大金持ちは日本中にいるのだろうが、ところ変われば何とやら、関西の大金持ちはスケールも歴史も東京のような俄成金とは違うと『週刊現代』(1/28号)が特集を組んでいる。

 奈良県・橿原(かしはら)市今井町にある今西家は、神代(かみよ)の昔から今まで連綿と続いている名家だというからすごい。

 当主の今西啓仁氏(57歳)がこう語る。

 「神武天皇が大和東征を行ったときにこの地を統治していたのが磯城彦(シキヒコ)でした。神武天皇は降伏を促しますが、兄磯城(エシキ)は立ち向かい、逆に弟磯城(オトシキ)は降伏することを提案します。結局、兄磯城は神武天皇に滅ぼされましたが、弟磯城は服従したため、その家系が残った。それが現在の今西家につながっているのです。弟磯城から数えれば、100代以上になります。出雲大社の千家(国麿)さんが85代なので、それよりも古い(笑)」

 今西家はその後、「十市県主(といちあがたぬし)」を名乗り、今井町の自治を担ってきた

 「江戸時代はほんまもんの自治都市として栄えました。『海の堺、陸の今井』と並び称されるほどに。明治時代になると、自治権こそなくなりましたが、私の5代前の今西逸郎に市中取締役をしてほしいということで、今西家は引き続き、行政に携わりました。
 そのときのことです。この今井町に鉄道の駅を置きたいと明治政府が言ってきたそうです。神武天皇陵や橿原神宮にも近いので、天皇も乗られる列車の駅として。今の畝傍(うねび)駅ですね。しかし、うちの今西逸郎は今井町に作ることに反対したんです。江戸時代から続く、環濠(かんごう)のある町並みがめちゃくちゃになると思ったんでしょうね。それによって今井町の近代化が遅れたと当時の町の人からは非難轟轟(ごうごう)でしたが、今となっては感謝されていますよ」(今西氏)

 皮肉なことに、今西家は今井町に1000坪もの邸宅を所有してはいたが、決して裕福というわけではなかった。だからこそ、江戸時代から続く邸宅を改築することなく、当時のまま大事に使い続けてきた。それによって、57年に「今西家住宅」は国の重要文化財に指定されたというのである。

 95年頃、今西家が守ってきた今井町の町並みがユネスコの世界遺産に登録されるチャンスがあったという。

 だが、その頃は世界遺産について日本人の多くがあまり興味を持っていなかった。ユネスコが橿原市に対して登録したいというのを、断ってしまったそうだ。

 「その代わりに登録されたのが、岐阜の白川郷だったとのことです」(同)

 だが名家なりの苦労はあるようだ。

 「正直に言いまして、(今西家住宅を活用して)自分だけ儲けようとしたら、様々なオファーがあるのは事実です。(中略)ただ、たんに観光客が増えてもありきたりの町になってしまいます。それだと、これまで今井町を守ってきた先人に顔向けできませんからね。私一人の考えでどうこうしたらいけないと考えています。時代を越えて、今西家は自らを盾にして護るべきもののために死に物狂いで戦ってきました。今井町の歴史はまだまだ続くのですから」(同)

 関西の資産家の中には中央、つまり東京の価値観に背を向けている者も多いという。名高い京都の冷泉(れいぜい)家25代当主冷泉為人(ためひと)氏もそんな一人だそうだ。

 「冷泉家は平安時代から800年も続く『和歌の家』であり、伝統文学を守り続けてきました。平安・鎌倉時代の歌聖、藤原俊成や定家らの和歌集や歴史書など、冷泉家に伝わる典籍類は国宝5件、重要文化財47件をはじめ、2万点を超えます。戦後の50年間は相続税などの問題が重くのしかかって、先代夫婦もものすごく苦労されました。あまりにも固定資産税が莫大になってしまうため、先代は公益財団法人『冷泉家時雨亭(しぐれてい)文庫』を作り、重要な歴史資料の管理をなんとか永続していこうとしているわけです」(冷泉氏)

 冷泉氏は、日本の戦後教育の問題についても一家言ある。その矛先は安倍晋三総理にも容赦なく向かうのだ。

 「今、日本では歴史や文化をないがしろにして、それ以外のところに価値を置いています。安倍さんも目先の利益のことばかり言っています。そうした発想からは何も生まれません。おカネはもちろん大事ですが、目先のおカネにとらわれては、歴史や文化を作れない。 グローバル化の進展と戦後70年の学校教育で自由と平等の価値観を大事にするようになり、反面で文化や伝統が軽視されるようになってしまった。そうしたことをわかっている日本人ははたしてどれくらいいるのでしょうか」(同)

 「昔の名家は地域の発展のためにインフラを整備したり、文化を作ったりしてきた面があります。しかし、今ではそれを行政の役割としてしまいました。自由や平等ばかり主張すると、多数決で多く手が挙がったほうにおカネを使うようになっていく。歴史や文化の大切さを理解している人は、今や1割くらいしかいないでしょう。そして多数決の結果、歴史や文化には税金は使われないようになります。
 ホリエモン(堀江貴文氏)にしても村上ファンド(の村上世彰氏)にしても、法律ギリギリのところでおカネを稼ぐのは上手かったのでしょうが、その使いかたがまずかった。国や地域のためにおカネを使うこともなければ、米国の富豪のように寄付をするわけでもない。自由と平等を教えるだけで、義務を教えてこなかった戦後教育の問題ですね。今の日本はおカネのことばかりで品格がなくなりました」(同)

 痛い指摘である。

 しかし、このような名家ばかりではない。苦労した末に36歳の若さで巨万の富を手にした社長もいる。伊與田美貴(いよだ・みき)氏がそうだ。

 「27歳で結婚、28歳で出産したものの、31歳で離婚をして人生がガラリと変貌しました」(伊與田氏)

 OLを経てフラワーデザイナーとして起業したが、認可外の保育所に稼いだおカネを全て吸い取られる日々だった。

 ジュースを飲みたいという娘に缶ジュース1本買ってやることさえできず、死のうと思ったこともあるという。

 しかし、そこが関西人。ちなみに大阪府の自殺する率(人口10万人あたり)は全国で最も低いそうだ(15年、警察庁発表)。

 開き直った彼女がある人物と出会う。エステサロンなどの経営者だった。

 彼女はエステも始めたが、ちょっとした不満があったという。エステでは他人に施術するため、自分が大好きなネイルができなくなる。

 つけ爪もあったが、すぐに外れたり、手間がかかったりと問題が多いのだが、彼女はここにビジネスチャンスがあると考えた。

 「私が開発した『ジュネル』は、取り外し可能なチップネイルです。アクセサリーと同じようにTPOに合わせてチェンジできますし、仕事に支障があれば、取り外しておくことも可能です。それでいて、いったんつければ取れにくい。開発には3年半かけて、15年6月にグランドオープンすると、爆発的にヒットしました。年商数十億円が視野に入っています」(同)

 昨年は念願のロールス・ロイス・ファントムを5000万円で購入したという。

 もう1人、極貧から成り上がり財を築いた大阪の女社長がいる。バウムクーヘンが人気のカウカウフードシステム会長、川村信子氏(65歳)、通称「マダムシンコ」さんだ。

 自宅は兵庫県西宮市の甲山(かぶとやま)山麓にあり、大阪湾まで見下ろす絶景の高台にある。600坪の広さで5億円。だが、ここへたどり着くまでは紆余曲折があった。

 「子供の頃から貧乏やったからね。いつになったらお金持ちになれるんやろかと、ずっと考えていましたよ。うちは島根で豚を飼っていましたから、近所にリアカーを引いて豚の餌にする残飯をもらって回っていたんです。それで家に帰ったら、(残飯の)きれいな部分を取って、お母さんが私に食べさせるんです。そんな生活をずっとしていました」(川村氏)

 その後、父親が大阪に働きに行くことになった。家族全員で尼崎に引っ越し、雨漏りする市営住宅で、「家族9人でカラダを曲げて寝る生活でした」(同)

 川村氏は水商売の世界に入り、頭角を現す。北新地でナンバーワンホステスになると、銀座に行ってここでもナンバーワンになる。

 その後大阪に戻り、焼き肉屋を始めた。6店舗までは比較的順調だったが、そこで狂牛病の問題が起こる。その上、店も放火され、従業員にも給料が払えなくなった。

 彼女が、自分の運命も終わりやなと思った時に、大阪・箕面(みのお)の喫茶店で、ケーキ1個とコーヒーで2000円くらい取る店が流行っているのを目の当たりにした。

 「こっちは焼肉食べ放題で1980円でしたからね。これや! と思って喫茶店を始めました。それがマダムシンコの始まりです」(同)

 当初は雇ったパティシエにさんざんわがままを言われ、いじめられるたびに、「くそ」と燃えたという。

 「それで自分たちで作れるバウムクーヘンを選んだんです」(同)

 そのバウムクーヘンが売れに売れて、今や年商100億円を視野に入れる企業に成長した。

 現在の土地は銀行が話を持ってきたというが、それは偶然にも、父親が関西に出てきて肉体労働者として働き開拓した土地だった。この土地に娘が住むことになるとは夢にも思っていなかった、こんなに嬉しいことはないと、父親は泣いたという。

 中には自ら莫大な資産を築いたが散財した末に「すっかり足を洗った」と豪語する富豪もいる

 S氏は中学校卒業後、生活費を稼ぐために、様々な商売に従事。人材派遣会社や携帯電話ショップを複数経営し、ソフトウェアの納入などで資金を稼ぎ、さらには大手企業の大株主となって、売却益で数十億円の現金を手にしたという。

 しかし派手に稼いだためか脱税で逮捕された。このことをきっかけに今は経営から退き、いくつかの会社の株主に収まっている。

 往時は毎晩北新地に出掛け、高級シャンパンやワインを次々と空けて、毎月の飲み代は500万~1000万円にもなったそうだ。ついにはクラブに投資して経営まで手がけた。しかし今は、行き着いた究極の趣味にS氏は入れ込んでいる。「ポーカー」である。

 日本でポーカー普及を手がける『ポーカージャパン』の株主で、自らもポーカープレイヤーとして世界中を飛び回っている。

 「世界最大のトーナメント、WSOPがラスベガスで毎年開催されていますが、数千人が参加して、優勝賞金は14億円です。ランキングの上位200名が、総額35億~40億円を稼いでいます」(S氏)

 サッカーのスーパースター、ブラジルのロナウドやネイマールらもポーカープレイヤーとして活躍しているという。欧米では頭脳のスポーツとして位置づけられ、ゴールデンタイムにテレビ中継されるほど人気だという。

 しかし、いくら稼いでも、金持ちなら誰でもいずれは直面しなければならない問題がある。相続である。

 大阪府南部の住宅街で、名家として300坪を超える自宅とマンション6棟を保有する不動産会社取締役のT氏がこう嘆き、ぼやく。

 「私は祖父から後継者として財産を受け継ぎました。祖父が亡くなる直前に、祖父の養子となったんです。私の義兄となった父は相続上、何も引き継いでいません。相続税対策で一世代飛ばして、私が引き継いだということです。もちろん父も納得ずくの話ですよ。
 死後、開封した祖父の遺言書には、約15億円相当の財産の9割を私に、残りを他の子供で分けるように、とありました。問題はそこからです。父の妹2人がこれに不服を申し立て、烈火のごとく怒り出した。
 それまでは私にとってすごく優しいおばちゃんたちだったのに、おカネを前にするとあれだけ人間が変わり、がめつくなるんだと恐ろしくなりましたよ。結局、叔母たちは裁判所に持ち込み、5億円程度あった現金をすべて持っていきました。私は現金に替えられない自宅や不動産などの固定資産だけを相続することになりました」(T氏)

 その後は親類の葬儀などでまれに顔を合わせるが、叔母たちとは一言も言葉を交わすことはないという。

 私は大きなカネを持ったことがないので、金持ちたちの苦労はわからないが、相続に関して言うと、大金持ちよりも小金持ち、少ないカネや土地を残したときに、深刻な骨肉の争いが起こることが多いように思う。

 私の周りを見ても、親が死んでわずかな遺産を残したため、兄弟が醜い相続争いをするケースは枚挙に暇がない。

 先日も私の知り合いからこんな話を聞いた。彼の姉さんが、母親が認知症になっているにもかかわらず、死ぬ直前に遺言状を書かせていた。

 死後、それを示して、彼にこの土地を出て行けと迫ったという。彼は認知症の母親がそのようなことを書くはずはないと訝り、話し合いをしたが結局決裂した。

 最後は裁判にまで持ち込み、約1年かかってやっと自分の相続分は何とか確保したが、以来、姉たちとは口もきいていないそうだ。

 同じ敷地内に彼とその姉は別々に家を建て、今も住んでいる。兄弟は他人の始まりとはよく言ったものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 トランプが大統領に就任したが、就任演説で「アメリカファースト」を繰り返すだけの中身のなさに世界中が呆れ、日本でも株が爆騰どころか下がり、円高になってしまった。TPPは早速破棄し、アメリカの自動車が日本で売れないのは、高い関税をかけているからだと馬鹿げたウソを言って、日本を恫喝(どうかつ)している。世界の惨状は今ここから始まることは間違いない。ほくそ笑んでいるのは、自分たちがこの時代の盟主になると豪語しているプーチンと習近平であろう。今週は、少しの間だけでも楽しく過ごしたいから、敢えてトランプネタは外した。

第1位 「吉原の『超高級店舗』待合室にいた安倍総理のお友達の元大臣」(『週刊新潮』1/26号)
第2位 「狩野英孝『17歳現役女子高生と淫行疑惑!』──昨年の『6股交際騒動』に続いてまたも下半身スキャンダル!」(『フライデー』2/3号)
第3位 「『開運! なんでも鑑定団』『国宝級茶碗』曜変天目2500万円『ニセ物、本物』騒動の“鑑定”やいかに」(『週刊ポスト』2/3号)

 第3位。今年で放送開始から23年目を迎えるテレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』に真贋(しんがん)論争が起きていると『ポスト』が報じている。

 「〈『なんでも鑑定団』始まって、最大の発見ですね〉
 〈国宝になっていたかもしれない大名品です!〉
 番組内でこう高らかに宣言したのは、レギュラー出演する古美術鑑定家の中島誠之助氏だ。
 昨年12月20日の同番組では、世界に3点しかないとされる中国の陶器『曜変天目(ようへんてんもく)茶碗』の“4点目”が新たに見つかったと放送された。
 この茶碗を持ち込んだのは徳島県のラーメン店店主だった。“お宝”は明治時代に大工をしていた店主の曾祖父が、戦国武将・三好長慶(みよし・ながよし)の子孫の屋敷を移築した際に大枚をはたいて買い求めたもの。25年以上も押し入れの“肥やし”になっていたが、気になって番組に鑑定を依頼したという。(中略)
 放送では、いつものように中島氏が虫眼鏡を用いてじっくりと茶碗を鑑定した。司会の今田耕司が『オープン・ザ・プライス!』と声をかけると、電光掲示板に示された数字は『25,000,000』。番組最高額(5億円)にこそ達しなかったものの、鑑定結果にスタジオはどよめきと拍手に包まれた。(中略)
 鑑定後、中島氏は『曜変天目に間違いございません』と断言。『信長、秀吉、徳川家康が持ってさらに現代に伝わっていれば、国宝になっていたかもしれない』と解説したのである。
 南宋時代(12~13世紀)の中国で製作された曜変天目茶碗は、“星々”を思わせる美しく輝く模様を持ち、『茶碗の中に宇宙が見える』と評される。完全な形で残るのは世界で3つとされ、すべて日本に現存する。それらはいずれも国宝である。番組放送後、“4つ目の国宝発見”となる大ニュースを新聞各紙は『幻の陶器発見』と相次いで報じた」(『ポスト』)

 だが、この世紀の大発見に異を唱える専門家が現われたというのだ。窯業で知られる愛知県瀬戸市在住の陶芸家・九代目長江惣吉(ながえ・そうきち)氏である。長江氏が「番組を見ていて思わず絶句しました。どう見ても中国の商店街で売っているまがい物にしか見えなかった」と語っている。
 この長江氏、曜変天目に関してはプロ中のプロなのである。その美しさに魅了された長江氏は、製造方法が未だ解明されていない「幻の陶器」の完全再現に親子二代にわたって挑んでいるという。
 これまで中国にも28回赴き現地の研究者との交流を重ね、昨年、NHKがその活動を番組で特集したほどの「曜変天目のプロ」なのだ。
 その長江氏が鑑定品を「偽物」と判断する最大の根拠は「光彩」だそうだ。

 「曜変天目茶碗は、鉄分などを原料とする釉薬(ゆうやく)をかけて焼かれる。最大の特徴は、前述したように茶碗の内側に広がる鮮やかな光彩であり、光と見る角度によって輝き方がガラリと変わる。
 徳川家康など時の権力者にも愛でられたとされる逸品だが、今回鑑定された茶碗には『肝心の輝きがない』と長江氏は指摘する。
 『そもそも“曜変”とは“光り輝き、変幻する”を意味します。本来、曜変天目の釉薬には天然材料が使われており、焼き方によって色合いが変化して、ブラックオパールのように鮮やかな光彩が発現します。
 しかし、鑑定団で紹介された茶碗は変幻する光彩ではなく、単に赤、緑、青などの釉薬がそのまま発色したものに見える。これは東洋的な味わいに欠ける』
 鑑定品は色合いから見て、18世紀以降に作られたものだと長江氏は推測する。
 『おそらく、ヨーロッパで18世紀以降に開発された陶磁器釉薬用絵具の「スピネル顔料」を塗り付けて発色させたもので、私は描彩(びょうさい)天目と呼んでいます。時代からみても宋代の作品ではありません。器の外側に雲のような模様が出ていることも不可解です。国宝の曜変天目には、器の外側にほとんど模様がありません。鑑定品のような茶碗は今も福建省の建窯(けんよう)周辺にある“倣製品工房”で大量に作られており、2000~3000円で購入できます」

 さらに中国陶磁考古学・陶磁史の世界的権威で沖縄県立芸術大学教授の森達也氏も「実物を見ていないのでその点は不正確ですが、映像を見た限りでは本物である可能性は低い」と話している。
 『ポスト』の取材に、テレビ東京側は「特にお答えすることはありません」、鑑定家の中島氏からは「回答は得られなかった」そうだ。
 私も曜変天目茶碗は好きだが、たしかに本物だとしたら、この値段は安すぎる。鑑定家という不可思議な職業を売り物にして、番組を作るやり方に元々疑問があったが、続けていればいつかは間違いや勘違いが起こるのは必定。
 起きるべくして起きた「間違い」なのではないのだろうか。

 第2位。お次は『フライデー』のスクープ。去年、泥沼の六股下半身騒動を起こしたお笑い芸人の狩野英孝(かの・えいこう)だが、彼が今度は未成年と交際している「淫行疑惑」があると報じた。
 相手は千葉県の通信制高校に通うM子(17)。彼女は一部のファンの前だけで小規模のイベントを行う「地下アイドル」だった。
 狩野の大ファンでSNSで知り合ったという。次第に親しさが増し、狩野の家で逢瀬を重ね始めた(ずいぶん古めかしい言い方だね)。
 狩野が彼女と肉体関係をもてば、東京都の淫行条例に抵触する可能性がある。
 狩野は『フライデー』に対して、M子は自分では22歳だと言っていたが、去年の11月頃問い詰めたら、17歳だと言われたと話している。
 それを知ってからも肉体関係をもっていたら、狩野は芸能界にはいられなくなるはずだ。
 狩野の所属事務所は、21日に狩野が都内で会見すると発表した。コカイン疑惑で芸能界から去った成宮寛貴(なりみや・ひろき)の二の舞になるのか、注目の会見だった。
 以下は『スポニチアネックス』1月21日付からの引用である。

 「20日発売の写真週刊誌『FRIDAY』(講談社)で女子高生との淫行疑惑が報じられたお笑いタレントの狩野英孝(34)が21日、東京都内で1時間強にわたり、会見を行った。狩野は『ご迷惑をお掛けし、本当に申し訳ございません』と深く頭を下げ、謝罪。仕事のキャンセルが相次ぎ『みんなに迷惑を掛けた』と涙ぐんだ。今回の騒動については『情けない。人として反省しなきゃいけない』と心境を吐露。相手女性との男女の関係については明言を避けた。所属事務所は『(二股騒動があった)昨年からの生活態度も含め』謹慎処分にすると発表した」

 笑って済ませるというわけにはいかなかったようである。

 第1位。今週の第1位は『新潮』の記事。内容もそうだが、モノクログラビアページに出ている見事な隠し撮り写真に目を見張る。

 落語の古典「子別れ」は、山谷の隠居の弔いですっかりいい心持ちになった大工の熊五郎が、精進落としだと吉原へ繰り込んで連泊するところから始まる。
 昔は、弔いを口実に花街へ遊びに行くというのが、江戸っ子の通り相場だったようだが、これをそのまま現代で再現したエライ政治家さんの話である。
 今は女郎屋ではなくソープランドとなるが、驚くのは、このセンセイが待合室で写真週刊誌を見ている姿が、相手に了解をとって写したのではないかと思うほどハッキリ、見開きモノクログラビアに載っていることである。
 新藤義孝元総務相、58歳。といってもほとんどの人はわからないが、硫黄島で玉砕した栗林忠道陸軍大将の孫といえば、思い出す人もあるかもしれない。
 川口市議を務めた後、自民党から出馬し、当選6回を重ねる。5年前の総裁選では安倍を支持して、安倍首相から可愛がられているという。
 この記事で驚くのは、1月10日夕方の彼の行動を、逐一書いてあることである。地元である川口市の斎場に行き、赤坂の議員宿舎に戻り、すぐに自ら運転して吉原の三本指に入るという超高級ソープへ入るのが午後8時50分。そこでは「ヤマザキ」と名乗り、待合室で写真週刊誌をパラパラ見ているところまで描写し、そこで8万円を払う。
 11時7分に退店だから、2時間近く頑張ったことになる。
 ここでは担当のソープ嬢が迎えに来てくれて、部屋に入れば、ただ立っているだけでソープ嬢がすべてを脱がしてくれるそうだ。
 4日後、『新潮』は新藤議員を直撃する。驚いたろうね。写真を見せると「プライベートなことだから」と逃げの一手。そりゃそうだろう。
 このセンセイ、両親が設立した幼稚園の園長でもあるという。それにしても、『FOCUS』で培った隠し撮りの冴えは、一見の価値ありだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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