「リア充(リアル=現実の生活が充実している)」という言葉は、ネット上のスラングの域を超えて、少なくとも若い世代では一般化していると思われる。「充実」の指す対象はおもに恋愛や仕事だが、もっと個人的な生活に関しても「充実」を強調するような動きが現れている。その一つが「ママ充」だ。ここで充実しているのは、母親との関係性。まるで友だちのように仲がいいのだ。

 同時に語られることが多いのが、「ママっ子男子」という言葉。「ママっ子男子」と「マザコン」がどう違うのかといえば、これがどうも悩ましい。服も母に買ってもらうような、少し依存が過ぎる若い男性に対して使われることが多いようだ。もはやマザコンと大差がない。

 そうした精神的に幼すぎる男子はともかく、おそらく「ママ充」は、本来必ずしも否定的な概念ではない。「親離れをしていない」のではなく、もっとライトに、母親とレジャーやショッピングを楽しむライフスタイルに抵抗がないだけなのだ。少子化の時代、子どもは良くも悪くも「大ざっぱ」な教育を受けていない。注がれた愛情に、男子たちが素直に応えているだけという見方もできる。また、「美魔女」という言葉もある通り、いまどきの母親は見た目も若く、息子と並んで違和感が少ないことも大きな要素だろう。

 我が子もいつかは別の女性を見つけて巣立っていく。それまでは息子と「友だち気分(もしかして恋人気分)」を存分に味わいたい。母親のそうした気持ちが、ママ充にてらいのない男子に反映されているという気もする。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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