「ローフード(ローフーディズム)」という食の考え方がある。食材に含まれる酵素を十二分に摂取するためには、そのまま口にするのがいちばんよい。だから、あらゆるものを生で食べようというスタイルだ。「ロー(raw)」は「(カロリーなどが)低い」ではなく、「生の」という意味。この概念をお菓子に持ち込んだのが、「ロースイーツ」である。

 スイーツといえば、卵、小麦粉、バター、砂糖などが欠かせないように思えるが、ロースイーツはこれらを極力使わない。クリームはナッツをフードプロセッサーで砕いたもので代用。オーブンを使うこともなく、切って固めたようなシンプルなレシピが多い(酵素が壊れないとされる48℃以下であれば加熱を許容することもある)。

 現在、ネット上でもロースイーツのレシピ紹介が盛んだが、見た目には一般的なチョコレートケーキやタルトと変わらないことに驚く。熱処理をしないので栄養素がしっかり残って、さらに糖質が少なく太りにくいという。ローフーディズム自体はいろいろ疑問点が指摘されているが(やはり栄養の偏りが否めないし、そもそもわれわれは、素材に手を加えすぎない和食という文化の中に生きている)、ロースイーツは単純にヘルシーだ。欧米と違ってフルーツの生食が基本である日本人にも相性がいいだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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