3月27日、テレビ朝日の『報道ステーション』で古舘伊知郎と元経済産業省官僚でコメンテーターの古賀茂明氏が番組内で口論になったことが波紋を呼んでいる。

 安倍政権に批判的な発言を繰り返してきた古賀氏がこの日を最後にコメンテーター降板となったわけだが、それはテレビ朝日の早河洋(ひろし)会長や古舘プロダクションの佐藤孝会長の意向によるものであると突然、番組中に語り始めたのだ。だいたい以下のようなやり取りがあった。

古賀 ちょっとその話をする前に。わたし、今日が最後ということで、テレビ朝日の早河(洋)会長とか、あるいは(制作協力している)古舘プロダクションの佐藤(孝)会長のご意向でですね、わたしはこれが最後ということなんです。
これまで非常に多くの方から激励を受けまして。で一方で、菅(義偉)官房長官をはじめですね、官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきましたけれども、まあ、それを上回る皆さんの応援のおかげでですね、非常に楽しくやらせていただいたということで、心からお礼を申し上げたいなという風に思います。本当にありがとうございました。

古舘 古賀さん、ちょっと待って下さい。ちょっと待って下さい、古賀さん、待って下さい。いまのお話は、私としては承服できません。古賀さんは金曜日に、時折出て下さって、大変わたしも勉強させていただいている流れの中で、番組が4月から様相が変わっていく中でも、古賀さんに機会があれば、企画が合うなら出ていただきたいと相変わらず思ってますし。

古賀 それは本当にありがたいことです。もし本当であれば、本当にありがたいです。

古舘 古賀さんが、これで、すべて、なにかテレビ側から降ろされるっていうことは、ちょっと古賀さんそれは、違うと思いますよ。

古賀 いや、でも、古舘さん言われましたよね、「わたしがこういう風になるということについて自分は何もできなかった、本当に申し訳ない」と。

 古舘の慌てようが滑稽であった。この古賀発言に対して賛否が分かれているようだ。

 その見本は『週刊文春』(4/9号、以下『文春』)と『週刊新潮』(4/9号、以下『新潮』)である。『文春』は古賀発言を「暴走」ととらえ、菅義偉官房長官の「事実に反するコメントだ(中略)放送法があるので、テレビ局がどう対処されるかを見守りたい」という発言を次に持ってくる。

 そして古賀氏が経産省時代から優秀な自分が重用されないという「被害妄想」を抱き、民主党政権時代、行政刷新相をつとめた仙谷由人(せんごく・よしと)氏に、古賀氏の能力は高く評価していたが「官僚組織の中で仕事をする際は一種の自制がないといけない」と言われ、また大阪維新の会代表(当時)だった橋下徹氏や細川護煕(もりひろ)元総理のブレーンになったが、やはり古賀氏は暴走する質で、原発即ゼロの氏に付き合いきれないと、距離を置かれてきたと書く。

 また、古賀氏を『報道ステーション』に連れてきたMというチーフプロデューサーは、夫が朝日新聞の政治部長で、「古賀氏から様々な話を聞いて番組作りに生かしていたMは、左翼的な思想の部分でも共鳴し合ってベッタリの関係に」(テレ朝関係者)なっていた。そのため、安倍首相に近い評論家や、原発は最低限必要と発言したコメンテーターは「もう呼ぶな」とMが言って、番組に出させなかったと書き進む。

 Mには目的のためには手段を選ばない危険な一面があるとテレ朝関係者に言わせている。このMも3月で番組からはずされ経済部長に異動になったそうである。

 『新潮』のほうはどうか。ことの経緯を書きながら、「無論、その日のニュースとは何ら関係のない『テレ朝・古舘・官邸』批判を展開し、暴走した古賀氏の行動は大人げないとの誹(そし)りを免れないだろう。しかし、菅氏が圧力の存在をいくら打ち消そうとしたところで説得力を持たないほど、安倍官邸が『メディア操縦』を行っているのも事実なのだ」として、NHK『ニュースウオッチ9』を降板させられた大越健介キャスターの件を挙げる。

 安倍首相は恭順の意を表すメディアには情報を流し、リベラルな朝日新聞や毎日新聞には情報を渡さないことでメディアをコントロールしていると批判し、田島泰彦上智大学文学部新聞学科教授にこう言わせる。

 「安倍総理が総理に返り咲いて2年3ヵ月の間にメディアの人と会食した回数は、3年3カ月続いた民主党政権時代の総理3人の総計の既に4倍に達しています。加えて15年度の政府広報の予算案は83億円で、民主党の野田政権時代と比べると2倍以上に膨らんでいる。こうした影響を受けているのか、大手メディアは今、長いものには巻かれている印象が拭えません」

 この2つを読み比べて読者の皆さんはどう考えるのだろうか。私は古賀氏の「暴走」を断然支持する。テレビのニュースショーには電波芸者的コメンテーターが多い中で、こうした「ハプニング」が起きるというのは痛快である。

 NHKを筆頭に安倍首相や菅官房長官がテレビに圧力をかけているというのは周知の事実であり、テレビを傘下に持つ新聞は、知っていながら批判も出来ない腑抜け集団である。

 言論の危機が叫ばれて久しいが、私は常々、本当にそうなのだろうかと思っている。メディア(この場合の多くは新聞だが)が言論の自由を守り育ててきたことがあるのか。

 戦時中や戦後の占領軍時代、権力からの不当な検閲などにメディアが闘ったことなどない。

 その後はどうか。象徴的なのは1972年に起きた毎日新聞・西山太吉記者の「事件」である。沖縄密約公電をすっぱ抜いた西山記者を逮捕させた政府に対して、メディアは言論の自由を守れと声を上げたが、西山記者が女性外務省事務官から「情を通じて」情報を取ったと発表されると、スゴスゴと引き下がってしまったのである。

 これは「新聞が死んだ日」と言われるが、このように、この国のメディアは言論の自由のために闘ったことなどほとんどないと言っていい。

 民主党政権のようにひ弱な権力に対しては大声で批判してみせるが、小泉(純一郎)政権や今回の第二次安倍政権のように強い権力の前にはひれ伏し、擦り寄るのが日本のメディアの本性なのだ。

 私は週刊誌の編集長時代、物言わぬ新聞、物言えぬテレビと批判してきたが、週刊誌も、世の右傾化を我がことのように喜んで政権批判を忘れたり、アベノミクスで値上がりしている株を買え買えと浮かれ惚けていたりで、こちらも期待はできない。

 この国のメディアはとっくに死んでいると思う。そのことを『報道ステーション』の古賀発言は、国民に思い起こさせてくれたのである。

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 今週は女性代議士にまつわるスキャンダルが花盛りである。醜聞が出ると「事実無根」「告訴も辞さない」などと男顔負けに勇ましいが、どうも腰砕けが多いような気がするのだが。今週のはみなさんどう見るのだろうか。

第1位 「『選挙民に日本酒贈呈』をない事にした『稲田朋美』政調会長」(『週刊新潮』4/9号)/「高市早苗総務相実弟秘書官が関わった『消えた公庫の1億円』重大疑惑を追う」(『週刊ポスト』4/17号)/「浪速のエリカ様 国会サボってホワイトデー温泉旅行疑惑」(『週刊文春』4/9号)
第2位 「上重聡アナ有力スポンサーから『1億7千万円マンション』利益供与」(『週刊文春』4/9号)
第3位 「初めて明かされるマツコ・デラックスの素性」(『週刊現代』4/18号)

 第3位。歯に衣着せぬ物言いと独特の切り口でテレビからひっぱりだこのマツコ・デラックス(42)だが、意外に彼女(?)の素顔は知られていないようだ。
 現在、マツコはレギュラー番組9本を抱えているという。
 あまり週刊誌のインタビューに出てこないマツコが出てきたのは、『現代』がマツコの母親に接触したことに憤りを感じたからだそうである。

 「なんで親への取材にこんなに過剰に反応するのかって? あのさあ、オカマの親なんだよ。綺麗な女優さんの親じゃないの。私は何を言われても構わないけど、両親がとやかく言われることだけは絶対に許せない」

 そう言って自分がゲイだと意識したことから語り始める。

 「自分がゲイなんじゃないかと気づいたのは、物心がついたときから。女の子と付き合ったりしてみたけど、やっぱり違った。でもゲイであることを、あえて表に出すようなことはしなかったわ」

 「いまでも連絡を取り合う友達は一人もいない。(中略)
 学生時代の私は、学校が終わると家に帰ってずっとテレビを見ていた。だからテレビが大好きなの。私の人格はテレビが作ったといってもいい」

 マツコのいいところは、自分を客観的に見ているところであろう。

 「私は自分が楽しく生きようなんて思っていないのよ。だってこんな化け物が画面にさらされて、不快な思いをしている人たちだっているんだから。(中略)
 今、幸せかどうか問われれば、それは幸せですよ。一緒に真剣勝負してくれるスタッフがいて、私を必要としてくれる人がいる。
 これは引き籠もっていた時、自暴自棄にもなったけど、そこで腐らずに、誰も見ていなくてもやり続けた結果だと思う。(中略)
 私だっていずれ飽きられる日が来ることはわかっている。だけど、だからといって、そのために保険かけて、予防線を張って生きていくつもりはないの。前に向かって突っ走っていくしかないのよ。今、私を見つけてくれている人たちのために、感謝しながらね」

 私はほとんどマツコをテレビで見たことがない。少し前にテレビに出まくっていた細木数子という占い師に似ているようで、胡散臭さが鼻について見る気にならないのだが、このインタビューを読んでからは、一度ゆっくり彼女の話をテレビで聞いてみたくなった。

 第2位。日本テレビのエースといわれる上重聡(かみしげ・さとし)アナ(34)が、有力スポンサーから1億7千万円もするマンションを「利益供与」されていたと『文春』が報じている。上重アナは、高校時代PL学園のエースとして活躍し、横浜高校の松坂大輔と延長17回の死闘を繰り広げたことで知られる。
 立教大学でも野球を続けていたが、ケガや故障に悩まされプロ入りを断念してアナウンサーを目指したという。
 03年に日テレに入社してスポーツ中継などを担当していたが、09年に中山秀征(ひでゆき)がメインのMCをつとめた『おもいッきりDON!』のサブ司会者に抜擢されてから頭角を現し、この春の番組改編で『スッキリ!!』の総合司会になったばかりだ。
 スポーツマンの爽やかさが魅力なのだろう、モデルの安座間美優(あざま・みゅう)(28)と交際しているそうだ。
 その爽やかアナにとんでもないスキャンダルが発覚した。まずは日テレの社員就業規則にある「自家用車での通勤を禁止している」ことへの違反。それも2000万円はくだらないという純白のベントレーを、新橋の裏通りに路上駐車していたところを、『文春』にバッチリ撮られてしまったのである。
 しかもこのクルマの所有者は上重ではなく、靴の小売りメーカーABCマートの元会長・三木正浩氏が代表を務める資産管理会社のものなのだ。
 上重アナが住んでいるのは港区のタワーマンションの最上階。広さは126平米もある角部屋で、「不動産登記によると、上重アナは昨年三月三十一日にこの部屋をABCマート関連会社の役員から購入しているが、その際、一億七千万円もの大金を、三木氏から“無利子”で借りているのだ」(『文春』)と言う。
 三木氏は『文春』に対して、マンションは自分が紹介して、ローンは月々三木氏に支払っていると話している。だが、日テレのコンプライアンス憲章を持ち出すまでもなく、有力スポンサーからこれほどの便宜供与を受けるなど、社員としても問題ありだが、情報番組のアナウンサーとしては失格であろう。
 日テレは、女子アナに内定していた女性が銀座でアルバイトをしていたことが発覚して、「清廉性」に欠けるとして内定を取り消し、騒ぎになったばかりである。
 上重アナのやっていることは間違いなく清廉性に欠けるはずだから、日テレ側がどのような判断を下すのだろうか。

 「日本テレビの上重聡アナウンサーが3日、司会を務める朝の情報番組『スッキリ!!』の番組冒頭で視聴者に謝罪した。
 上重アナは『私のプライベートな交友関係において、個人的なご厚意に甘えたことにより、多くの方に疑念を抱かれるような結果になってしまいました。深く深く反省しております』と謝罪。続けて『今後は視聴者の皆さんに信頼されるアナウンサーになるべく精進してまいりたいと思います』と頭を下げた」(4月3日のasahi.comより)

 謝れば済む話ではないと思うのだが。

 第1位。今週の第1位は3人の女性代議士たちの醜聞である。まずは、自民党の三役・政調会長に据えられ「女性初の宰相候補」と持ち上げられている稲田朋美代議士(56)の「日本酒贈呈疑惑」について『新潮』が今週も追及の手を緩めない。
 この疑惑は稲田代議士の地元・福井県で発行されている『北陸政界』が報じたものである。  要約すると、稲田議員が2005年に初当選してから09年に再選されるまで、各自治会の新年会や支援を受けている企業の宴会に「ともみの酒」というラベルを貼った4号瓶の日本酒を持参していたという疑惑。
 現在もこれが行なわれているのなら公職選挙法違反だが、いまは止めているようだから時効ではあるが、『新潮』は「自民党政調会長としての道義的責任は免れるものではない」と追及している。
 私は彼女が当選4回ということも議員の顔さえも知らないが、これほど知名度のない人間を要職に取り上げたというのは、よほど安倍首相の覚えが目出度いのであろう。
 『新潮』の言うように「道義的な責任」はあるはずだが、この代議士の過ちはそれだけではないようだ。
 『新潮』によれば、前号で『新潮』が取り上げることを知った稲田議員の夫で弁護士の稲田龍示氏が、掲載するなら民事訴訟をするとともに「併せて悪意による名誉毀損行為でありますから、刑事告訴するつもりである」とFAXを送りつけてきたというのである。
 『新潮』は、ただ単に記事掲載を阻止しようというのに刑事告訴まで持ち出してきて「それが、恫喝(どうかつ)だと気づかないのなら、世間を知らない弁護士バカ以外の何ものでもない」と批判する。ちなみに稲田代議士も弁護士資格を持っている。
 その上、政調会長会見で『新潮』の記事を「全くの虚偽」、「これはもはや表現の自由と呼ぶに値するものではありません」から「裁判上の措置をとることとしたいと考えております」と報道を全面否定したのである。
 権力者が表現の自由まで持ち出して否定するというのだから、私のような善良な市民はエライセンセイのおっしゃることだからと信じてしまいそうだが、『新潮』はならばと、動かぬ証言の数々を集めて稲田議員を追い詰める。
 福井市在住の保守系県議は「確か、08年と09年だったかな。秘書と一緒だった。そのうちの1回、『ともみの酒』っちゅうのを持ってきました。(中略)
 5、6年前から、稲田さんがあちこちに、お酒を配っていたのは地元では話題になってたよ」。稲田議員の元スタッフは、町内会の新年会などで1万円程度の会費を払うのが嫌で、会費代わりに酒を配るようにしたのが始まりだとし、酒は地元の農事組合法人から4合瓶1本2500円で200本以上注文して代議士主催の新年会で出されたが、「残りの分はほとんど、選挙民に配られたのです」と証言している。
 さらにまずいことが判明した。注文した先の農事組合法人は「酒類販売業の免許を持っていなかった」というのだ。
 嘘を隠すためにまた嘘をつく。『新潮』の調べたとおりなら辞任はやむなしであろう。『新潮』はこう結ぶ。

 「女性初の宰相候補などと持て囃されているから、どの程度かと思えばこの有様。政治家の器量の底が知れてしまったのだ」

 政治家の底という意味では、『文春』がすっぱ抜いた「浪速のエリカ様」こと維新の党の2回生議員・上西小百合(31)氏の醜聞も、底が浅すぎて呆れるほかはない。
 上西氏は2015年度予算案が衆議院を通過した3月13日、急性ウィルス性腸炎で3日間の静養が必要という診断書を出して欠席している。
 だが、前日には他党議員と飲み歩き(これは確認されている)、その翌日、上西氏は地元大阪へ向かっているのだが、「前々から、ホワイトデーに合わせて京都の高級温泉旅館で彼氏と一泊デートの予定を立てていた」(維新関係者)という話が出回っているのである。
 しかもその彼氏というのが49歳の公設秘書だというのだ。この情報に珍しくテレビ局が動いたのは、彼女が美形だからであろう。橋下徹維新の党最高顧問はこの情報を知っていたのだろう、4月3日の会見で上西氏は辞任するしかないと早々に言い切り、さっさと除名してしまった。
 上西氏は報道各社へのFAXで旅行はしていないと否定してみせたが、恥の上塗りであった。

 お次はコワモテの高市早苗(たかいち・さなえ)総務相の「重大疑惑」を『ポスト』が追及している特集。
 話はやや込み入っている。舌足らずになるやもしれないのでお許しを。舞台となったのは農業法人・N社である。
 同社の実質的経営者は高市氏の地元、奈良県で有力な企業グループA社を経営するM会長。N社の創業者であり元社長でもある。
 M会長のグループは奈良でビルメンテナンスの会社を中心に、介護事業や警備事業、加工食品などを手広く展開。さらに、県政や県経済の話題を主に扱う地元誌の発行人(理事長)でもあり、県政界への影響力も大きい。
 同誌のブログにはこう書かれているそうだ。

 「高市早苗先生とは、多分マスコミ関係者の中では、私が一番古くからのお知り合いではないでしょうか?」

 M会長の元でN社の社長を務めたK氏は福祉施設などを運営していた人物で農業は素人だったが、「俺には大きなバックがいる。国からカネを引っ張れる」と吹聴して4年ほど前にイチゴとレタスの水耕栽培を始めた。
 K氏の古くからの知人がこう語る。
 「またいつもの大風呂敷かと話半分で聞いていたら、本当に国から融資が出た。農業の素人が始める事業にいきなり国がカネを貸したのでびっくりしました」

 融資したのは日本政策金融公庫で、ここは国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が統合して設立された政府100%出資の金融機関で、税金が投入され、民間よりも低い金利で融資を行なっているそうだ。
 だが、最後の融資の1年後(13年)には融資がほぼ焦げ付いたという。
 「公庫側の審査が甘い融資だった疑いが生じる」(『ポスト』)。普通の企業ならとうに倒産してもおかしくない状況だ。しかもN社はオフィスもなく電話も通じないが、登記上は社長や役員を次々に交代させながら現在も存続しているのである。
 N社の経営実態を心配する関係者の1人は、M会長からこう聞かされたという。

 「Kさんは『高市先生の案件だから公庫からの借金は心配はいらない。高市先生がなんとかしてくれる。絶対に大丈夫だ』と何度もいいました。それですっかり信用した」

 N社の元役員もこう話す。

 「K社長たちは農業なんか全く興味はなかった。最初から農業をダシに国からカネを引っぱるのが目的だったのだと思う」

 しかし、そのK社長はすでに突然死しているそうだ。
 その後も公庫への返済はなされていない。『ポスト』によると、N社の土地・建物を借りて椎茸栽培を行なっている別の農業系企業は、返済資金に充てるようにと毎月160万円の賃貸料を支払っているのだが、そのカネが公庫への借金返済に回された形跡はないという。
 M会長周辺は公庫やN社の1億円の借り入れの債務保証をした農業系企業に、昨年来、何度も一括返金すると連絡しているとの証言があるが、返済は果たされていないそうだ。
 しかもM会長の言葉通りにN社の救済に動いたのは、高市事務所だったという。関係者がこう語る。
 「高市大臣の実弟で現在、総務大臣秘書官を務める高市知嗣(ともつぐ)氏がN社の新しいスポンサーとしてM会長サイドに東京の会社を紹介した。そこでは、『利益率10%のビジネスになる。ゆくゆくは上場したい』という儲け話として検討された」

 『ポスト』は「一見まともな事業をやっているように見せかけて商品を発注したり、金融機関から融資を受けたあと、返済を踏み倒す『取り込み詐欺』は昔から詐欺の常套手段である」と難じる。
 高市秘書官に取材を申し込むと、「公庫からの借り入れについて、関係したことはない。N社との面識もない」としながらも、N社救済のためにスポンサーを紹介した事実を認めたという。

 「消えたカネは国民の血税である。官邸と高市氏は『名前を使われただけ』で逃げることはできない」(『ポスト』)

 早速、高市早苗総務相は4月6日に国会内で臨時の記者会見を開いた。

 「一部の週刊誌が、政府系金融機関から融資を受けた農業法人に1億円の使途不明金があることが発覚し、高市氏の実弟である秘書官が関わっていた疑いがあると報じたことについて、『見出しも中身もあまりに悪質であり、捏造(ねつぞう)記事だ。融資には高市事務所も秘書官も私も一切関与していない』と全面的に否定した」(4月6日のasahi.comより)

 『ポスト』はこれからも追及を続けると言っているから、目が離せない。

 私は、女だからなどと言うつもりは毛頭無いが、今回の3人や小渕優子、中川郁子(ゆうこ)氏らを見ていると、安倍首相の唱える「女性が輝く時代」は政界に限って、まだまだ遠いと思わざるを得ない。
 これらのスキャンダルも安倍政権崩壊の序章のような気がするのだが。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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