テニスプレーヤー、24歳。日本人として初めてテニス四大大会の一つ、全米オープン男子シングルスで決勝まで進み、マリン・チリッチ(クロアチア)の力強いサーブとストロークに押され1セットも奪えぬまま敗退して準優勝に終わったが、日本中を熱狂させ、錦織によって日本テニスの歴史が塗り替えられたのである。

 しかし、この大会前に錦織は「何も希望が持てない」と出場するかどうか悩んでいたのだ。それは大会直前の8月4日に右足にできていた嚢胞(のうほう)を手術で除去し、術後はまともに歩くこともできず車イスで移動しなくてはいけなかったからだ。

 練習不足もあり錦織の周囲でも、今回の錦織には期待できないというムードが漂っていた。だが大会に入ると錦織の快進撃が始まったのである。

 『Tennis Magazine』(ベースボール・マガジン社、以下『Tennis』)の緊急増刊USオープン特集号でその軌跡を辿ってみよう。1回戦をストレート勝ちし、2回戦のパブロ・アンドゥハル(スペイン)が途中棄権して「省エネ勝利」したことも、患部への負担を極力抑えたい錦織にとって幸いした。

 なかでも白眉だったのがミロシュ・ラオニッチ(カナダ)とのベスト8を賭けた死闘だろう。試合時間4時間19分、終わったとき時計の針は午前2時26分を指していた。

 そして準決勝の相手は世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)。これを6-4、1-6、7-6、6-3で破りアジア男子初のグランドスラム決勝進出を決めたのだ。

 「相手が格下で、勝ち越してもいるチリッチだったことで、勝利が現実味を帯び、同時にプレッシャーも高まったのだ。日本のフィーバーぶりも嫌でも耳に入る。平常心を保つのは難しかった」(『Tennis』)

 ラリ-戦になれば勝機ありと見られていたにもかかわらず、そのラリーにも錦織は勝てなかった。錦織は「あんなに硬くなった経験はこれまでにないくらいだった」と語っている。

 世界ランキングのトップ10入りを果たした錦織は、昨年末、フレンチ・オープンを制したマイケル・チャンをコーチに迎えた。チャンは技術面もアドバイスしたが、錦織に自信を持つことの大切さを教えたそうである。

 「圭は気後れしてはいけない。尊敬する(ロジャー・)フェデラーであっても、コートの上では、自分の行く手を阻む邪魔な存在でしかないと思うべきだ」(『Tennis』)

 父親がハワイから買って帰ったお土産のジュニア用ラケットでテニスの真似事を始めたのが5歳のとき。フロリダのテニス留学を経て2006年に全仏ジュニア・ダブルスで優勝。2008年に世界ランク初のトップ100入り。2011年にトップ50。そして今年5月にトップ10入りを果たした。

 今回ベスト8入りを決めたとき「もう勝てない相手もいないと思うので、できるだけ上を向いてやりたい」と胸を張った錦織には、四大大会優勝と世界ランク1位が視野に入っているようだ。

 勝者・チリッチの優勝賞金は3億円、錦織には1億5000万円が贈られるそうだ。錦織にはさらにスポンサーのユニクロから1億円。その他のスポンサーを含めると年間10億円を優に超えるそうだから、サッカーの本田圭佑、ゴルフの松山英樹、メジャーリーガーのダルビッシュ有、田中将大(まさひろ)ら超大物スポーツ選手たちと肩を並べた。

 だが、そうなれば週刊誌はこぞって女性問題を追いかけるに決まっている。大丈夫か?

 早速『週刊文春』(9/18号、以下『文春』)が錦織の「恋人」を取り上げている。

 「錦織は〇八年、卓球の福原愛との熱愛が報道(『フライデー』に撮られた=筆者注)されましたが、ともに日本を代表するトップアスリート。大物同士すぎる故、スポンサーや関係者など大人の事情もあって破局してしまいました。その後、錦織が北京五輪で親しくなった別のフェアリージャパンの子の紹介で坪井(保菜美・25=筆者注)と知り合い、意気投合したようです。これが約五年前のことで、それから間もなく、交際が始まったと聞いています」(テニス関係者)

 坪井は新体操団体競技の元日本代表で「フェアリージャパン」の一員として北京五輪に出場している。やはり一昨年『フライデー』に撮られているが、それ以降半ば公然の仲で、坪井は錦織の出場する大会に同行しているという。

 09年に右肘を疲労骨折して「もうコートに立てないかもしれない」と弱音を漏らす錦織を励まし続けたという。

 坪井は10年に現役を引退すると早稲田大学のスポーツ科学部に在籍して運動生理学や栄養学などを学んだそうで、錦織の身の回りの世話やマッサージなどしてあげているという。

 彼女との交際を機にテニスプレーヤーとして超一流選手の仲間入りを果たしてきたのだから、彼女を「あげまん」(別のテニス関係者)というのも頷けよう。

 現時点で坪井がお嫁さん候補ナンバー1であることは間違いないようだ。

 親も公認の仲で『文春』で坪井の母親がこう語っている。

 「純粋で切り替えが早いところとか、お互いの性格がとても似ているので。兄弟のような感じなんじゃないでしょうか」

 坪井は準決勝から見に行ったという。続けて、

 「そんなに凄い試合をしているのかと思うくらい、普段は自然体で穏やかな方です。本当に素敵で優しい方です」

 将来についてはという問いには、

 「それは本人たちが決めることなので……。この先はどうなるかは分かりませんが、彼(錦織)だから(結婚する)ということではなく、娘が好きになった人が、たまたまこうなったと思っていますので」

 非の打ちどころのないカップルとはこういう2人をいうのであろう。来年早々にある全豪オープンはもちろんだが、最高峰であるウインブルドンの決勝コートに立つ錦織の姿が見られるかもしれない。楽しみだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 さわやかな話題の後にふさわしくないかもしれないが、ちょっとHな各誌の「袋とじ」を覗いてみよう。

第1位 「『伝説の林檎ヌード』麻田奈美」(『週刊ポスト』9/19・26号)
第2位 「安達祐実 濡れ場ヌード」(『週刊現代』9/20・27号)
第3位 「無修整風俗盗撮動画」(『アサヒ芸能』9/18号)

 第3位。インターネット上にアップされている無修整動画から、風俗嬢とのプレイを撮影したものだけを選んだそうだ。
 そういえば最近もアメリカアップル社のデータ保管・共有サービス「iCloud」から多数の女優たちのヌード写真などが流出して大騒ぎになった。
 私も何枚か見たが、ジェニファー・ローレンスやモデルのケイト・アプトンなどの過激な写真がネットで拝める。そういえば、それをコピーして袋とじで出そうとした光文社発行の『FLASH』が発売直前にすべて回収された「事件」が起きた。
 『FLASH』関係者が『週刊文春』でこう語っている。

 「社内に見本誌が配られたのが発売前日の午前中。それを見た上層部が訴訟沙汰になるのを怖れたというのが真相です」

 1号出せなかった『FLASH』の損失は大きく、ただでさえ儲かっていないから、上層部から「廃刊にすべし」という声が出るのではないか。心配だね。
 『アサ芸』のほうは、顔はわからないようにぼかしを入れているが、アソコは丸見え。まあこうして見てみると、人間のすることは変わらないものだとつくづく思いますね。

 第2位。『現代』の安達祐実は11月に公開される映画『花魁(おいらん)道中』のパブだが、32歳になった安達が胸も露わに濡れ場を演じている。
 胸は豊かとはいえないが、体当たりの花魁ぶりにちょっぴりコーフンする。

 第1位。『ポスト』のほうは懐かしい1973年の「林檎ヌード」である。『ポスト』は「日本グラビア史上の最高傑作」と謳っているが、たしかにこのヌードを見たときの“感動”はいまでも忘れない
 初々しい18歳の美少女のオールヌード。豊満な胸を隠さず、両手で真っ赤な林檎をヘアの前で持っている写真は衝撃的だった。撮影は青柳陽一。
 そのときの未公開カットが袋とじに収められているが、あどけない顔ではにかんでいるのが何ともいい。
 後半のグラビアでは『平凡パンチ』の73年1月29日号に掲載されたグラビアを再録しているが、いま見てもすばらしい迫力のある裸身である。
 今週の袋とじは文句なしに『ポスト』の圧勝だ~ッ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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