2014年12月、人気商品「ペヤングソース焼きそば」(以下、「ペヤング」)に虫の死骸が混入していたとされる報告があった。検証の結果否定できなくなったことから、メーカーのまるか食品(群馬県伊勢崎市)では販売を自粛。それから半年の沈黙を経て、6月から流通が再開している。当初は品切れ状態になる店舗も多く、復活の日を一日千秋の思いで待っていた消費者の思いがうかがえた。最近、このようなペヤングの熱狂的なファンたちは、「ペヤンガー」と呼ばれている。

 一連のペヤング狂想曲では、「全日本ペヤング愛好会」なるグループのメンバーがマスコミから意見をよく求められていた。一般市場では手に入らないペヤングが、ネットオークションによって高値で取引された時期もあったのだが、メンバーたちは一様に否定的であった。ペヤングは良識あるファンに恵まれている。ちなみに、今回のトリビア的な収穫としては、「『ペヤンガー』という言葉を考案・普及させた」のは『夕刊フジ』の中本裕己報道部長だという「新情報」を、『産経新聞』の記事が伝えたことであろうか。

 現在のペヤングは、異物混入を絶対的に避ける対策が講じられている。工場における製造ラインの改善だけでなく、容器も密閉性を高めたものにリニューアルされた。ところが人間とはわがままなもので、これはこれで残念、という声もあるのだ。以前はフタがはずれやすく、麺が飛び出してしまう、俗に「だばぁ」と呼ばれる現象が起きた。現在の容器にはそのスリルがないというのである。もちろん、いくぶん冗談めいたコメントであろうが、それにしてもいろいろと愛されている食べ物であることよ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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