自民党が酒の安売りを規制する法案を今国会に提出する。

 法案の骨子は、財務大臣が酒類販売について新たに「公正な取引基準」を定め、これに従わない業者に対し、販売免許を取り消す──というものだ。その狙いはスーパーなど量販店の安売り攻勢から「まちの酒屋さん」を守ることにあるという。

 酒の販売を巡っては、小売り免許の取得要件として、販売店を一定間隔に保つ「距離基準」と、人口あたりの免許枠を定める「人口基準」がかつて存在し、量販店やコンビニの新規参入を抑制してきた。それが2000年代初頭に入って相次いで廃止された。その結果、競争が激化し、まちの酒屋さんが激減した経緯がある。

 法案提出の動きは、追い込まれた中小酒販店の組合が安売り規制の強化を求めて自民党に働きかけ、自民党が応じたということだ。

 零細な酒屋さんを救済する、ということでいいんじゃないのと思われがちだが、消費者サイドからすれば、本来、酒がもっと安く手に入るはずなのに、そうした利益が損なわれることになる。

 いまや酒は、酒屋さんで購入するというより、スーパーやディスカウント店、あるいはネット通販でできるだけ安く買うというのが標準だ。コンビニでは深夜でも購入できる。1990年代から政府が進めてきた規制緩和の果実だが、法案はそうした規制緩和の流れに逆行するものだ。

 量販店の攻勢を受けているのは酒店だけではない。八百屋や魚屋、肉屋なども必死で頑張っている。酒に限ってどうして特別な安売り規制が必要なのか。国民の多くは納得がいかないだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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