交通や旅行の業界ではいま、「女子旅」が一つのキーワードになっている。まだまだ性別によって面倒なことが多い日本社会。女性にとって、男性の目を気にしない空間はかなりラクなものだ。せっかくの休みの日の旅行ならば、若い世代の女子だけで存分に旅を満喫したいというニーズは昔からあったはずで、「女子旅」という言葉を業界が用いることには、そんな女性の背中をそっと押す効用があるだろう。

 女子旅の象徴的なフレーズはいくつかある。たとえば、温泉ならば「美肌の湯」。佐賀県の嬉野(うれしの)温泉、島根県の斐之上(ひのかみ)温泉、栃木県の喜連川(きつれがわ)温泉が「日本三大美肌の湯」として有名だが、これ以外にも全国各地に存在する。「科学的な根拠」が大事にされる時代を反映して、大学の先生などが肌への効能にお墨付きを与えることも多いようだ。

 伊勢神宮、出雲大社、屋久島といった、「パワースポット」をめぐる旅も人気だ。大地から気を得られる(とされる)地をパワースポットと呼ぶことが多いが、女子旅の文脈ではなぜか「縁結び」のご利益が注目されるようだ。本来は運気のアップとは関係のない概念だが、それを指摘するのは野暮というものかもしれない。

 ほかにもご当地自慢のグルメやエステ付きプランなど、女子旅の魅力は尽きない。女子会がいまや外食産業に欠かせない存在であるように、女子旅もまた、不振にあえぐ観光地にとっての「救いの女神」で、その期待に応えるべく力が入っているのだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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