紫外線やアレルギーを避ける現代の生活によって、過去の病気と思われていた「くる病」が、この日本で再び増加している。

 くる病は、乳幼児期に起こる骨軟化症で、骨が曲がったり、柔らかくなったりする骨格異常だ。たとえば、足が重度のO脚やX脚になったり、頭がい骨が柔らかくなったりする。また、体重が増加せずに低身長になるなど、さまざまな症状を引き起こすことがある。

 日本では、戦後の一時期に多く見られたが、食糧事情の改善で姿を消していた。それが、20年ほど前から、再び発症するようになっているのだ。

 くる病の大きな原因とされているのがビタミンD不足だ。ビタミンDは、カルシウムやリンなどのミネラルの吸収を助ける働きをする成分で、骨の成長には欠かせないが、これが不足することで骨軟化症を発症してしまうのだ。

 ビタミンD不足の背景にあるのが、完全母乳にこだわった育児、アレルギーや紫外線を避ける現代の暮らしだという。

 母乳は栄養価に優れていて、1980年代末からWHO(世界保健機関)やユニセフでも母乳育児を推奨している。ただし、母乳は人工のミルクに比べるとビタミンDが非常に少ないため、くる病になる子どものほとんどは、完全母乳栄養で育っているという。

 もうひとつの理由はアレルギーの増加だ。

 ビタミンDは、卵や魚などに多く含まれるが、食物アレルギーを避けるために、これらの食品の摂取を制限しているケースもあり、食事からビタミンDを摂るのが難しい子どももいる。

 また、ビタミンDは、紫外線にあたることで体内で合成され、血中のカルシウムの吸収を助けることができる。しかし、「紫外線は赤ちゃんによくない」といった情報から、紫外線を避けるためにまったく日光浴をさせない人もいる。そうした状況も、くる病の増加に拍車をかけているようだ。

 1~2歳時の場合、足を伸ばして踵をつけた状態で、両膝の隙間が3センチ以上あいていると、くる病の可能性があるという。また、身長の伸びが極端にとまったケースも観察が必要だ。早期に治療を開始し、栄養状態を改善すれば、くる病を完治することもできる。不安に思う人は、早めに専門医に相談してみよう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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