2014年6月7日に開票が行なわれた、AKB48の「総選挙」。正しくは「37thシングル選抜総選挙」といい、つまり「次のシングル一枚の選抜メンバーを決める人気投票」でしかない。だが、ファンの熱意が建前上は反映される場なので、運営側の意図が介在しないところにイベントとしての魅力がある(ほかのシングルの選抜で、総選挙の結果は拘束力を持たない)。今回は5月25日に発生した握手会での傷害事件を受け、厳戒態勢のもと行なわれたが、関係者の心配を吹き飛ばすような盛り上がりを見せた。

 かつての総選挙で上位に入り、「神7」と呼ばれたメンバーは「前田敦子、大島優子、篠田麻里子、渡辺麻友(まゆ)、高橋みなみ、小嶋陽菜(はるな)、板野友美」。いまのAKB人気を築き上げたといっていいメンバーだが、半分以上は卒業している。今回、SKE・NMB・HKTといった姉妹グループのメンバー、あるいは新世代のメンバーが、はたして上位陣に代わる存在となるのか。あるいは多くのアイドルグループのように、人気メンバーの卒業にともなってグループ自体の人気が下落してしまうのか。今回の総選挙は、少女たちの未来を占うものだった。

 結果、「渡辺麻友、指原莉乃(さしはら・りの)、柏木由紀、松井珠理奈(じゅりな)、松井玲奈(れな)、山本彩(さやか)、島崎遥香(はるか)」というメンバーが上位に。世代も所属グループも分かれ、まるで演出家が構成したかのようにバランスがよかったのではないか。「神7」という表現は、ここ数年カテゴリーとしては崩壊が進んでいたので、マスコミが多用するほどにはファンは重要視しない。しかし、今度の「神7」は、新しいAKBの出発点として、広く認知されていきそうな勢いである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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