一般に「人食いバクテリア」と呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者数が、過去最高となっている。

   国立感染症研究所が10月13日に発表した「感染症発生動向調査週報(IDWR)」によると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の今年10月4日までの患者数は329人。8月に、昨年1年間の患者数273人を上回り、その後も増え続けている。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、1987年にアメリカで最初に報告され、日本には1992年に上陸した。その後、毎年100~200人の患者が報告されており、そのうちの約30%が死亡するという高い致死率となっている。

 おもな病原体はA群溶血性レンサ球菌で、一般的な症状は喉の痛みで、おもに小児に多い病気だ。しかし、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、とくに30歳以上の大人に多いのが特徴。

 突然、手足の強い痛み、発熱、血圧低下などが起こったかと思うと、発病後数十時間内に手足が壊死(えし)し、多臓器不全などを起こして死に至るケースも多い。「人食いバクテリア」と呼ばれるゆえんだ。

 ふだん健康な人でも発症することがあるが、とくに糖尿病、肝硬変、がんなど、免疫力が落ちる病気の人、臓器移植後に免疫抑制剤を服用している人、妊産婦などに注意が必要だ。

 しかも、ワクチンはなく、特別な予防策はない。通常の感染症対策と同様に、手洗いやうがいを励行し、皮膚に傷のある場所はきれいに洗い流すことが大切だ。

 皮膚や筋肉が壊死するのは手足がもっとも多く、強い痛みとともに、赤く熱を持ってきてから、水膨れができて皮膚が黒く壊死してくるまでは1~2日。多くは発病から3日以内で亡くなっている。

 とくに、高齢者で手足や傷が急激に腫れ上がったり、悪化した場合は、すぐに医療機関を受診したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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