がんと診断された人のなかで、5年後に生存している人の割合。性別や年齢などが同じ日本人の集団と比べて、がんと診断された人の生存率がどのくらい低くなるかをパーセンテージで表している。100%に近いほど治療効果が高く、0%に近いほど治療が難しいがんと判断され、がんの治療成績を見るときの客観的指標として使われている。

 生存率は、1年、2年、3年、5年、10年で比較する方法があるが、がんの治療では5年生存率が使われることが多い。これは、がんは治療開始から2~3年以内に再発することが多く、5年過ぎても再発や転移がなければ、治療や経過観察を一区切りできる目安となっているからだ。

 抗がん剤などによる治療技術、検診技術の進歩によって、日本人のがんの5年生存率は年々改善されており、1997年の62.0%から、2015年は68.8%まで伸びている。ただし、がんの部位や進行度によって、かなりのばらつきがある。

 前立腺がんは100%、乳がんは92.9%、甲状腺がんは91.6%など、高い治療効果を示しているが、肺がんは43.9%、肝臓がんは34.8%、膵臓がんは9.1%(がん研究振興財団「がんの統計'15」より)。また、いずれの部位でも進行するほど、がんの5年生存率は低くなっていく。

 がんの5年生存率は、治療効果を見る指標なので、手術や抗がん剤治療などを受ける病院を選ぶときの目安としても使われている。ただし、早期がんや簡単な治療ばかりしている病院の生存率は高くなり、進行した重症患者を受け入れている病院は低くなる傾向にある。単純に数字だけで比べるのではなく、その病院がどのような患者を治療しているかを見た上で、治療成績を判断する必要があるだろう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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