ふだんからインターネットをよく見ている。政治の問題も多様な意見を読んで、しっかりした見地に立っているつもりだ。……はたして、本当にそういえるだろうか。あなたのこれまでの検索履歴をもとに、あなたの思想に反する記事が排除されているとしたら? だがこれは、少しコンピュータに詳しい人にとっての「常識」なのだ。

 Googleなどの検索エンジンは、利用者のために「最適化」が行なわれている。本来は必要な情報が上位に来るように備えられた機能だが、これはフィルターをかけている状態といっしょだ。異なった価値観の人がいても、自分のパソコンの中ではそれが事実上、押しのけられてしまう。やがて単なる検索結果が泡のようにユーザーを包み込み、都合の悪い意見を遮断して、あたかもネットに支配されているかような構図となってしまう。『閉じこもるインターネット』(日本語版は早川書房刊)などの著書で知られるイーライ・パリサーは、こうした危険性を「フィルターバブル」と呼んだ。

 ショッピングサイトなどでは、これまで購入したものからおすすめ商品を紹介してくるので、仕組みに気づきやすい。だが同様のことは、検索エンジンやSNSのタイムライン上でも行なわれているのだ。これは、自分と同じ考え方が世の中の大勢であるという思い込みにもつながってくるが、実際は閉鎖空間に囚われただけかもしれない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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