まもなく東日本大震災から4年が経過する。

 その被災地で今、心配されているのが生活不活発病だ。

 生活不活発病は文字通り、「生活」が「不活発」になったことが原因で、全身の機能が低下する病気。身体を動かさなくなると、筋肉や骨が衰え、心臓や呼吸器などにも影響が出るようになる。

 そのままにしておくと、歩けなくなったり、寝たきりになったりすることもある。また、身体だけではなく、心や頭の働きも低下するため、うつ病や認知症を発症することもある。とくに高齢者に多く見られ、廃用症候群とも呼ばれている。

 生活不活発病かどうかは、次の7項目でチェックする。

(1)屋外を歩くこと
(2)自宅内を歩くこと
(3)身の回りの行為(入浴、洗面、トイレ、食事など)
(4) 車いすの使用
(5) 外出の回数
(6)日中どのくらい体を動かしているか
(7)家事(炊事、洗濯、掃除、ゴミ捨て、庭仕事など)

 これを災害前と現在で、自分や家族がどのような状態にあるかをチェックしていき、結果、身体機能が低下している場合は生活不活発病のリスクが考えられる。

 災害発生時は、避難所では動きたくても動けない状態になりがちで、生活不活発病が発症しやすい。しかし、避難所から出て、仮設住宅などに移ったあとも、中長期で進行するので注意が必要だ。

 それまで仕事をしたり、日常的に畑作業や庭いじりをしていた人も、災害に遭うと仕事や畑を失い、することがなくなってしまうことがある。一日中、狭い仮設住宅でテレビを見続けたり、周囲への遠慮などから、身体を動かさない状態が続くと、徐々に筋肉や骨など全身の機能が衰えるようになる。

 その影響で、余計に外出したり、家事をしたりするのが億劫になり、さらに体を動かさなくなる悪循環にはまってしまうのだ。

 いったん生活不活発病になると、改善には時間がかかり、場合によっては寝たきりになってしまうので、早期発見・早期対策で体を動かさなくなる悪循環を断ち切ることが大切だ。そのためには、生活が不活発になった原因を明確にして、それを取り除いたり、家庭や地域で「参加」できる場をつくったりする必要がある。

 たとえば、「仮設住宅には手すりをつけて、立ち上がりやすくする」「お祭りやイベントを開催して、出かける場所をつくる」「家事やプランターでの野菜作りなど、役割や生きがいをつくる」といったことが、生活不活発病の予防・改善になる。

 やりたいことが見つかると、自発的に体を動かすようになり、生活不活発病の症状も改善していき、身体機能も回復していく。

 あれから4年。確実に時は流れた。しかし、復興は遅々として進まず、いまだ約23万人が仮設住宅などでの避難生活を強いられている(復興庁「全国の避難者等の数」2015年1月15日現在)。

 震災は、尊い命や暮らしの基盤である住宅を奪っただけではなく、生活不活発病の蔓延に見られるように、中長期にわたって、そこで暮らす人々をジワジワと追い詰めている。

 これ以上の悲劇が起こらないように、復興のスピードを上げて、被災した人たちが一日でも早く元通りの生活を取り戻せることを願いたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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