「消費税8%」もだいぶなじんできた。現状では、過去の消費税騒ぎよりも落ち着いていると言えるのではないだろうか。増税前は「悲観的な」予測も多々あったもので、実際、まだまだ油断ならぬとはいえ、いまの消費動向は「悪くない」レベル。また、はっきりと「好調」な売れ行きを示している商品もある。

 たとえば、コンビニやファミリーレストランの「ほどほどに高い」商品群だ。安さへのこだわりを維持する一方で、あえて良質の食材を使ったメニューも提案する。デニーズが2000円近いローストビーフをヒットさせたトピックは、よく業界の戦略事例として話題に上っている。強調すべきポイントは、「美味しさを追求して少し金額を乗せる」ことは、「安かろう、まずかろう」よりも、飲食店としての王道であるということだ。デフレの時代には、その王道を貫くことが苦しいこともあった。いま、飲食業界に価格競争で消耗したくないという雰囲気が生まれている。

 素材などの価値を乗せて値段を設定したものが、消費税の影響を被ることなく売れる。こうした動きを、2014年上期の「日経MJヒット商品番付」では「価値組消費」と呼んでいる。ちなみにこのランキングでは、価値組消費が東の「大関」となる一方で、対照的な「格安スマホ」が最上位の東の「横綱」となっている。価値組消費だけを見て「デフレ脱却」と喜ぶのはまだまだ早計ということだが、価格以外の価値が見直されている動向も明確だ。今後もトレンドになるであろう「少し高い」商品は、安さの呪縛に苦しんだ多くの企業にとって、起死回生の突破口となるだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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