地方自治は「民主主義の学校」と言われる。その地方自治の根本とも言える地方議会が、存亡の危機に追い込まれているという。

 高知県大川村が村議会を廃止し、「町村総会」の設置を検討している。

 町村総会は、有権者が一堂に会し、予算案などを審議するものだ。古代のアテネやローマで行なわれた「直接民主制」を地で行く形だが、人口減少による地方の衰亡を象徴する話ではないか。

 大川村は、高知県の北部に位置する山村である。人口減少や高齢化が進んで人口は406人(2016年10月末現在)まで落ち込んだ。高齢化率(65歳以上が占める割合)も43%に達している。村議会の定数はたったの6人。これでは十分な審議もままならない。議員のなり手不足も深刻という。これまで大川村は周辺自治体との合併を検討したが、まとまらなかったという。

 そうした自治体のために、地方自治法は、「町村は、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」などと定めている。ただ、地方自治法下の設置例は1950年代に東京都の旧宇津木村(現、八丈町)があるに過ぎない。

 人口減少と高齢化の進展は何も大川村だけの話ではない。今後、同じように町村総会を選択する自治体も増えるに違いない。

 ただ、一般の町村民による総会で果たして十分に行政をチェックできるだろうか。議員という「プロの目」で監視することが肝要ではないか。町村総会はあくまで窮余の一策であり、何か別の手立てが必要だ。そうでないと、町村長の鶴の一声で何事も決まる「独裁政治」がはびこる可能性がある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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