その年の新語をクローズアップする企画といえば、『ユーキャン新語・流行語大賞』が有名だ。しかし、良くも悪くも選考委員会のセンスが独特で、ときどき「本当に使われているコトバなの?」という巷の反応も生み出すことになる(だから、企画の話題性という意味では大成功だ)。

 一方、国語辞典や教材の出版で知られる三省堂も、『辞書を編む人が選ぶ「今年の新語」』を発表している。「今後の辞書に掲載されてもおかしくないもの」(ホームページより)を募って、その中から、『新明解国語辞典』編集委員の倉持保男氏ほか辞書の専門家が選定した。単なる出版社のキャンペーン企画という以上に力の入ったイベントで、今後も注目度は増すに違いない。

 2016年の大賞は「ほぼほぼ」、第2位は「エモい」、第3位は「ゲスい」となっている。一過性の話題の言葉は避けられるため、多少地味さは感じられる。だが全体として、たしかによく耳にする語が多いというのが筆者の印象だが、いかがだろうか。「辞書に載ったら・載るかも」という視点が、企画に納得感を与えている。

 ちなみに、「『新明解国語辞典』風」として発表された「ほぼほぼ」の説明は、以下の通り。

“問題となる事柄に関して、完璧だというわけにはいかないが、こまかい点を除けば、その人なりに全体にわたって妥当だと判断される様子。〔「ほぼ」の口頭語的な強調表現〕 「工事は-予定どおりに進んでいる/不正融資のからくりが-明るみに出された」”
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
ジャパンナレッジとは 辞書・事典を中心にした知識源から知りたいことにいち早く到達するためのデータベースです。 収録辞書・事典80以上 総項目数480万以上 総文字数16億

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。 (2024年5月時点)

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る