これは驚きの数字である。日本国内の農業就業者人口が約209万人と、5年前の2010年に比べ2割も減少していたのだ。農林水産省が2015年11月27日に発表した「農林業センサス(速報値)」で明らかになった。さらに言えば、農業就業者は20年前から半減、30年前比でも6割減という有り様だ。

 背景にあるのは、高齢で離農する人が多いうえ、後継となる若者の就農も進んでいないという実情だ。その差が2割減という数字になったわけだ。

 もう一つ深刻なのは就業者の平均年齢も66.3歳と過去最高だったことだ。65歳以上の人を高齢者というが、平均年齢が高齢者という職種が日本農業の現実である。

 日本農業を巡っては、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋で合意するという逆風も吹いている。安倍政権は対応策として「攻めの農業」を掲げ、農産品の輸出を促すとともに、農地の集約化や農業主体の法人化で経営規模の拡大を図ろうとしている。

 にもかかわらず、2割も就業者が減少したのは「攻めの農業」に向けた施策がうまく機能していないからだ。「攻めの農業」と言葉は威勢がいいが、その前に労働環境や収入面で魅力ある職種としなければ、「攻めの農業」は単なるスローガンでしかない。

 メディアも政府のスローガンに追従して「攻めの農業への対応を急げ」と書く前に、農業の現場に足を運び、担い手の育成のために具体的に何が必要なのかリポートすべきではないか。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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