安倍晋三首相は、2017年1月26日の予算委員会で、「敵基地攻撃能力」の保有を検討する意向を示した。

 敵基地攻撃能力は、ミサイル攻撃を受ける前に相手国のミサイル発射基地などを攻撃する装備能力のこと。政府はその保有については、「他に自衛手段がない場合に限り、憲法上許される」との立場だ。

 ただ実際のところ、「専守防衛」の方針の下、自衛隊はその能力を保有していない。

 一方、現状の日本のミサイル防衛システムは、多数のミサイル発射に対応できていないのが実情だ。北朝鮮は2017年3月6日、日本海に向け弾道ミサイル4発を同時発射、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。北朝鮮の核・ミサイルの脅威が「新たな段階」になったのは確実だ。

 日米両国は、自衛隊は「専守防衛」に徹する「盾」、米軍は報復攻撃を加える「矛」と役割分担してきた。「矛」に相当する相手基地への攻撃は原則として米軍に委ねてきたわけだ。

 首相が表明した「敵基地攻撃能力の保有の検討」の背景には、「北朝鮮による脅威がここまで増したのは看過できない。ここで政策転換し、自前の攻撃力を持つべきだ」との思惑がある。

 具体的には敵のミサイル基地や核施設をターゲットに、巡航ミサイルでの攻撃、あるいはステルス機能を持つ戦闘機での爆撃が想定される。ただ現在の自衛隊はこれに必要な装備体系を保有していない。また攻撃目標の探知では米軍の協力が欠かせない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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