ナンセンスだがふしぎと耳に残る。ウケる笑いというものは昔からそうしたものかもしれない。『PPAP』こと「ペンパイナッポーアッポーペン」がいま、ワールドワイドな話題を集めている。シンガーソングライター「ピコ太郎」が動画サイトで発表した楽曲……というよりは「音楽ネタ」である。かのジャスティン・ビーバーが推したことをきっかけにブレイクを果たした。

 「アイハバペーン(I have a pen.)」で始まる歌詞は平易な英語。珍妙なダンスもマネがしやすい。当然、動画上でパフォーマンスを再現するユーザーも多く、人気に拍車を掛けた。

 笑いの世界では「設定」が大事なのに無粋を承知でいえば、ピコ太郎の正体は芸人の古坂大魔王(公的にはプロデューサーということになっている)。かつてのお笑い番組『ボキャブラ』シリーズでは、底ぬけAIR-LINEのメンバーとして人気者だった。

 「なぜ世界に通用したのか」という分析がメディアでは盛んだが、まず重要なポイントは、古坂大魔王は、一時期お笑いを休止するほど音楽の世界に本気だったということ。そして、近年のテレビでこそ存在感を発揮できなかったが、もとより芸人仲間のあいだでは高い評価を得ていたという事実だ。その両輪がうまくまわって、ネット時代にようやく走り出した。いわゆる「ボキャブラ芸人」たちは一過性のブームとして語られることもあるが、まだまだ実力派が埋もれていそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
ジャパンナレッジとは 辞書・事典を中心にした知識源から知りたいことにいち早く到達するためのデータベースです。 収録辞書・事典80以上 総項目数480万以上 総文字数16億

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。 (2024年5月時点)

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る