に年間約41億円(12年度)まで減らされたが、安倍政権が予算編成を手掛けた14年度は、「消費税率引き上げに国民の理解を深める」という名目で、前年から21億円増の65億円になった。

 消費税を8%に引き上げた15年度には、この消費税宣伝分を削るどころか、「政府の情報発信強化」という名目で約83億円に増額し、わずか3年で2倍にしたのである。

 その後は83億円に据え置かれているが、予算書を子細に見ると、この予算以外に、「マイナンバー制度の周知・広報」に約3億5000万円

 「原子力利用に関する適切な情報発信」に約2億5000万円などが計上され、官邸の実質的な広報予算は90億円を超えていると『ポスト』は指摘する。

 元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資(やすし)は、安倍は第一次政権の時、メディアを敵に回して支持率が激的に下がったため、今回は萩生田光一(はぎうだ・こういち)官房副長官を中心に、メディア対策に力を入れてきた。広告費でメディアを抑え込むというのが安倍官邸の共通認識だという。

 覚えているだろう。消費税を8%に引き上げた時、政府広報予算が21億円も投入され、国民の9割方が反対していたにもかかわらず、新聞とテレビが挙って「増税は必要」というキャンペーンを張ったことを。

 消費税増税で景気が冷え込むと今度は、消費税率10%引き上げの1年半延期を発表し、その是非を問うというまったく大義のない解散を安倍が行なったのだ。

 その際、政府は全国の新聞70紙とテレビCMで「増税延期」の広告を流した。それによって安倍自民は大勝したのだが、メディアが安倍に加担したといって言い過ぎではないだろう。

 15年の安保法案国会では、この年の新聞広告は約17億円。法案審議が佳境に入った6月から9月の強行採決にかけて全国紙に重点的に掲載された。

 こうした効果は絶大で、消費税8%増税の直後、安倍内閣の支持率が57%から60%に上昇するという不可解な動きをし、安保法案の強行採決の後は、朝日新聞の調査では35%(15年9月)まで落ち込んだが、翌月には42%まで持ち直している。

 今回、森友学園、加計学園問題などで支持率を落としている安倍政権だが、『ポスト』は、この流れを変えるために、安倍が考えているのは「憲法改正特需」であろうと読む。

 憲法改正案が国会で発議され、数で勝る与党が賛成すれば、国民投票を実施する。そうなると改憲賛成派と反対派が、それぞれ国の予算を使って新聞やテレビに意見広告を出すことができる

 その金額を総選挙の政党広告予算程度とみると100億円規模になる。さらに個別の政党や民間団体が自由に意見広告を出せるから、新聞、テレビには空前の「改憲特需」となるのである。

 加計学園スキャンダルが萩生田や下村博文(しもむら・はくぶん)元文科相など、安倍の側近に広がる中、安倍は野党が要求している臨時国会の召集を拒否し、加計問題もそのうち吹き消すことができるとタカをくくり続けているのは、「政府と大メディアが政府広報と改憲の広告費というカネをつかみ取りにするという共同謀議を練っているからに他ならない」(『ポスト』)

 7月11日から悪名高い「共謀罪」が施行された。悪事をしようと考えただけで逮捕できるというとんでもない悪法だが、どうせなら逮捕第1号は、安倍首相と、彼と謀議を図っているメディアのトップたちにしてもらいたいものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 いまさらながらだが「女は怖い」。ピンクモンスター・豊田真由子議員を超える女性は、今年は出てこないだろうと思っていたら、まだまだいました。松居一代(まつい・かずよ)と船越英一郎の離婚騒動で、松居が動画を駆使して、亭主の浮気や、バイアグラを使っても役に立たない下半身のことを暴きたて、日本中の爆笑と嘲笑を買っている。一度は愛し合った男をここまで貶(おとし)めることができるとは、女は謎? いやモンスターである。

第1位 「船越英一郎が松居一代に離婚調停<全真相>」(『週刊文春』7/13号)
第2位 「『豊田真由子代議士』のヤメ秘書匿名座談会──もっと事情が知りたい!」(『週刊新潮』7/13号)
第3位 「ビートたけし2017上半期『ヒンシュク大賞』を決定するぜっての!」(『週刊ポスト』7/21・28号)

 第3位。ビートたけし恒例の上半期「ヒンシュク大賞」だが、今回は誰の目にも豊田真由子代議士センセイが断トツだから、たけしも言うことがなくて困っただろう。

 「あまりにテレビの自主規制がひどいんで、オイラも『テレビじゃ言えない』なんて本を出したけど、豊田センセイのおかげで流れが変わったね。あれ以来、ハゲネタはタブーじゃなくなった。センセイが復活したら、国会で『ポコチン』『コーマン』を連呼してもらって、この国の『表現の自由』を死守して頂きたい!」

 ヒンシュク大賞は豊田真由子と不倫で名をはせた中川俊直センセイに決定! たけし曰く、「自民党代議士2回生は、トンデモナイ逸材揃い」だそうだ。

 第2位。今年最大のモンスターになった豊田真由子議員だが、『新潮』は、彼女の事務所を辞めたヤメ秘書たちの匿名座談会をやっている。新たな豊田センセイのお言葉はこうだ。
 「赤信号でも止まるな」「世の中、ホントにバカばっかり」「新しいタイプのおバカさんたち」「このチョギっ!」(有史以来誰も使ったことのない新しいタイプの罵り言葉だそうだ)
 国会では「弱者のために」なんて言っているが、差別意識の塊(かたまり)だとヤメ秘書は語っている。厚労省出身だから障害者施設を回ることが多く、表向きは弱者に寄り添っている風を演じるが、裏では全く違う。

 「施設で障害者が作ったお菓子なんかをもらって帰ってくると、『こんなの、中に何が入ってるか分かったもんじゃない!』とか言って、絶対に口をつけようとしませんからね。この行動が、彼女の全てを物語っています

 ここまでバラされたら、彼女が次の選挙で当選することはあり得ないだろうが、ちょっぴり寂しい気がするのはなぜだろう。

 第1位。松居一代(60)とは私が『現代』編集長の頃だから、20年ぐらい前に会ったことがある。そのときは、彼女の子どもがひどいアトピーで、アトピーを治すためにいろいろの病院を回り、あらゆる本を漁って研究していると、熱く語っていた。
 私の子どももアトピーがひどく、その後、いろいろアドバイスをしてもらったと記憶している。
 離婚した後で、船越英一郎(56)と再婚する前だったが、思い込みが激しく、こうと思ったら何が何でも突き進んでいくタイプで、こういう女性と結婚した男は大変だろうなと思った。
 船越のことはほとんど知らないが、父親の船越英二は好きな俳優だった。日本のマストロヤンニといわれた美男俳優だったが、1959(昭和34)年、大岡昇平原作、市川崑監督の『野火』に主演して、極限状況の敗残兵を演じ映画賞を総なめにした。
 親父に比べて息子は線が細い気がする。そうした男は松居のような気の強い女に魅かれがちだが、この結婚は当初から波乱含みだったと『文春』が報じている。

 「船越家は由緒ある家柄で、英一郎は三十四代目の当主。父で昭和の名優だった英二さんは、跡継ぎとしてひとり息子の英一郎に大きな期待をかけていたこともあり、バツイチで子連れの松居との結婚には猛反対。英一郎の両親は結婚式に参列せず、英二さんは〇七年に亡くなるまで一度も松居と会うことはなかったのです」(船越家の知人)

 松居によれば、船越が両親に松居と結婚したいと言うと、父親は日本刀を抜いて「親を捨てて女を取るのか」と言ったそうだ。だが、親に勘当されても愛を貫くという生きかたもある。
 2001年に結婚して“円満”そうに見えたが、2011年ごろ、船越が自宅から徒歩1分のところに「支度部屋」を購入した頃から、2人の間に波風が立ち始める。
 そして15年に、船越側から離婚の意思を伝え、彼女側は拒否したため完全な別居状態が始まったという。
 船越が離婚を望んだ最大の理由は、松居の「執拗なDV」だそうだ。船越と他の女性とのメール履歴を見つけた松居は、携帯電話を沸騰した鍋に入れて破壊。さらには「離婚する」と言って暴れ出し、ハンガーで船越の頭を殴りつけ、台所から持ち出してきた包丁を船越に向けたそうだ。
 椎間板ヘルニアを患って入院していた船越に馬乗りになって、「さっさと電話をよこせ」と怒鳴り、胸ぐらを掴んでベッドに叩きつけた。
 船越が知り合いの女性と他愛のないメールを送っていたのを松居が発見して激昂し、船越の頭を10回以上殴りつけたなどなど、すさまじいDVがあったと、船越の知人が話している。
 07年、船越の父・英二が亡くなった時、松居は船越に「やっとくたばったか、クソじじい。罰が当たったんだ、ざまぁみろ」と言った。
 松居は自著の出版記念会で、亡くなった川島なお美と船越が付き合っていたことを暴露し、非難された時も、松居は「死んだ女がどうなろうと自分には関係がない。本が売れればいいのよ」と言い放ったという。
 松居という女性はバカではないから、彼女にも言い分がある。船越が糖尿病を発症したとき、おカネより健康が大事だから治療を受けるよう言ったが、健康食品のCMが決まったばかりだったから頑として受けなかった。
 糖尿病があるから、船越とは10年近くセックスレスだが、私は船越を愛していたから、手をつないで寝るだけで幸せだった。糖尿病の合併症で2度顔面麻痺を起こし、激ヤセしたのが心配だったという。
 浮気されるより船越の身体が心配だった。しかし船越はバイアグラを大量に飲んで不倫していた。それも松居の親友と。
 松居は2人が密会をしているところを突き止め、そして彼女はこう決めたという。

 「私は絶対に船越英一郎を許さないと。彼は私をとんでもない悪妻に仕立て上げて、自分を被害者のようにして離婚しようとしている。(中略)絶対に嘘をつかないというのが私の信念です。だから今回、きちんと(『文春』に=筆者注)お話ししたのです」

 両者の言い分は真っ二つ。松居は自分のブログで動画を配信し、船越の不実を詰り自殺すると語ったりしている。
 松居は中途半端な妥協はしないだろう。船越には同情しないが、怖いだろうなこういうカミさんを敵に回したら。結婚は人生の墓場とはよく言ったものである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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