9月9日から11日にかけて関東、東北で発生した記録的な大雨は、河川の氾濫や堤防の決壊、土砂崩れなどを引き起こし、栃木、茨城両県に大きな被害をもたらした。

 その豪雨の原因となったのが、積乱雲が帯状に並んだ「線状降水帯」の発生だ。

 積乱雲とは強い上昇気流によって鉛直に発達した雲のことで、上空の空気は冷たいのに、地上には温められた空気の層があることで大気の状態が不安定になり、急な大雨や雹(ひょう)が降ったり、激しい突風が吹いたりする。通常は30分~1時間程度の局地的な現象だが、前線付近で冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げたり、山沿いで風が吹きあげたりすると、強い上昇気流が生まれて、ひとつの積乱雲が消えても、別の積乱雲が発生する。今回はこのケースで、巨大な積乱雲が次々と発生して、線状降水帯を形成したのだ。

 9日夜、台風18号から変わった温帯低気圧に向けて、南から暖かく湿った空気が大量に流れ込み、日本の上空で台風17号による東からの湿った空気と衝突して、上昇気流が発生。翌10日の午前中にかけて、千葉県から栃木県の上空に連なる積乱雲群が急速に発達し、幅200km、長さ500km以上の線状降水帯となり、長時間にわたって大雨を降らせる結果となった。

 線状降水帯の発生は珍しいことではないが、大きな災害になる場合は同じ地域に積乱雲が長時間停滞するのが特徴だ。2012年7月の九州北部豪雨、2014年8月の広島市の土砂災害も、今回と同様に複数の線状降水帯が長時間停滞することで大雨をもたらしていた。

 自分の周辺では大して雨が降っていなくても、わずか数十km離れたところで大雨となっているのが集中豪雨の怖いところだ。たとえ人の密集する市内では小雨程度でも、上流域が豪雨に見舞われれば河川が氾濫し、堤防が決壊する可能性もある。

 被害を避けるためには、自治体が作成しているハザードマップで、「自分が住んでいる地域が、過去に水害や土砂災害にあっていないか」「河川の流域ではないか。氾濫の過去はないか」などを確認しておきたい。また、ラジオやテレビなどで最新の気象情報をチェックし、大雨警報や洪水警報が出たら、油断せずに速やかに避難準備を。

 ここ数年、日本は地震や津波、集中豪雨などの災害に見舞われており、これらはいつ自分の身に起こってもおかしくないことだ。いざというときに慌てないですむように、日頃から防災の備えをしておこう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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