「お雑煮は白のオムシ(味噌のこと)でいただきますが、まったりとしてとろけるような味はよろしおすなぁ」

 「まったり」は、とろんとしたまろやかな中に、こくのある味わいを表す料理の用語として、京都で江戸時代に広まった。語源は「欠けるところがなく、整っていること」を意味する「また(全)い」の語幹に、状態を表す「り」を付けて促音化したもので、おそらくは「またい」は古語の「またし」に由来し、「またし」が「まったし」へと変わり、「まったり」となって定着しているわけである。昔からもう一つの意味があり、「人柄が落ち着いて懐の深い感じのする」ことを表す。最近はこちらの意味より派生し、「ゆっくりとくつろぐ」ことを意味する言葉として、全国的に使われるようになっている。例えば、「明日は休みやし、家でまったりしとくわ」みたいに。

 「ほっこり」という京ことばも、「まったり」と似たような経過を辿った言葉である。現代で「ほっこり」といえば、「ほっとする」とか、「大変だったけれど、安心した」というような意味に使われている。けれど、もともとの意味は、「温かくほかほかしている」様子を表す言葉であった。江戸時代には焼き芋の代名詞として、「ほっこり」が使われていたこともあったそうだ。ちなみに、京都で「ほっこりせん」とか「ほっこりしいひんな」などと否定的に使うと、「思わしくない」という意味になる。


「まったり」は梅酒の宣伝がきっかけで流行したこともあるとか。京都っぽいためか、日本酒や日本料理のほめことばとしてはしっくりくる。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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