堺雅人や西島秀俊など、ここ数年のドラマ界はアラフォー俳優が元気だ。ティーンがテレビよりもスマホに夢中な昨今は、どうも若手俳優にとって受難の時代と言えるのではないか。視聴者のボリュームゾーンは、ある程度年輪を重ねた顔が好きなのだ。

 もっとも、アラフォーの人気者たちは実年齢通りの「オヤジ」とは言いがたい。同世代よりははるかに若々しいからだ。やはり若さは重要か……と思いきや、アラフォー俳優とは別に、「オヤジの味わいがある顔」にもまた多くの支持が集まってきている。『孤独のグルメ』でブレイクした松重豊、コワモテながら若い役者との相性がいい遠藤憲一、バラエティ番組ではお茶目な素顔を見せる木下ほうか、元日婚でお盛んなところを見せる吉田鋼太郎……。いずれも50代、「アラフィフ」の役者である。

 このオヤジ俳優たちの台頭は、昨今のテレビドラマの題材選びと無縁ではないだろう。いま、トレンディドラマ的な恋愛ものは少数派で、明らかにオトナを意識した作品が増えている。「情熱ある働き手」を好んで描く作家・池井戸潤の原作ドラマにヒットが多いのもむべなるかな。そうした働く男たちのドラマに説得力を与えるのは、厳しいエンタメの世界で苦労を重ねてきた、オヤジたちの顔なのではないか。そういえば、2015年を代表する作品『下町ロケット』で共演した阿部寛と吉川晃司もまた、いつの間にか50代である。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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