学校法人「加計(かけ)学園」「森友学園」を巡る問題では、官僚による政治家への「忖度(そんたく)」が取り沙汰された。そこで注目されたのが、内閣官房に設置された「内閣人事局」の存在である。

 内閣人事局は、中央省庁の幹部人事を一元管理することを目的に2014年に発足した。各府省の次官、局長、審議官など幹部職員約600人のポストを管理する。

 従来は、各府省が局長級以上の人事案を作り、これを首相官邸が追認する形をとっていた。その結果、幹部人事は「情実人事や年功序列の順送り人事、ポストの持ち回りのたすき掛け人事などが横行した」との指摘がある。

 導入の狙いはそうした幹部人事を官邸・政治主導に切り替え、より戦略的、スピード感のある政策を遂行することにある。

 しかし、その弊害が出てきた、とされるのが両学園を巡る問題だ。「官僚は官邸ににらまれたら出世できない」ため、「総理、官邸のご意向」を忖度した行政がまかり通る、というわけだ。

 内閣人事局を差配しているのは内閣人事局長である。現在の局長は萩生田光一(はぎうだ・こういち)官房副長官。安倍首相の側近政治家だ。こうしたことから野党は「加計学園が国家戦略特区への獣医学部新設を認められたのは、学園と関係がある安倍首相や萩生田副長官の意向を内閣府が忖度した結果だ」と追及している。

 何事にも光と影がある。「政治主導」の美名の下、行政が歪められたのか。内閣人事局のあり方が問われているのは間違いない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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