これは農政の大きな転換である。

 政府は国家戦略特区で、企業による農地所有を認める方針だ。関係法案を2016年通常国会に提出し、開会中の成立を目指す。

 対象の特区は兵庫県養父(やぶ)市。5年間と限定的だが、企業の所有を認め、地域経済にどんな経済効果をもたらすか検証する。

 現在でも、企業は「農業生産法人」に出資する形で「間接的」に農地経営に関与できる。出資比率は2016年4月からは従来の25%以下から50%未満に緩和された。とはいっても限定的なのが実情だ。

 これに対し特区の養父市では、企業などの法人が農地を直接取得することが認められる。ただし、農地は自治体がいったん地権者から買い取り、そのうえで企業に売り渡す形をとる。

 企業の技術力や資金力、販売・経営のノウハウを、農業に生かそうとの狙いがある。

 ただ懸念の声もあり、農地から思ったように利益があがらない場合、「企業の論理」で企業が農業から撤退し、農地を転売する可能性がある(編集部注:農地保全については、参入企業から積立金を徴収し、農地として維持できなければ、それを没収するという農地保全条例が養父市独自で制定されている)。

 ともあれ、特区で成功すれば、いずれ全国で企業の農地所有が認められるだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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