安倍政権が掲げる女性の積極登用により霞が関では一挙に4人の女性局長が誕生した。

 『週刊文春』(7/17号、以下『文春』)はこの4人の「個人情報」を公開している。外務省の斎木尚子経済局長(55)は2月の都知事選挙で官邸が候補のひとりとして検討したというなかなかの美形。亭主も同じ外務省の昭隆事務次官(61)で、省の最高幹部会議に夫婦で出席するのは前代未聞だそうだ。

 彼女が注目を浴びたのは北米局初の女性課長になったときと、当時の田中真紀子外相から亭主が目の敵にされ、「外務省を牛耳る悪魔夫婦」と揶揄されたときだ。

 人間味があり一升酒を飲んでも乱れないという評がある一方、仕事のできない職員には怒鳴りあげる冷たい性格だという向きもあるようだ。

 法務省初の女性局長になった岡村和美人権擁護局長(56)は霞が関では珍しい途中入局だそうだ。早大卒業後ハーバード大のロースクールを修了して弁護士資格を取り、ウォール街の渉外弁護士などを経て2000年に検事へ転身。

 検事任官後は東京地検刑事部に配属され、彼女も法務省初の女性課長に抜擢される。気さくで人当たりもよく、記者たちの受けもよいそうだが、人脈もすごくて、国際金融マフィアの情報も取れる人材だから、お飾りの人権擁護局長ではもったいないという評もあるようだ。

 宗像直子氏(52)も経済産業省初の女性局長として貿易経済協力局長に昇格。国際通商畑を歩いてきて専門はアジア経済。TPP交渉はバリバリの推進派だったことから「TPP界のアイドル」と呼ばれていたという。

 『文春』によれば「皇太子のお妃候補としても名前が上がり、宮内庁から打診があった」そうだ。

 厚労省の雇用均等・児童家庭局長になったのは安藤よし子氏(55)。03年から06年まで滋賀県の副知事を務め、趣味は茶道。「職場の机には『成功は覚えてもらえないが、失敗は誰も忘れない』と英語で書かれた札が置いてあって、そういうところはいかにも役人らしい」(厚労省関係者)

 この4人の女性のうち3人が東大卒。岡村氏は早大だがその後ハーバード大を出ているからひけはとらない。仕事もできるようだから、この抜擢人事は真っ当なのだろう。

 しかし、安倍首相は「指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる」という数値目標まであげて、企業側に“従う”よう指示しているのはいかがなものだろう。

 欧米諸国では女性の管理職が3割を超えているそうだが、日本ではまだ1割程度に留まる。それを一挙に2割も増やすには、産休、育児休職などの支援はもちろんだが、この国に根強く残る女性に対する「差別」意識を変えなくては、かけ声だけで終わってしまうだろう。

 私は出版社にいるとき「バカな男よりできる女のほうがなんぼかいい」と言い続けていたが、アホな経営陣は「女は仕事を教えても結婚してすぐ辞めてしまう」などという旧態依然とした考え方で、つい最近まで優秀な女性を採用せず、バカな男のほうを多く採り続けてきた。

 私が『フライデー』『週刊現代』編集長時代、女には深夜勤務が多い部署への配属はできないと言い募っていた会社側を説得し、女の新入社員が来るようになった。まだ数は少ないが、私が言っていたように女のほうにできる編集者が多い。

 これは出版だけではない。マスコミには女性差別が厳然と残っているのだ。大新聞の編集局長や部長職に女性の登用が少ないことがそれを物語っている。

 女性を重用しないマスコミと、口先だけで女性登用を唱え実態を見ない安倍首相に踊らされてはいけない。数合わせのために女性を役職に就ければ、社内の男たちから不満が出る、彼女たちが失態を演じれば、それ見たことかと指弾されること必定である。

 そうした文化のない社会で育ってきた女性をいきなり抜擢するのではなく、男女の別なく仕事ができる職場をどうつくっていくのかをまず考えるべきである。

 その好例が『週刊現代』(7/26・8/2号)に載っている。安倍首相の強い推しで厚労省事務次官になった村木厚子氏(59)が、このところの不祥事続きで、省内からも官邸からも「村木さんにはマネジメント能力がない」と批判が相次いでいるそうだ。

 村木さんは冤罪で逮捕され、無実を勝ち取ったヒロインである。私も彼女の強い精神力には敬服している。だが、それと事務次官としての能力とは別であるはずだが、安倍首相が無理矢理次官に据えてしまったのだ。

 それが今度は、厚労省が所管する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」の潤沢な資金を株購入に使えるようにしたい安倍首相が、厚労省を意のままに動かすために財務省から人間を送り込んで、彼女を「いびり出せ」と指示しているというのである。

 国民に媚びを売るために女性を利用し、いらなくなったらポイと捨てるのでは、真に女性の生きやすい国づくりはできはしない。それをわかっているのは女性たちである。そのうち痛いしっぺ返しにあうに違いない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週最大の話題はビートたけしの愛人問題であろう。テレビはもちろんスポーツ紙もほとんど後追いしなかったこの話題だが、読んでいるうちに「たけし事件」を思い出させた。そんな私事を含めてスキャンダルを3本選んでみた。

第1位 「ビートたけし“100億円愛人”」(『週刊文春』7/17号)
第2位 「ジャブ中女のガサ入れで見つかった北海道警警視正の全裸写真」(『週刊文春』7/17号)
第3位 「渾名は『発作マン』だった『号泣県議』モンスター事件簿」(『週刊新潮』7/17号)&「野々村竜太郎県議『超マザコン伝説』」(『週刊文春』7/17号)

 第3位。ワイドショーでスーパースターだった号泣男は“めでたく”辞任となった。このおかしな県議を取り上げた『新潮』と『文春』の記事。
 『文春』によれば、きっかけは神戸新聞が野々村竜太郎元兵庫県議(47)の「日帰り出張195回の名目で、計約300万円を政務活動費から支出した」と報じたからだ。
 こんな男がよく県議になれたものだが、11年4月に行なわれた県議選に出た野々村氏は、勝手に「大阪維新の会」と間違いかねない「西宮維新の会」を名乗り、順風だった維新の風に乗って当選したそうだ。
 このとき訴えていたのが「議員報酬の半減」と「政務調査費(当時)の透明化」だったというのだから笑える。
 こんな人間にも約1400万円の報酬が与えられ月50万円の政務活動費が使えるのだ。この政務活動費を満額使い切っていたのだが、昨年だけで176万円分もの切手を金券ショップで購入し、自宅近くのスーパーでの買い物もクレジットカードを使用し、事務用消耗品を購入したことにしていたそうだ。
 昨年城崎温泉に195回もの「日帰り出張」をしたとしているが、そんなことが出来るわけがないことは、メディアの取材で明らかである。
 『新潮』によれば野々村元県議は名門校・北野高校を出て関西大学法学部に進み、卒業後に兵庫県川西市役所に就職した。道路を直角に曲がる小学生時代や水割りの氷が怖いと号泣した青春時代があったそうだが、市役所時代のエピソードが彼の人となりを物語っているようだ。

 「いきなり同僚を怒鳴る、訳の分からないことを喚き散らす、泣く、人間関係をぐちゃぐちゃにする。野々村はそんなヤツでしたわ。市内の中学校の事務員に飛ばされ、着任早々、別の事務員に怒鳴り散らした。で、校長から“もう来んでええ”と叱責されると、ホンマに無断欠勤するようになってしもたんや」(元川西市役所職員)

 役所を辞めてからは町長選挙や市長選挙などに出ては落ちるが、兵庫県議会議員選挙で初当選する。野々村議員は辞職に追い込まれたが、こういう人物に一票入れた人間が1万1300人近くいたことには驚く。この人たちも「反省」すべきだろう。

 第2位は『文春』の記事。ノンキャリアから北海道警の警視正にまで上り詰めた奥村稔氏(58)が、交際していたシャブ中の女性に「全裸写真」を撮られていたことが発覚して辞任に追い込まれた。
 この警視正氏、それだけでもアウトなのに北見方面本部捜査課長時代にススキノのママと不倫していたり、あろうことか釧路署長に転勤する際に、広域指定暴力団の二次団体組長に送別会まで開いてもらっていたことが、報道機関に送られてきた「投書」に書かれていたという。これではスピード辞任もやむを得まい。

 さて今週の第1位はあのビートたけし、久々の女性問題である。
 『文春』の中でたけしの事務所関係者がこう話している。

 「これまで星の数ほど愛人を作ったたけしさんですが、これほど夢中になった女性は初めてじゃないでしょうか。『カミさんに全財産を渡して(A子さんと)一緒になる』と言ったときはゾッとしました」

 たけしは御年67歳、A子さんは49歳。昨今、年の離れたカップルが多い中ではさほど驚く年の差ではないが、たけしは「本気」なのだろうか
 ダウンタウンの浜田雅功(まさとし)がフライデーされたとき、『ポスト』(7/11号)の連載でこう語っていた。

 「六十過ぎちゃうとチンポだって勃たないし、そもそもオネエチャンに興味がなくなっちゃう」

 ほぼ彼女は50歳。オネエチャンという年ではないから勃つのかもしれないが、忙しい時間をやりくりして、たけし名義の目黒区のデザイナーズマンションに彼女を住まわせ、半同棲状態だというのだ。
 モノクログラビアには二人が食事を終えて店から出てくるところが載っている。彼女は100万円以上もするバーキンを持っているが、これもたけしがプレゼントしたものだという。
 彼女はどういう素性なのだろうか。『文春』によれば「彼女の父は、大手広告代理店の元幹部。国会議員の秘書を経て、地元の熊本で県会議員を務めたこともある名士」。議員秘書や県会議員が「名士」かどうかは判断の分かれるところだろうが、彼女は一時、関西の高級ホテルの「アドバイザー」という肩書きを持っていたそうだ。
 09年に彼女はホテル事業の関連会社を立ち上げたが、昨年末に解散している。A子さんがたけしとの関係を深めていった直後のことだったという。
 もしたけしが本気で離婚を考えているとしたら慰謝料はいくらになるか、『文春』はお節介にも計算している。年収が15億から18億。これまで稼いだカネは100億円はくだらないそうである。
 しかもその収入を管理しているのが、たけしの奥さんと長男が代表を務める会社だから、離婚するにあたって相当揉めることは間違いない。
 たけしは『文春』の直撃には答えなかったが、所属事務所の「オフィス北野」森昌行代表がこう話している。
 A子さんとは仕事の関係で男女の仲ではないと、たけしは言っているという。
 だが、毎日のようにA子さんのマンションにたけしが泊まっていることは否定せず、世田谷の家が改装工事に入るためA子さんのところに泊まらせてもらっているだけだと話す。

 ビートたけしといえば「フライデー襲撃事件」を思い出す向きも多いだろう。86年、当時17歳だったB子さんとの不倫が発覚し、それを報じた『フライデー』編集部をたけし軍団が夜中に襲撃した傷害事件である。これを機に『フライデー』は急激に部数を落としていく。
 91年にはB子さんとの間に子どもが生まれていたことを、私が編集長のときの『フライデー』で報じた。このときはまだ襲撃事件の余波が残っていたため、社内にもたけしへのアレルギーが強く、社長にも掲載する前に知らせたことを思い出す。
 私はたけしの出る報道番組は感心しないし、最近の彼の映画も作り始めたころと比べると質が落ちていると思っている。そんな彼の焦りが老いらくの恋へと走らせているのではないのか。
 このスキャンダルは当然ながらテレビは取り扱っていないようだが、連載をしている『ポスト』はどうかと覗いてみたら、ひと言も触れていない。昔のたけしには自分のスキャンダルをネタにしてしまう野太さがあったと思うが、いまや文化人に成り下がったたけしにそれを望むほうが無理なのだろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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