この夏の富士山の登山者数は約23.4万人。この10年間でもっとも多かった2010年の約32万人に比べると、約8.6万人も減少している(環境省「平成27年夏期の富士山登山者数について」より)。

 中高年を中心とした登山人口は860万人(「2013年レジャー白書」日本生産性本部)と言われ、増加傾向にあるなかで、富士山の登山者が目立って落ち込んだのは、台風による悪天候や日本各地で活発化する火山活動の影響もあるようだ。

 頂上を目指す登山者が減少する一方、ここ2~3年ブームになっているのが「富士下山」だ。

 一般登山者が富士山に登る場合は、途中までバスや自家用車などで移動し、五合目付近から頂上を目指すことが多い。このあたりから高木がなくなるので、晴れた日には下界を一望できるが、登山ルートは赤茶けた砂が広がる殺伐とした風景だ。また、登山用の持ち物は重装備になるため、重いリュックサックを背負って黙々と頂上を目指すのは体力的にも厳しいものがある。

 富士下山は、この五合目から反対に下山ルートを辿るもので、景色の変化もあり、山腹に広がる森を満喫できて、五合目よりも上とは違った富士山を楽しめる。コースの約8割は下りなので、登山初心者や高齢者、子どもでも楽しめると評判になっている。

 ルートはいくつかあるが、たとえば富士宮口五合目から宝永山火口を経由して、大砂走りを下って御殿場口新五合目に出るコースでは、富士山で唯一の火口の中を歩いたり、秋には紅葉狩りもできる。所要時間は5~6時間で、専用の日帰りツアーもある。

 五合目以上に登山できるのは7月~9月中旬までだが、富士下山は6月~11月中旬まで入山できる。今は、富士の裾野の紅葉を楽しめる今シーズン最後のチャンス。登山とは一味違う富士山の表情を見に行ってみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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