自民党の小泉進次郎衆院議員ら若手議員が2016年10月、社会保障改革案「人生100年時代の社会保障へ」をまとめた。その改革案の目玉政策として、「健康ゴールド免許の導入」を打ち出している。

 改革案によると、定期健康診断などで検診履歴などを把握し、自身の健康管理(禁煙、保健指導の受診など)にしっかり取り組んだ人を対象に、医療保険の自己負担を軽減(例えば現行の3割負担から2割負担に引き下げ)することなどを提案した。

 運転免許では、5年間無事故無違反のドライバーに対し、「優良運転者」として「ゴールド免許証」が交付される。自動車保険料が安くなるなどの特典があるが、「健康ゴールド免許」はこれにならったものだ。

 改革案は、導入の理由として「現行制度では、健康管理をしっかりやってきた方も、そうではなく生活習慣病になってしまった方も、同じ自己負担で治療が受けられる。これでは、自助を促すインセンティブが十分とは言えない」と指摘。そのうえで、「今後は、健康診断を徹底し、早い段階から保健指導を受けていただく。そして、健康維持に取り組んできた方が病気になった場合は、自己負担を低くすることで、自助を促すインセンティブを強化すべきだ」としている。

 何やら上から目線のような気がしてならないが、日本の社会保障制度が抱える財政的な問題を考えると、これは正論である。

 改革案をまとめた若手議員らは健康ゴールド免許制度を次期衆院選の公約の一つにしたい考え。自民党の茂木敏允(もてぎ・としみつ)政調会長も「極めて野心的な内容」と評価する。

 もっとも、世の中には難病患者、先天性の病気を抱えた人など健康弱者が数多く存在している。改革案は「自助で対応できない方にはきめ細かく対応する必要がある」とも強調しているが、「健康弱者への差別ではないか」「財政規律主義の財務省の言い分、そのままだ。国民を分断する行為」「自民党お得意の自己責任論」との批判が少なくない。

 そのため、健康ゴールド免許の実現は不透明だ。そもそも、健康ゴールド免許を導入することで、どれだけ健康な人が増え、医療費が抑制されるのか、確証がない。実施する場合は、その根拠のデータを示す必要がある。

 政治はスローガンだけでは済まされない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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