NHKの情報番組で取り上げられるなど、最近注目を浴びている「ぼっち家電」。その名前だけ耳にすれば、ひとり暮らしの生活に寄与する家電と勘違いしそうだが、じつは違う。「ひとりないし少人数体制で企画・開発された、独創的な家電製品」に対して使われているワードなのだ。

 その代表的な送り手は、カシオの商品企画を経て独立、現在「UPQ(アップキュー)」の代表を務める中澤優子氏だ。2015年の第一弾リリースで、いきなり17種類もの商品を発表。そのラインナップも、SIMフリーのスマホや4Kディスプレイ、ガラス製の透明キーボードなど、話題になりやすいものが多い印象だった。価格の安さにも驚かされる。また、「blue×green」「navy&red」といったカラーのコンセプトも、デザイン家電のブランディングとして真芯をとらえているだろう。

 では、なぜ「ぼっち」なのに家電を商品化することが可能なのか。UPQの場合、製造は機動力のある家電ベンチャーとして有名な「Cerevo(セレボ)」に委託。こうした生産体制さえ整っていれば、速く、しなやかにクリエイティブな商品を送り出すことができる。爆発的なヒットを生み出せない昨今の大手メーカーは、意地悪な見方をすれば、企画会議や社内調整に時間がかかりすぎている。ぼっち家電のような体制は、そこにつけ入るスキがありそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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