国内の水資源の保全を目的にした「水循環基本法」が2014年3月末、通常国会で成立した。

 日本の「水行政」は、上水道が厚生労働省、下水道が国土交通省、農業用水は農林水産省などといった具合に、いくつもの省庁がバラバラに行なってきた。同基本法の理念はこれを水源地も含めて「包括的に管理しよう」というものだ。そのため同基本法は、水資源を「国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いもの」と位置づけ、政府や自治体による保全をその「責務」とした。また、政府に「水循環政策本部」(本部長・内閣総理大臣)を設置し、5年ごとに「水循環基本計画」の策定を義務づけた。

 基本法制定の背景には、近年、水源地を含む国内の森林が外国資本などに土地買収されるケースが相次いでいることがある。林野庁によると、2006年から2012年の間に、中国(香港を含む)など外資による国内の森林買収は68件、801ヘクタールに達している。

 外資による買収を一概に問題視することはない。ただ、ある日突然、聞いたこともない外資に買収されることに対し、「貴重な水源地が外国人に押さえられるのは、安全保障上もよくない」と懸念する声が、国会議員や自治体首長などからあがっていた。

 地球温暖化が進み、今後水不足がさらに深刻化するとみられる。国境を越えた水を巡る紛争の危険性も高まっている。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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