中国は、2016年10月19日、中国人宇宙飛行士2人が搭乗した宇宙船「神舟11号」と、無人宇宙実験室「天宮2号」とのドッキングに成功した。

 中国・習近平政権が掲げるスローガンの一つ。宇宙開発を巡っては長らく米露がリードしてきたが、中国は2030年までに米露両国と並ぶ宇宙大国=宇宙強国になることを目指している。その意気込みは、今年から、毎年4月24日を「宇宙の日」に制定したことでもわかる。ちなみに1970年のその日、中国は初の人工衛星打ち上げに成功している。

 中国は「宇宙強国」のスローガンの下、今後も、人類初の月面裏側探査(2018年)、火星探査(2021年)、有人宇宙ステーション(2022年頃)など、数々の宇宙プロジェクトを推進する計画だ。また、独自の衛星測位システム「北斗」の全世界カバーも予定されているという。

 懸念されるのは、中国の宇宙開発が、平和利用だけでなく、軍事利用と深く関わっていることだ。

 例えば、前述の「北斗」は、軍の統合運用に不可欠なシステムである。そもそも中国の宇宙開発は軍の一部門が担当しているのだ。中国は2007年に自国の老朽化した気象衛星を弾道ミサイルで破壊する実験を行なったが、これは衛星攻撃兵器(ASAT)の軍事訓練にあたるとの見方が有力だ。

 米軍のシステムは、情報・偵察衛星はもちろん、全地球測位システム(GPS)、通信衛星など衛星に大きく依存している。中国がASATを実戦配備し、宇宙空間で衛星が次々と破壊すれば、米軍はお手上げ状態だ。アメリカの国防総省は中国の宇宙空間での軍事力増強に神経を尖らせているのはいうまでもない。

 日本は米国と同盟関係にある。中国を巡っては、南シナ海などでの「海洋進出」ばかりに関心が注がれているが、「宇宙進出」についても注意する必要がありそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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