冬の京野菜は、寒い季節ならではのご馳走が揃っている。聖護院(しょうごいん)かぶらや聖護院大根、中堂寺大根(茎大根)、金時にんじんは欠かせない。さらに、九条葱、壬生菜(みぶな)や水菜、酢茎(すぐき)もある。

 そんな冬野菜の一つの堀川ごんぼは、堀川ごぼうや聚楽ごぼうとも呼ばれるゴボウの一種だ。中心が空洞(ほんがら)になっていて、太くても肉質は柔らかく、食感が少し、しこしこしている。鰹だしと合わせると、独特の芳香がぷんぷんとして、食欲がそそられる。普通は、月環(げっかん)、付け焼き、たき物、きんぴらなどにして食べる。調理するときは、米のとぎ汁で柔らかくなるまで湯がいた後、月環ならば、中心の空洞になった部分をくり抜き、海老のすり身や鶏の挽き肉をそこに詰め、おだしと淡口醤油、味醂などで調味して炊きあげる。

 堀川ごんぼの歴史は古く、400年あまりにわたり京都の農家が守り抜いてきた品種である。現在は一乗寺(左京区)付近で栽培されている。その由来が面白く、最初に見つかったのは、豊臣秀吉が築いた幻の邸宅、聚楽第のお堀である。お堀は秀吉の没後は荒廃し、ゴミ捨て場と化していたところ、そこに破棄された食べ残しから発芽したのが堀川ごんぼだという。このゴボウは収穫される機会のないまま大きく育っていたが、食べてみると、独特の味わいのあるものだった。それ以降、年越しゴボウとして栽培が続けられるようになったそうである。

 一時は流通量が極めて限られたため、高級料理店でなければ食べられなかったが、現在は錦市場などでも見かけるようになった。京都のちょっとした居酒屋や割烹でも味わうことができ、正月のお重としても欠かせない食材になっている。


写真奥が、しんじょうを詰めた堀川ごんぼの焚きもの。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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